遮る(読み)サエギル

デジタル大辞泉 「遮る」の意味・読み・例文・類語

さえ‐ぎ・る【遮る】

[動ラ五(四)]《「さいぎ(遮)る」の音変化》
間に隔てになるものを置いて、向こうを見えなくする。「幕で―・る」「木々に太陽光線が―・られる」
進行行動邪魔してやめさせる。妨げる。「発言を―・る」
[補説]「さえ」を「へ」とみて、歴史的仮名遣いを「さへぎる」とする説が多かったが、中古の諸例は「さいぎる」とあるところなどから、現在では、その音変化とみるのが妥当と考えられている。
[可能]さえぎれる
[類語](1隠す包み隠す押し隠す覆い隠す覆うくらます潜める忍ばせるかくまう隠し立てひた隠し隠蔽隠匿秘匿塞ぐ閉ざす閉める閉じるたてる閉め切るふうずるはば遮断する封鎖する閉鎖する閉塞へいそくする/(2妨げる抑える立ち塞がるせきとめる阻む食い止める立ちはだかる制止遮断妨害阻止押しとどめるストップを掛ける掣肘せいちゅう封殺諫止挫く弱める砕く邪魔妨害阻害そがい干渉横槍よこやり障害支障障壁さわ邪魔だて水を差す水をかける足を引っ張る削ぐ圧伏圧殺捕まえる握る挟むブレーキが掛かる腰を折る

さい‐ぎ・る【遮る】

[動ラ四]《「さききる」の音変化》「さえぎる」の古形
毛野の臣軍を―・り」〈継体紀〉

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「遮る」の意味・読み・例文・類語

さえ‐ぎ・る【遮】

  1. 〘 他動詞 ラ行五(四) 〙 ( 「さいぎる(遮)」の変化した語 )
  2. じゃまし、さまたげる。防ぎとめる。
    1. [初出の実例]「尽に属(したか)へる兵(つはもの)を起して、孔舎衛(くっさえ)の坂に徼(サヘキリ)て、与(とも)に会(あ)ひ戦(たたか)ふ」(出典日本書紀(720)神武即位前(寛文版訓))
    2. 「人をほろぼし、身をたすからんと思ふ悪心のみ遮(サヘギッ)て、善心はかつて発(おこ)らず」(出典:高野本平家(13C前)一〇)
  3. 先立って行なう。〔日葡辞書(1603‐04)〕
  4. へだてをして見えないようにする。へだてふさぐ。古くは「眼(まなこ・め)に遮る」の形で、目の前に現われて、へだてをする、の意を表わした。
    1. [初出の実例]「眼に遮る者は檜原・槇の葉、老の力ここに疲れたり」(出典:海道記(1223頃)菊川より手越)
    2. 「朦朧として女の姿、わが眼に遮(サヘギ)りにき」(出典:読本・南総里見八犬伝(1814‐42)二)

遮るの語誌

( 1 )従来、この語の語構成を「障(さ)へ切る」と考え、歴史的仮名づかいを「さへぎる」とするものが多かったが、平安時代にはほとんど「さいきる」の形で現われ、「さへきる」となるのは鎌倉以降であるところから、サキキル→サイギル→サエギルと変化したものと考えるのが妥当である。なお、連濁をおこしていることや「名義抄」のアクセント面から考えても「障へ切る」説は成立しないとされている。
( 2 )この動詞の本来の意味は、進行の妨げをすることであるが、中古末には、の相手より先に行動を起こす、先んずる、という意味用法が生じた。


さい‐ぎ・る【遮】

  1. 〘 他動詞 ラ行四段活用 〙 ( 「さききる(先切)」の変化したもの。「さえぎる」の古形 )
  2. さえぎる(遮)
    1. [初出の実例]「外は海路を邀(た)へて、〈略〉内は任那に遣せる毛野臣の軍を遮(サイキ)りて」(出典:日本書紀(720)継体二一年六月(前田本訓))
  3. さえぎる(遮)
    1. [初出の実例]「左の、月の山の端出づるより、いかにかすべき入らむ惜しさをといへる、あまりさいぎりてやあらむ」(出典:内閣文庫本仁安元年中宮亮重家歌合(1166))
    2. 「あれが志をさいきりて、こちから云て賂を以てよろこばせて」(出典:史記抄(1477)一一)
  4. さえぎる(遮)
    1. [初出の実例]「かかる世のためし目にさいきり耳にみてれども、思ひよりておとろく心なくして」(出典:米沢本沙石集(1283)五本)

遮るの語誌

→「さえぎる(遮)」の語誌

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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