(読み)カギ

デジタル大辞泉 「鉤」の意味・読み・例文・類語

かぎ【×鉤】

先の曲がった金属製の器具。物をひっかけるのに使う。また、そうした形のもの。
長い柄の先に1が付いたもの。物にひっかけて引き寄せたり、武器にしたりする。
鉤括弧かぎかっこ」に同じ。
[類語]金具掛け金口金留め金蝶番引き金締め金尾錠自在鉤フック

こ【×鉤】

《「こう(鉤)」の音変化》巻き上げた御簾みすを掛けておくかぎ形の金具。
「御簾の帽額もかう総角あげまきなどにあげたる―のきはやかなるも」〈・二〇一〉

はり【×鉤】

《「」と同語源》釣り針のこと。

ち【×鉤】

釣り針。ちい。
おとのみこと時に既にこのかみの―を失ふ」〈神代紀・下〉

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精選版 日本国語大辞典 「鉤」の意味・読み・例文・類語

はり【針・鍼】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 布帛などを縫うのに用いる具。鋼鉄でまるく細長くつくり、一端は鋭くとがり、他端に糸を貫き通す穴がある。古くは、骨や角などを用いて製した。また、穴のない、布を刺留めるのに用いる留針待針(まちばり)もある。
    1. [初出の実例]「草枕旅の翁と思ほして波里(ハリ)そ賜へる縫はむ物もが」(出典万葉集(8C後)一八・四一二八)
    2. 「かしこう縫ひつと思ふに、はりをひき抜きつれば、はやくしりを結ばざりけり」(出典:枕草子(10C終)九五)
  3. ( 鍼 ) 鍼治療に用いる具。また、その術。
    1. 鍼<b>②</b>〈病草紙〉
      〈病草紙〉
    2. (イ) 金、銀、鉄などで作られた治療用のもの。長さ、太さ、形状は、目的によって異なる。一定の法則に従って皮下あるいは皮内に刺入し、諸種疾病の治療を行なう。
      1. [初出の実例]「金の桿(ハリ)を以て其の眼の膜を決くる」(出典:大般涅槃経治安四年点(1024)八)
    3. (ロ) (イ)を用いて療治すること。鍼治。
      1. [初出の実例]「私は第一針が上手でござる」(出典:虎明本狂言・神鳴(室町末‐近世初))
  4. に似て一端がとがり、物を刺したりするもの。
    1. (イ) ( 「鉤」とも ) 釣り針のこと。ち。
      1. [初出の実例]「さは、親には、これを食はするぞと知りて、針をかまへて釣るに」(出典:浜田本宇津保(970‐999頃)俊蔭)
    2. (ロ) とげ。
      1. [初出の実例]「此の草両辺に多く利(と)き刺(ハリ)有り」(出典:蘇悉地羯羅経略疏天暦五年点(951)六)
    3. (ハ) 蜂の尾部にあり、他の動物に刺して毒を伝えるもの。〔日葡辞書(1603‐04)〕
    4. (ニ) 注射器の先端につけ、皮肉に刺すもの。注射針。〔日葡辞書(1603‐04)〕
    5. (ホ) レコードの盤面から振動をひろう器具。レコード針。
      1. [初出の実例]「彼女は自ら針の附け換へに任じたり、音譜を円盤に嵌めたりした」(出典:異端者の悲しみ(1917)〈谷崎潤一郎〉一)
    6. (ヘ) 編み物などに用いる具。かぎ針、棒針の類。
    7. (ト) 物を重ねて押さえとめるもの。虫ピンやホッチキスに用いるものなど。
  5. ( (イ)から ) 誘惑し、だますもののたとえ。
    1. [初出の実例]「Farini(ハリニ) カカル〈訳〉誘惑におちいる。詐欺にかかる」(出典:日葡辞書(1603‐04))
  6. 時計、磁石計器などの、目盛や数字をさし示すもの。
    1. [初出の実例]「針のそばに、くろがねを不置」(出典:元和航海書(1618))
  7. 細く長い形。また、きわめて細小なもののたとえ。
    1. [初出の実例]「『それははりにきざむか』『いやいや是は鱠につくると申』」(出典:狂言記・俄道心(1700))
  8. 裁縫。縫い物。また、それをする人。おはり。
    1. [初出の実例]「鑓よりも針には物がいひやすし」(出典:雑俳・川傍柳(1780‐83)五)
  9. 人の心を傷つけるような言動をすること。陰険な心。
    1. [初出の実例]「こころにははりもちながらあふときはくちにみつあるきみぞわびしき」(出典:仮名草子・虫の歌合(1624‐44頃か))

こう【鉤】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙
    1. まがった金属製のもの。かぎ、鎌、釣針の類。また、新月のたとえ。
      1. [初出の実例]「来非我力。帰非我志。招我以鉤。引我以索。泛舶之朝。数示異相。帰帆之夕。縷説宿縁」(出典:性霊集‐二(835頃)大唐青龍寺故三朝国師碑)
      2. 「殺さうとて射たれども鉤にあたりて幸に不死でこそあれぞ」(出典:史記抄(1477)一二)
      3. [その他の文献]〔梁元帝‐草名詩〕
    2. こう(勾)[ 一 ]
    3. 筆の使い方。中指の先で筆管の前を押え止める。
    4. 画法。くまどること。くまどり。
  2. [ 2 ] 四摂(ししょう)菩薩の一つ。釣針で魚を釣るのにたとえて、菩薩が衆生を誘引する段階をいう。金剛鉤菩薩。

こ【鉤】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「鉤」は先端の折れ曲がった器具の意 )
  2. つり針。はり。
  3. すだれを巻き上げたときにかけるかぎ形の金具。
    1. 鉤<b>②</b>〈枕草子絵巻〉
      枕草子絵巻
    2. [初出の実例]「御簾の帽額、総角などにあげたるこのきはやかなるも、けざやかに見ゆ」(出典:枕草子(10C終)二〇一)

ち【鉤】

  1. 〘 名詞 〙 魚を釣る針。釣針(つりばり)。ちい。
    1. [初出の実例]「此の鉤(ち)は、淤煩鉤(おぼち)、須々鉤(すすち)貧鉤(まぢち)、宇流鉤(うるち)」(出典:古事記(712)上)
    2. [その他の文献]〔改正増補和英語林集成(1886)〕

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デジタル大辞泉プラス 「鉤」の解説

米国の作家ドナルド・E・ウェストレイクのミステリー小説(2000)。原題《The Hook》。『斧』の姉妹編

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【釣針】より

…全体が3cmほどの,小さいが均整のとれた形のものである。これと別に,軸と鉤(かぎ)の部分を別々につくり,組み合わせて使う形のものがある。一般にはUあるいはV字型につくられ,全長が12cmになる大型のものもある。…

※「鉤」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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