(読み)ゲン

デジタル大辞泉 「限」の意味・読み・例文・類語

げん【限】[漢字項目]

[音]ゲン(呉) [訓]かぎる きり
学習漢字]5年
範囲を定める。かぎる。「限定局限制限
区切り。かぎり。「限界限度期限権限刻限際限上限年限無限

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精選版 日本国語大辞典 「限」の意味・読み・例文・類語

かぎり【限】

  1. 〘 名詞 〙 ( 動詞「かぎる(限)」の連用形の名詞化 ) 時間、空間、程度における限界、極限。また、その限界点に達するまでの範囲を表わす。
  2. [ 一 ] 時間的な限界。
    1. 限界となる時点。さかいめ。はて。期限。また、ある特定の時期。折。機会。
      1. [初出の実例]「かくのみや息づき居らむあらたまの来経(きへ)行く年の可伎利(カギリ)知らずて」(出典:万葉集(8C後)五・八八一)
      2. 「生きてまたあひみむことをいつとてかかぎりも知らぬ世をばたのまむ」(出典:源氏物語(1001‐14頃)松風)
    2. 時間的限界に到達すること。最終。最後。おわり。
      1. [初出の実例]「いはほろのそひの若松可藝利(カギリ)とや君が来まさぬうらもとなくも」(出典:万葉集(8C後)一四・三四九五)
      2. 「五郎も、かぎりと思ひてや」(出典:曾我物語(南北朝頃)一〇)
    3. 限界に達するまでのある期間。時間の範囲。あいだ。
      1. [初出の実例]「立ちしなふ君が姿を忘れずは世の可藝里(カギリ)にや恋ひ渡りなむ」(出典:万葉集(8C後)二〇・四四四一)
    4. 人生の限界。
      1. (イ) 臨終。最期。危篤
        1. [初出の実例]「今来んといひて別れし人なればかぎりと聞けどなほぞ待たるる」(出典:大和物語(947‐957頃)五五)
        2. 「心細かりつる思ひに病になりて、かぎりになりたる由を」(出典:うたたね(1240頃))
      2. (ロ) 死者をとむらうこと。死後の供養。葬送。とむらい。→限りの事
        1. [初出の実例]「かぎりの有様さへはかなげにて、煙も多くむすぼほれ給はずなりぬるも」(出典:源氏物語(1001‐14頃)総角)
    5. 近世遊里の語。限りの太鼓。また、それを打つ時刻。→限りの太鼓
      1. [初出の実例]「廓の限り打迄に、急度(きっと)二品お目に掛けませふ」(出典:歌舞伎・韓人漢文手管始(唐人殺し)(1789)一)
  3. [ 二 ] 空間的な限界。
    1. 限界となる地点。しきり。さかい。はて。
      1. [初出の実例]「此の法は能く量も無く辺(カキリ)も無き福徳(いきほひ)果報(むくい)を生(な)して」(出典:日本書紀(720)欽明一三年一〇月(寛文版訓))
      2. 「豈に四海の涯(カキリ)に達せむや」(出典:大慈恩寺三蔵法師伝院政期点(1080‐1110頃)七)
      3. 「南は塩釜の浦へ続きて、千嶋などいへども、なほそのかぎり見えず」(出典:都のつと(1367))
    2. 限界に達するまでのある範囲。「見渡すかぎりの雪野原」
  4. [ 三 ] 程度、数量の限界。物事の限度。制約。人間社会における制約として、「分限・きまり・おきて」などをも表わす。
    1. [初出の実例]「恋ひしさのかぎりだにある世なりせば年へて物は思はざらまし」(出典:是則集(平安中))
    2. 「限りある財をもちて、かぎりなき願にしたがふ事、得べからず」(出典:徒然草(1331頃)二一七)
    3. 「よその栄えは、うらやまじ、ものにはものの、分限(カギリ)あり」(出典:東西南北(1896)〈与謝野鉄幹〉野菊)
  5. [ 四 ] ( 「かぎりある」の形で ) 限定されたという意から転じて、重大な、大事な、尊重されるべき、の意を表わす。必ずしも良い評価だけではなく、悪い評価の場合にも用いる。→限ある位
    1. [初出の実例]「親之計にてこそあれなとといいて、限有むする事お背き、向背之心有ん物者、其代官職お皆々取へし」(出典:薩摩比志島文書‐建長五年(1253)七月一〇日・栄尊置文案)
  6. [ 五 ] ( 活用語の連体形、および助詞「の」に付いて、副助詞的、または接尾語的に用いる )
    1. 物事の程度の上限を表わす。最高。最上
      1. [初出の実例]「いつはとは時は分かねど秋の夜ぞ物思ふことのかぎりなりける〈よみ人しらず〉」(出典:古今和歌集(905‐914)秋上・一八九)
      2. 「てふの花に飛びかひたる、やさしきもののかぎりなるべし」(出典:俳諧・鶉衣(1727‐79)前)
    2. ある時点に到達するまでの限られた範囲内を表わす。…のあいだ。…のうち。事柄を限定して条件とする場合に用いられる。
      1. [初出の実例]「わが命の全(また)けむ限(かぎり)忘れめやいや日に異(け)には思ひ益すとも」(出典:万葉集(8C後)四・五九五)
      2. 「春きぬと人はいへども鶯の鳴かぬかぎりはあらじとぞ思ふ〈壬生忠岑〉」(出典:古今和歌集(905‐914)春上・一一)
    3. 特定のものを限定していう。…だけ。…にかぎって。
      1. [初出の実例]「色好みといはるる限五人、思ひやむ時なく夜昼来たりけり」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
      2. 「むつましきかぎりは宵よりつどひて」(出典:俳諧・奥の細道(1693‐94頃)旅立)
    4. ある範囲内にあるものすべて。あるだけ全部。ありったけ。皆。
      1. [初出の実例]「つみの限はてぬれば、かくむかふる」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
      2. 「びはの音(ね)のおぼゆるかぎり弾きて聞かせむ」(出典:更級日記(1059頃))
    5. ( 「かぎりは」の形で ) その動作や状態が続いているという条件のもとにある時は必ず…である(する)の意を表わす。(…である)以上は。(…している)以上は。

限の語誌

( 1 )上代では、「きわみ」が限界の地点を指すのに対して、「かぎり」は時間的な限界を指す形式名詞としての用法が多く見られる。
( 2 )「かぎり」の空間的な限界を指す用法は、平安期の訓点資料の例などに見られるもので、「無限」「無涯」「無辺」などの漢語の影響が考えられる。
( 3 )程度の限界を表わす用法も平安期から見られるようになるが、「かぎりあり」「かぎりなし」のように類型的に用いるものが多く、この用法は漢文の空間的な限界を指す用法と関連があると思われる。


げん【限】

  1. 〘 名詞 〙 ある程度までの範囲内。さかいめ。かぎり。
    1. [初出の実例]「殊に娘(ねへ)さん方がお年頃に成って居る者を、夜遊びに出すは一番不良(わる)う御座います。但(ただし)、寄席は其限(ゲン)にあらず、誠に結構です」(出典:落語・お節徳三郎恋の仮名文(1889)〈禽語楼小さん〉)

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