鎮花祭(読み)チンカサイ

デジタル大辞泉 「鎮花祭」の意味・読み・例文・類語

ちんか‐さい〔チンクワ‐〕【鎮花祭】

平安時代以降、神祇官で、陰暦3月の桜の花の散るころ特に活動するといわれる疫病神をはらうため、大和大神おおみわ狭井さい二社の神を祭った行事神社でも行われ、現在は簡略化されて伝わる。はなしずめのまつり

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精選版 日本国語大辞典 「鎮花祭」の意味・読み・例文・類語

ちんか‐さいチンクヮ‥【鎮花祭】

  1. 〘 名詞 〙 令制で、神祇官が行なった祭祀の一つ。陰暦三月、桜の花の散る頃、悪疫の流行を防ぐために、行疫神(ぎょうやくじん)大神(おおみわ)・狭井(さい)の二神をまつった行事。のち、民間でも行なわれた。はなしずめのまつり。《 季語・春 》 〔令義解(718)〕

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「鎮花祭」の意味・わかりやすい解説

鎮花祭
ちんかさい

奈良県桜井市大神神社とその摂社である狭井神社さいじんじゃ)で毎年 4月18日に行なわれる祭り。「はなしずめのまつり」ともいう。奈良時代の『令義解』にもこの両社で行なうことが記されている春の祭りで,古代においては朝廷神祇官によって行なわれる国家的祭祀であった。花の散る頃に疫病神も分散して疫病をはやらせると考えられていたことから,それをしずめるために行なわれるようになった。大神神社と狭井神社で行なわれるのは,崇神天皇の治世に疫病が流行した際に,大神神社の祭神である大物主神をまつったところ疫病がやんだことによると伝えられる。今日では薬祭りとも呼ばれ,奈良県内はもちろん全国の薬業関係者が参集し,神饌として薬草でもあるユリの根とスイカズラを供えて,まず大神神社,次いで狭井神社で神事に臨む。同様の祭りには,平安時代に始まったと伝えられ,今日では毎年 4月第2日曜日に行なわれている,京都市北区紫野の今宮神社やすらい祭などがある。

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改訂新版 世界大百科事典 「鎮花祭」の意味・わかりやすい解説

鎮花祭 (ちんかさい)

〈はなしずめのまつり〉ともいう。疫病が流行しないようにと疫癘(えきれい)を鎮めるまつり。神祇令の鎮花祭は注釈〈義解〉によると,毎年旧暦3月(季春)に奈良県桜井市の大神(おおみわ)神社と,同神社の摂社である狭井(さい)神社(狭井坐大神荒魂神社)の二つのまつりで,それは春の花が飛び散るときに,疫神が分散して病気を流行させるので,これを鎮めるために行われるものとある。このまつりの起源は,崇神天皇が大田田根子(おおたたねこ)に三輪の神をまつらせたのがはじまりとされ,その後,平安時代にも盛んに行われた。現在の鎮花祭の祭日は両神社ともに4月18日。俗に〈薬まつり〉ともいわれる。また,このまつりは上記2神社のみでなく,多くの神社で行われたが,いまでも京都市北区の今宮(いまみや)神社境内社である疫神社今宮祭は,〈やすらい祭〉の名で行われている。これは疫神を追送する行事が風流(ふりゆう)化したものである。このほか,奈良県春日大社の摂社水谷(みずや)神社や滋賀県大津市の長等(ながら)神社その他で鎮花祭が行われている。
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鎮花祭 (はなしずめのまつり)

鎮花祭(ちんかさい)

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百科事典マイペディア 「鎮花祭」の意味・わかりやすい解説

鎮花祭【ちんかさい】

〈はなしずめのまつり〉とも。旧3月落花のころは悪疫が流行しやすいので,奈良県桜井市三輪の大神(おおみわ)神社と狭井(さい)神社などの疫神をまつることが定められた(大宝律令,延喜式)。今も春日大社の摂社水谷(みずや)神社や大津市の長等(ながら)神社などで4月神前に桜の枝をささげ,神楽(かぐら),狂言などの芸能を演じる。今宮神社のやすらい祭も有名。
→関連項目厄病神

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世界大百科事典(旧版)内の鎮花祭の言及

【鎮花祭】より

…疫病が流行しないようにと疫癘(えきれい)を鎮めるまつり。神祇令の鎮花祭は注釈〈義解〉によると,毎年旧暦3月(季春)に奈良県桜井市の大神(おおみわ)神社と,同神社の摂社である狭井(さい)神社(狭井坐大神荒魂神社)の二つのまつりで,それは春の花が飛び散るときに,疫神が分散して病気を流行させるので,これを鎮めるために行われるものとある。このまつりの起源は,崇神天皇が大田田根子(おおたたねこ)に三輪の神をまつらせたのがはじまりとされ,その後,平安時代にも盛んに行われた。…

【春祭】より

…祭りは本来季節をもたらす行事であるから,季節感覚に先行する傾向がある。古代律令制で神祇官所祭の四時祭では,仲春2月の祈年(としごい)(祈年祭(きねんさい))と季春3月の鎮花(はなしずめ)(鎮花祭(ちんかさい))とが春祭にあたった。祈年のトシの原義は稲穀の実りをいい,春に農事を開始するにあたり御年神に一年の稲作が無事に成就して豊かで平和な年であることを祈る祭りが祈年祭であり,鎮花祭は古来御霊を意味するモノの主である大物主神をまつる大神(おおみわ)神社の神事で,モノを花に見立てモノの飛散が悪疫を流行させぬよう落花を鎮める行事だとされる。…

※「鎮花祭」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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