宮崎県と鹿児島県の県境に位置する火山群の総称。霧島連山・霧島連峰などともよばれる。県内ではえびの市・小林市・
最古の噴火記録は「続日本紀」天平一四年(七四二)一一月一一日条とされ、大隅国司は今月(九月あるいは一〇月)二三日から二八日まで太鼓のような大音響がとどろき、大地が振動したと伝えている。延暦七年(七八八)三月四日には「大隅国曾於郡曾乃峯上」に雷鳴を伴う火炎があがり、黒煙を噴出したのち沙の雨が峯下五、六里まで降り、黒い沙石が二尺も積ったという(同書同年七月四日条)。
「続日本後紀」承和四年(八三七)八月一日条に「日向国(中略)諸県郡霧島岑神、並預官社」とみえ、この頃
鹿児島県北東部、宮崎県境に位置する活火山群。霧島連山・霧島連峰などともよばれる。座積の長径は北西から南東に約三〇キロ、短径は北東から南西に約二〇キロ。最高峰は
韓国岳と高千穂峰を結ぶ
最古の噴火記録は「続日本紀」天平一四年一一月一一日条とされ、大隅国司は九月あるいは一〇月の二三日から二八日まで太鼓のような大音響がとどろき、大地が振動したと伝える。
出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報
鹿児島県と宮崎県の県境付近にある火山群。北西~南東方向に伸びる楕円状の地域(長径約30km,短径約20km)に大小20余りの火山体や火口が存在する。韓国(からくに)岳(1700m)を最高峰に,標高1300mをこえる山体は10以上におよぶ。中生代堆積岩類(四万十層群)および第三紀安山岩類を基盤として,第四紀初頭に噴火活動が始まった。初期の活動では,現在の韓国岳付近を噴出中心としておもに安山岩質溶岩(栗野安山岩類)が流出し,標高1000m以上に達する広大な楯状火山が生じた。この楯状火山がある程度開析された後に,再び安山岩質溶岩(白鳥安山岩類)が流出した。この溶岩は,既存の楯状火山の山頂から中腹部を覆い,標高1300m以上におよぶ楯状火山を形成した。これらの楯状火山の山体上および周辺地域では,おもに更新世末以降現在に至るまでの期間に,多くの場所で噴火活動が起こり,安山岩質の比較的小規模な火山体や火口が多数形成された。韓国岳,大浪池(1411m),新燃(しんもえ)岳(1421m),中岳(1332m),御鉢(おはち)(1206m),高千穂峰(1573m)などの霧島火山中央の山頂部を構成する山体,並びに飯盛山(846m),甑(こしき)岳(1301m),夷守(ひなもり)岳(1344m),大幡山(1352m)などの山体,さらに六観音御池(ろくかんのんみいけ),白紫(びやくし)池,不動池,大幡池,御池(みいけ)などの火口はこの時期に形成された。これらの火口や火山体は,生成時期が新しいため,いずれも山体の開析はあまり進んでいない。韓国岳,大浪池,新燃岳,大幡山,夷守岳,御鉢などは砕屑丘(さいせつきゆう)で,特に前3者は大型の火口をもつ。また,大浪池と新燃岳の火口底には火口湖がある。中岳,高千穂峰などは成層火山で,六観音御池,不動池,大幡池,御池などは水をたたえたマールないしは爆裂火口である。
噴火記録は,1200年以上も前から多数残されているが,有史時代におけるほとんどの噴火活動は,新燃岳と高千穂峰御鉢で起こっている。いずれも,スコリア質火山灰の噴出を伴う噴火ないしは水蒸気爆発であり,溶岩が流出した記録はない。最近では,1971年に手洗温泉付近で小規模な水蒸気爆発があった。
霧島火山地域には,霧島温泉やえびの高原付近をはじめとして,多くの噴気孔や温泉が分布する。特に霧島温泉郷を中心とする大浪池南西麓一帯は霧島地熱地帯と呼ばれ,多数の温泉がある。山地斜面は一般に,密な植生で覆われている。高度差が大きいため,植生は山麓部の常緑広葉樹林から中腹部の混交林,さらに山頂部の落葉広葉樹低木林,草地へと垂直的に変化している。雄大で多様な火山景観を中心とする観光資源に恵まれ,霧島屋久国立公園に含まれている。春から初夏には新緑とミヤマキリシマ,夏は緑,秋は紅葉,冬は樹氷が楽しめ,また温泉保養,登山,キャンプや冬季の白紫池における天然スケートリンク(現在は不利用)など,四季を通じて観光,レクリエーションができる。霧島温泉やえびの高原は霧島観光の主要拠点で,多くの観光施設がある。
執筆者:横山 勝三
