デジタル大辞泉
「拙」の意味・読み・例文・類語
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
つたな・い【拙】
〘形口〙 つたな・し 〘形ク〙
物事が劣っているさまについて広く用いる。
① 能力が劣るさま。
思慮分別に欠けるさま。おろかである。
※彌勒上生経賛平安初期点(850頃)「智の量り踈かに拙(ツタナク)して報土に生れむと欣ふいは分に越えて望む所なり」
※
随筆・
独寝(1724頃)上「世に女にかぎりは有まじ、いくたりも美人はあらんといふはつたなきこころ成
(なる)べし」
②
品格が劣っているさま。下品である。いやしい。つまらない。
※宇津保(970‐999頃)吹上上「わがつたなき娘の腹に、むまれ給へねば、かく知られぬ君もあるなり」
※評判記・名女情比(1681)四「さて上にやんごとなき御かたがたをつらねたてまつりて、此巻にして、つたなきうかれめのことまで、
書加へ侍る事」
③ 運に恵まれないさま。不運である。不仕合せである。また、薄命であるさま。
※伊勢物語(10C前)六五「宿世つたなくかなしきこと、このをとこにほだされて、とてなん泣きける」
※春寒(1921)〈
寺田寅彦〉「武運拙く最後を遂げる船戦の条は」
④ 事を行なうのにたくみでないさま。
下手である。拙劣である。まずい。
※西大寺本金光明最勝王経平安初期点(830頃)一「五者如来の身は、飢渇有ること無く、亦便利羸(やせ)憊(ツタナキ)の相も無し」
⑤ なさけない。遺憾である。残念である。
※
盲安杖(1619)「身をおもふ心の中に
悪業の鬼あり。一切の苦患有、
八万四千の煩悩有、つたなきかなや」
つたな‐げ
〘形動〙
つたな‐さ
〘名〙
せつ【拙】
[1] 〘名〙 (形動) つたないこと。へたなこと。
巧者でないこと。また、そのさま。
※俳諧・猿蓑(1691)跋「卒援レ毫不レ揣レ拙」
[2] 〘代名〙
自称。男性が自分をへりくだっていう語。
近世の遊里などで、きどった
表現として用いられた。
※
慶長日件録‐慶長九年(1604)一二月二〇日「入
レ夜九条殿へ参。拙也、口中腫痛之間、頓退出」
※滑稽本・七偏人(1857‐63)二「拙(セツ)も遅参に及んではそ(其)の罪また軽からず」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報