デジタル大辞泉
「遠見」の意味・読み・例文・類語
えん‐けん〔ヱン‐〕【遠見】
[名](スル)
1 遠くを見ること。遠望。とおみ。「峠から村落の灯を遠見する」
「かの滋藤漫々たる海上を―して」〈平家・五〉
2 将来のことを見通すこと。
「大利の基いをひらくの理だから、落付いて―すべし」〈魯文・西洋道中膝栗毛〉
3 遠くの眺め。遠景。
「万山いちじろき―は」〈九位〉
4 能楽用語。
㋐遠くを見渡すしぐさをして、観客に遠景を想像させる演技。
㋑ある演技が間接的に何かを観客に想像させる効果。
「無上の上手は…舞歌の風義の―現はるる所にて」〈花鏡〉
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
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えん‐けんヱン‥【遠見】
- 〘 名詞 〙
- ① ( ━する ) 遠方を見ること。遠くに視線をやること。遠望。とおみ。〔色葉字類抄(1177‐81)〕
- [初出の実例]「Yenqen(エンケン)。トヲウヲ ミハルカス コト」(出典:天草本平家・伊曾保言葉の和げ(1593))
- ② 遠くのながめ。遠くから見た景色、姿。遠景。
- [初出の実例]「遠見などもなき山河のほとりに」(出典:遊楽習道風見(1423‐28頃))
- ③ ( ━する ) 遠い将来のことを見通すこと。
- [初出の実例]「落付いて遠見(ヱンケン)すべし」(出典:西洋道中膝栗毛(1870‐76)〈仮名垣魯文〉一一)
- [その他の文献]〔韓非子‐孤憤〕
- ④ 能楽用語。
- (イ) 遠くを見渡す動作によって観客に広い遠景を想像させる効果。
- [初出の実例]「橋懸りの遠見の風体(ふうてい)」(出典:三道(1423))
- (ロ) 外に現われた姿。見風(けんぷう)。
- [初出の実例]「女躰の舞、ことに上風にて、幽玄妙躰の遠見たり」(出典:二曲三体人形図(1421))
- (ハ) 間接的に現われる効果。ある背景、根本にあるものが間接的に遠くから力を及ぼして生じる効果的な姿。
- [初出の実例]「非風却(かへっ)て是風になる遠見(エンケン)あり」(出典:至花道(1420)闌位の事)
とお‐みとほ‥【遠見】
- 〘 名詞 〙
- ① ( ━する ) 遠くを見ること。遠くから見ること。また、そのながめ、状態、様子。遠目。転じて、先の見とおし。
- [初出の実例]「遠見も
怜(おもしろ)し」(出典:東大寺諷誦文平安初期点(830頃))
- ② ( ━する ) 警戒または偵察のために遠くの状勢をうかがうこと。高い所から四方を見張ったり、遠くまで潜行して敵状をさぐること。また、その人。遠物見。遠目付。斥候。遠目。
- [初出の実例]「家に郎等二三十許(ばかり)を置て、少々を櫓に登せて遠見をせさせて」(出典:今昔物語集(1120頃か)二五)
- ③ 「とおみけみ(遠見検見)」の略。
- [初出の実例]「とを見けんみを立て呼ばはる。とを見申すやう」(出典:狂言記・今悔(1660))
- ④ 歌舞伎の大道具で、遠景を描いた背景。かきわり。
- [初出の実例]「本舞台、向う一面の須磨の浦の遠見(トホミ)」(出典:歌舞伎・一谷嫩軍記(1752)序幕)
- ⑤ 歌舞伎の演出で、ある役の遠方での演技を見せるために、同じ扮装(ふんそう)をした子役を使う演出法。
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
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遠見 (とおみ)
(1)歌舞伎の大道具用語で,背景に使われる〈書割(かきわり)〉のうち,とくに遠景を描いたもの。その様式にはいろいろあるが,古典歌舞伎に使われるものは,〈野遠見(のどおみ)〉〈山遠見〉〈海遠見〉〈庭遠見〉,町家を描いた〈町屋(まちや)遠見〉,神社を描いた〈宮遠見〉などに分類される。(2)歌舞伎の演出用語で,遠くに登場する人物をあらわすため,その人物と同じ扮装をした子役を登場させる技法。また,その役をいう。《一谷嫩軍記(いちのたにふたばぐんき)》の組打(くみうち)の熊谷と敦盛,《ひらかな盛衰記》の逆櫓(さかろ)の松右衛門と船頭などのほか,《恋飛脚大和往来(こいびきやくやまとおうらい)》の新口村(にのくちむら)の忠兵衛と梅川にもこの手法を使うことがある。
執筆者:松井 俊諭
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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「遠見」の読み・字形・画数・意味
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
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