詰める(読み)ツメル

デジタル大辞泉 「詰める」の意味・読み・例文・類語

つ・める【詰める】

[動マ下一][文]つ・む[マ下二]
容器などに物を入れていっぱいにする。ぎっしり入れてすきまがないようにする。「衣装を―・めたかばん」「料理を重箱に―・める」
穴やすきまに物を入れてふさぐ。「虫歯を―・める」
長さを短くする。寸法間隔を縮める。「着物のたけを―・める」「細かい字で―・めて書く」「席を―・めて座る」
節約する。きりつめる。「生活費を―・める」「経費を―・める」
最後の所まで行く。「沢筋を―・める」
十分に検討し尽くし物事決着がつくようにする。煮つめる。「話を―・める」「議論を―・める」
相手にきびしくせまる。追い込む。追い詰める。「失敗した部下を―・める」
将棋などで、王将の逃げ場がないようにする。「王手王手で敵玉を―・める」
たゆまずその事を続けてする。かかりきりになる。「―・めて仕事をする」「こんを―・める」
10 (「息をつめる」の形で)呼吸を止める。「息を―・めて成り行きを見守る」
11 (「指をつめる」の形で)謝罪などの意志を表すために指を切り落とす。関西地方では、ドアなどに指をはさむことをいう。「指を―・めてわびを入れる」
12 決まった場所に出向き、用事に備えて待機する。出仕して控えている。「首相官邸に―・める」「持ち場に―・める」
13動詞連用形に付いて)
身動きできないような状況に追いこむ。行きづまらせる。「問い―・める」「追い―・める」
㋑最後・限度まで…する。また、休みなく続けて…する。「のぼり―・める」「通い―・める」
㋒一面に…する。「敷き―・める」「タイルを貼り―・める」
[下接句]息を詰める石で手を詰めるこんを詰める道理を詰める指を詰める
[類語](1詰め込む押し込む押し込める突っ込む閉じ込める/(3短い短め短小寸足らず寸詰まり最短ちんちくりんつんつるてんショート三寸縮まる縮めるつづめる切り詰める短縮する狭める縮小する約する縮約する圧縮する/(6練る練り上げるまとめる煮詰める推敲すいこうする彫琢ちょうたくする

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精選版 日本国語大辞典 「詰める」の意味・読み・例文・類語

つ・める【詰】

  1. [ 1 ] 〘 自動詞 マ行下一段活用 〙
    [ 文語形 ]つ・む 〘 自動詞 マ行下二段活用 〙
    1. せまる。前方がつまる。行きづまる。また、窮する。身動きがとれなくなる。
      1. [初出の実例]「ならはせ給はぬ御ありさまに、御かうぶりのひたひもつむる心ちせさせ給」(出典:今鏡(1170)九)
    2. きまった場所に控える。出仕する。出勤する。また、おしかける。
      1. [初出の実例]「日数十九日とん田へつむる分」(出典:東寺百合文書‐に・文明一四年(1482)正月日・丹波大山荘陣夫注文)
  2. [ 2 ] 〘 他動詞 マ行下一段活用 〙
    [ 文語形 ]つ・む 〘 他動詞 マ行下二段活用 〙
    1. 物をすき間に入れて、空所のないようにする。
      1. (イ) 物をいっぱいに押し入れて動けなくする。ゆるみをなくす。また、物を入れてその場所をふさぐ。
        1. [初出の実例]「打ち叩き、押し引けど、内外につめてければ、ゆるぎだにせず」(出典:落窪物語(10C後)二)
      2. (ロ) 物を入れて満たす。いっぱいにする。〔日葡辞書(1603‐04)〕
      3. (ハ) ( 「息をつめる」の形で用いて ) 呼吸の流れを止める。
        1. [初出の実例]「息を屏(ツ)めて覗ひ居たり」(出典即興詩人(1901)〈森鴎外訳〉猶太の翁)
    2. 身動きができないような状況に至らせる。
      1. (イ) きびしくせまる。攻め寄せる。
        1. [初出の実例]「脇の門より走入るを、やがてつめて、走りかかりければ」(出典:宇治拾遺物語(1221頃)二)
      2. (ロ) 対処できないような状況に追い込む。ゆきづまらせる。「問いつめる」「言いつめる」のように他の動詞と複合しても用いる。
        1. [初出の実例]「小禅師にてありし時も人をつめしが、当時も人をつむるやとぞ申されける」(出典:米沢本沙石集(1283)一〇本)
      3. (ハ) 議論、疑問の検討などを最終段階にまで押し進める。
        1. [初出の実例]「殊申事には、此儀雖可詰覚悟候、却而御機嫌をも不存候間、先令上洛以連々可申候」(出典:石山本願寺日記‐証如上人日記・天文五年(1536)一一月一二日)
      4. (ニ) 物事の奥儀、真髄などを追究する。
        1. [初出の実例]「又これほどとつめて、それより先はきわまりなき芸もあり」(出典:随筆・槐記‐享保一四年(1729)三月二二日)
      5. (ホ) それ以上考えが及ばないような点に至る。「思いつめる」「考えつめる」など。
    3. そのことにかかりきる。絶えずする。つづけてする。根(こん)をつめる。
      1. [初出の実例]「つめても覚えねど、いと節は違はず」(出典:梁塵秘抄口伝集(12C後)一〇)
      2. 「君に添へ奉りて、我が身はつめての御奉公は申さず、時時の御見舞」(出典:仮名草子・恨の介(1609‐17頃)上)
    4. 短くする。ちぢめる。
      1. (イ) 長さを短くする。
        1. [初出の実例]「老いぬればとて腰膝をかがめ、身をつむれば、花失せて、古様にみゆるなり」(出典:風姿花伝(1400‐02頃)二)
      2. (ロ) 規模を小さくする。特に家計などを倹約する。切りつめる。
        1. [初出の実例]「男のさがをあらはすまいとずいぶんわしが身をつめ、三度つける油も一度つけ」(出典:浄瑠璃・夕霧阿波鳴渡(1712頃)中)
      3. (ハ) ことばの発音で、促音の発音をする。
        1. [初出の実例]「真乗はせうとよめたぞ。せっとつめはせられぬぞ」(出典:玉塵抄(1563)二二)
    5. 狂言で、一曲を終わりにする。
      1. [初出の実例]「ああしなひたりしなひたり ともつむる、たらしめがやるまひぞやるまひぞといふておいこみにもする」(出典:虎明本狂言・饅頭(室町末‐近世初))
    6. ( から転じて )
      1. (イ) 将棋で、相手の王将を逃げ道のないように包囲する。
        1. [初出の実例]「ならぬ間そたのみなりける さか馬にいられて後はつめにくし〈貞徳〉」(出典:俳諧・犬子集(1633)一五)
      2. (ロ) 囲碁で、自分の地(じ)を広げながら、相手の石に迫って石を打つ。〔壒嚢鈔(1445‐46)〕
    7. ドアなどに指などをはさむ。
    8. 謝罪やかたい約束のしるしに指を切り落とす。多く、博徒・てきや仲間、または、遊里での心中立てなどに行なわれる。
      1. [初出の実例]「指を一本つめてもらひたいんだ」(出典:流人島にて(1953)〈武田泰淳〉)

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