日本大百科全書(ニッポニカ)「箔」の解説
箔
はく
金属の薄片のこと。金属の展延性を利用してごく薄く打ち延ばし、適当な大きさに切って美術・工芸品の装飾に使用する。古くは金、銀、錫(すず)などでつくられ、現在ではプラチナ、アルミニウム、銅、真鍮(しんちゅう)なども用いられる。奈良時代の『内匠式(たくみしき)』に「白鑞工」の名がみえ、白鑞(しろめ)すなわちいまの錫箔を打つ専門工人が当時すでにいたことがうかがわれる。箔の大きさは時代によって異なり、現在は金が11~12センチメートル四方、銀が11センチメートル四方が普通とされているが、古くは6センチメートル四方の金箔もあり、『内匠式』には白鑞箔が方八寸(約24センチメートル)と記されている。
日本では金・銀箔の古い使用例として高松塚古墳の石室壁画がある。また木彫仏像や仏画などの装飾、屏風(びょうぶ)下地としての箔押し、料紙装飾として細かく切った切箔(きりはく)や糸のような野毛(のげ)など、古くからさまざまに利用されている。そのほか金工品では銅製品に金箔を張って鍍金(ときん)(めっき)と同じような効果を出したり、漆(うるし)工芸でも箔絵(はくえ)に、染織では摺箔(すりはく)、縫箔(ぬいはく)、金糸(きんし)、銀糸(ぎんし)などに広く用いられている。
[原田一敏]