練る(読み)ネル

デジタル大辞泉 「練る」の意味・読み・例文・類語

ね・る【練る/×煉る】

[動ラ五(四)]
熱を加えて、むらのないようにこね固める。また、こねまぜて、粘りけが出るようにする。「あんを―・る」「のりを―・る」「粘土を―・る」
(練る)生絹きぎぬ灰汁あくなどで煮てしなやかにする。「―・った絹」
皮類をなめす。なめし革にする。「皮を―・る」
(「錬る」とも書く)金属に焼きを入れて硬質なものに鍛える。「鉄を―・る」「刀を―・る」
さらによいものにするために内容を検討したり、手を加えたりする。「計画を―・る」「文章を―・る」
学問技芸などを鍛えみがく。修養・経験などを積む。練磨する。「技を―・る」「腕を―・る」
(「邌る」とも書く)
㋐そろそろと行く。また、行列を整えてゆっくり進む。「楽隊が町を―・っていく」
㋑行きつ戻りつしながら進む。「みこしが―・る」
木の枝などをたわめて作る。
「かの丘に萩刈るをのこ縄をなみ―・るやねりの砕けてぞ思ふ」〈拾遺・恋三〉
海水を煮て塩をつくる。精製する。
うしほ―・るかまど煙気をぬるみ雪もたまらぬ海人あまのあばら屋」〈夫木・三五〉
[可能]ねれる
[動ラ下二]ね(練)れる」の文語形
[類語](1ねるねくる捏ね回す捏ね返す捏ね上げる/(5練り上げるまとめる煮詰める詰める推敲すいこうする彫琢ちょうたくする/(6磨く磨き上げる鍛える練磨する洗練する切磋琢磨する・しご

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「練る」の意味・読み・例文・類語

ね・る【練・煉・錬・邌】

  1. [ 1 ] 〘 自動詞 ラ行五(四) 〙 ( 練・邌 )
    1. 静かに歩く。おもむろに歩く。
      1. [初出の実例]「〈本〉奈良の都を 禰留(ネル)は誰が子ぞ」(出典神楽歌(9C後)採物・剣)
      2. 「太夫とおなじ顔して、練(ネッ)てゆくもおかし」(出典:浮世草子・傾城色三味線(1701)江戸)
    2. 行列を整えてゆっくり進む。
      1. [初出の実例]「遅歩 ネル」(出典:文明本節用集(室町中))
    3. あっちへ行きこっちへもどりなどして歩く。
  2. [ 2 ] 〘 他動詞 ラ行五(四) 〙 ( 練・錬・煉 ) 固いものやあらいものなどを、伸ばしたり固めたり煮たりして、やわらかいもの、使えるもの、質の良いものなどにする。
    1. 生絹の膠質(こうしつ)を除去して、しなやかにする。
      1. [初出の実例]「夫に随ひ柔(にこや)かに儒(やはら)かにしてりたる糸綿の如し」(出典:日本霊異記(810‐824)中)
    2. 木や蔓(つる)などをたたくなどしてやわらかくし、曲がりやすいようにする。
      1. [初出の実例]「かのをかに萩かるをのこ縄をなみねるやねりそのくだけてぞ思ふ〈凡河内躬恒〉」(出典:拾遺和歌集(1005‐07頃か)恋三・八一三)
    3. 皮類を撓(いた)めつくる。なめしがわにする。
    4. 金属を焼いて鍛える。
    5. こねまぜて、ねばるようにしたり、固めたりする。
      1. [初出の実例]「泥に粘(ネラレ)たる魚の如にて」(出典:太平記(14C後)一八)
    6. 精製する。精錬する。
      1. [初出の実例]「伊勢のあまのねるやうしほのいくかへりからきおもひに身を焦がすらん〈藤原家良〉」(出典:夫木和歌抄(1310頃)二五)
    7. 詩文などの字句を十分に推敲(すいこう)する。計画、案などを何度も考えて修正・改良する。
      1. [初出の実例]「今年大かた百に成もの 独吟をねりたいほとに練りつけて〈正信〉」(出典:俳諧・物種集(1678))
      2. 「美妙巧緻の文章をもて其の模範となし師表となしもて其文を練(ネ)るべきなり」(出典:小説神髄(1885‐86)〈坪内逍遙〉上)
    8. 学問・技芸を練磨する。修養・経験を積む。また、肉体や精神をきたえる。
      1. [初出の実例]「仏法に最上醍醐味といへる、いかにもねれる心をいふなるべし」(出典:ささめごと(1463‐64頃)上)
  3. [ 3 ] 〘 自動詞 ラ行下二段活用 〙ねれる(練)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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