霧島山は記紀にみえる天孫降臨の神話を伝え,その山名は雲霧の深いところに由来するという。霧島の神が歴史に登場するのは837年(承和4)にはじめて官社に列せられ,858年(天安2)従四位下に叙せられたことに始まるが,《延喜式》記載の霧島社の所在は不明である。霧島山信仰は平安時代中ごろの僧性空の入山によって新たな展開をみせた。性空は霧島,脊振山など諸山を歴訪し,播磨国書写山円教寺を開いた人物として知られているが,霧島とその山麓部では性空の創建と伝える堂社が多い。霧島山信仰は霧島六所権現,霧島六社,霧島山四方門として性空によってまとめられたとされる。霧島六所権現とは霧島山中央六所権現,狭野大権現,霧島東御在所両所権現,東霧島権現,西御在所霧島六所権現(霧島神宮),雛守六所権現の6社とされている。霧島山信仰のなかでは,隠れ念仏の一派カヤカベが霧島山と深い関係を保っていることが注目される。
執筆者:宮本 袈裟雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
宮崎・鹿児島両県にまたがり、おもに安山岩からなる活火山。西日本火山帯の火山フロント(前線)上に位置する。加久藤カルデラ(かくとうかるでら)の南縁部に生じた20を超える安山岩の小型の成層火山・砕屑丘(さいせつきゅう)からなる火山群である。高千穂峰(たかちほのみね)(1574メートル)、中岳(なかだけ)、大幡山(おおはたやま)、韓国岳(からくにだけ)(1700メートル)、御鉢(おはち)(高千穂峰の西)、新燃(しんもえ)岳(1421メートル)などがある。また、大浪池(おおなみいけ)、大幡池、御池(みいけ)、六観音(ろっかんのん)池など多くの火口湖がある。えびの高原と南西側山腹に温泉・地熱地帯があり、とくに、えびの高原の硫黄山(いおうやま)では活発な噴気活動がみられる。
四万十(しまんと)層群と、その上に重なっている第三紀火山岩が霧島火山群の基盤となっており、約30万年前に大噴火して形成された加久藤カルデラの南縁に形成された。完新世に入ってから大幡池や御池などの噴火があった。有史後は、おもに御鉢と新燃岳で噴火を繰り返してきた。御鉢は1923年(大正12)の噴火以来穏やかである。一方、新燃岳では2008年(平成20)8月や2010年3月~7月にかけて小規模な水蒸気爆発が発生し、2011年1月には300年ぶりの本格的なマグマ噴火が発生した。噴煙高度は火口上空約7キロメートルに達し、その後、火口は溶岩に満たされた。噴火は断続的に2011年9月まで続いた。噴出量は火山灰が約2000万立方メートル、溶岩が約1400万立方メートル(マグマ換算では合計約2500万立方メートル)。この噴火に先だち、えびの高原の地下を中心とする山体膨張がGPS(全地球測位システム)でとらえられており、2011年1月の噴火によっていったん収縮したものの、ふたたび、えびの高原の地下を中心とする膨張現象が観察された。再噴火の可能性が指摘されていたが、2012年に入り、膨張現象は収まった。東京大学や防災科学技術研究所などの協力のもと、気象庁が火山監視を行っている。
霧島山は古代においては天孫降臨説話の舞台とされ、高千穂峰の山頂には天孫降臨に際して逆さにつきたてたという天ノ逆鉾(あまのさかほこ)が建てられている。古くから山岳信仰の対象となっており、神社の拝殿が噴火によって焼失したなどの記録が多い。霧島錦江湾(きんこうわん)国立公園の中心地であり、2010年には「霧島ジオパーク」として日本ジオパークに指定された。
[中田節也]
植物は、700メートル以下は常緑広葉樹、800~1000メートルでは上部はアカマツ、下部はモミが主体で、1300メートル以上は落葉広葉樹、低木になり、ミヤマキリシマ、ヤシャブシなどがあり、とくに5月のミヤマキリシマの開花期はすばらしい。えびの高原のノカイドウ自生地は国指定天然記念物。温泉や噴気孔に富み、林田(はやしだ)、えびの高原、丸尾などの温泉郷が点在している。
[諏訪 彰]
『中村治三郎監修『霧島山』(1962・中村英数学園)』
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 日外アソシエーツ「事典 日本の地域遺産」事典 日本の地域遺産について 情報
出典 日外アソシエーツ「事典・日本の観光資源」事典・日本の観光資源について 情報
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