糟糠の妻(読み)ソウコウノツマ

デジタル大辞泉 「糟糠の妻」の意味・読み・例文・類語

そうこう‐の‐つま〔サウカウ‐〕【××糠の妻】

貧しいときから連れ添って苦労をともにしてきた妻。→糟糠
[類語]細君家内女房かみさんワイフかかあ山の神さいベターハーフ押し掛け女房姉さん女房世話女房恋女房思い妻愛妻良妻賢妻悪妻

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精選版 日本国語大辞典 「糟糠の妻」の意味・読み・例文・類語

そうこう【糟糠】 の 妻(つま・め)

  1. 貧しい時からつれそって苦労をともにしてきた妻。糟粕(そうはく)の妻。
    1. [初出の実例]「糟糠妻不垂堂 さうかうノメヲハタウヨリオロサス」(出典:色葉字類抄(1177‐81))
    2. 「糟糠(サウカウ)の妻は追出さず、子供は可愛がる」(出典黒潮(1902‐05)〈徳富蘆花〉一)
    3. [その他の文献]〔後漢書‐宋弘伝〕

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故事成語を知る辞典 「糟糠の妻」の解説

糟糠の妻

酒かすや米ぬかしか食べられなかったような貧しいころから、連れ添って苦労を共にしてきた妻のこと。

[使用例] 糟糠の妻、モデルのルイズは、賤しき身の上の、今はや、如何いかにするとも夫の心をひきとむる事あたわざるを知りて[永井荷風*ふらんす物語|1909]

[使用例] 亡妻は、糟糠の妻で、かつ、いろいろ、家庭的な面倒をかけているので、その死を迎えて、感想がないわけがない[獅子文六*娘と私|1953~56]

[由来] 「漢書そうこう伝」に出てくる、宋弘という大臣のことばから。紀元前一世紀のこと。かん王朝を開いたこうていは、夫を亡くした姉を再婚させたいと考えていました。姉にそれとなく話をすると、大臣の宋弘を気に入っているようす。そこで、光武帝は、姉を屛風の陰に座らせておいて、既婚者の宋弘を呼び寄せて、暗に離婚を勧めてこう言いました。「地位が上がると付き合う相手を変えるし、財産が増えると妻を変えるというのは、人情だな」。しかし、宋弘の答えは、「貧賤の交わりは忘るべからず、糟糠の妻は堂よりくださず(貧しかったころの友だちを忘れてはいけませんし、苦労を共にした妻を表座敷から追い出すなんてことは、しないものです)」。これを聞いた光武帝は、屛風の方に向かって「これは無理だ」と言ったことでした。

[解説] 皇帝の姉を妻にすれば、地位の安泰は約束されたようなもの。しかし、宋弘にとっては、苦労を共にしてきた妻の方が大事だったという次第。ただ、宋弘は光武帝をしばしばいさめた家臣ですから、このときも、皇帝だからなんでもできると思っている光武帝を、いさめたのかもしれません。

〔異形〕そうはくの妻/糟糠の妻は堂より下さず。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「糟糠の妻」の意味・わかりやすい解説

糟糠の妻
そうこうのつま

粗食をともにし、貧苦を分かち合ってきた妻女をいう。「糟」は酒粕(さけかす)、「糠」は糠(ぬか)の意で、粗末な食物のこと。中国、後漢(ごかん)の光武帝の姉湖陽公主が夫に死別してのち、風采(ふうさい)・人柄ともに優れた大尉の宋弘(そうこう)と再婚したいと願ったため、帝が公主を物陰に隠して宋弘に「人も富貴になれば妻をかえるのが普通だから、かえてみてはどうか」といったところ、「貧賤(ひんせん)の交わりは忘るべからず、糟糠の妻は堂を下さず(見捨てない)と聞いております」と答えたため、帝は公主に「この望みはかなわぬことだ」と告げた、と伝える『後漢書(ごかんじょ)』「宋弘伝」の故事による。

[田所義行]

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