(読み)ギョウ

デジタル大辞泉 「仰」の意味・読み・例文・類語

ぎょう【仰】[漢字項目]

常用漢字] [音]ギョウギャウ)(漢) コウ(カウ)(慣) ゴウ(ガウ)(呉) [訓]あおぐ おおせ おっしゃる
〈ギョウ〉
上を見あげる。あおぐ。「仰臥ぎょうが仰角仰視仰天仰望俯仰ふぎょう
人を見あげて敬う。「欽仰きんぎょう鑽仰さんぎょう
大げさ。「仰山大仰おおぎょう
〈コウ・ゴウ〉あがめる。「渇仰かつごう景仰けいこう信仰しんこう
[名のり]たか・もち

ぎょう〔ギヤウ〕【仰】

[形動]近世語程度のはなはだしいさま。仰山ぎょうさん。→仰仰ぎょうぎょうしい
「―にお江戸は賑やかだ」〈黄・栄花夢

ごう【仰/業】[漢字項目]

〈仰〉⇒ぎょう
〈業〉⇒ぎょう

こう【仰】[漢字項目]

ぎょう

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「仰」の意味・読み・例文・類語

あお・ぐ あふぐ【仰】

[1] 〘自ガ四〙 上のほうを向く。あおむく。
※万葉(8C後)一八・四一二二「みどりこの 乳(ち)乞ふが如く 天つ水 安布芸(アフギ)てそ待つ」
[2] 〘他ガ五(四)〙
① 上のほうを向いて、高い所を見る。高所を望み見る。
※万葉(8C後)九・一八〇九「菟原壮士(うなひをとこ)い 天(あめ)(あふぎ) 叫びおらび」
② (心理的に高い所のものを見る意から) 尊敬する。うやまう。
※大唐三蔵玄奘法師表啓平安初期点(850頃)「況や仏教の幽(はる)かに微(くは)しきをば、豈に能く仰(アフキ)(はか)らむや」
※古今(905‐914)仮名序「いにしへをあふぎていまを恋ひざらめかも」
③ (目上の人、尊敬する人などの)教えや命令、援助などを求めたり、受けたりする。請う。
愚管抄(1220)四「長者の身面目をうしなふ上に神慮又はかりがたし。ただ聖断をあをぐべし」
※故旧忘れ得べき(1935‐36)〈高見順〉七「その学資を退役将校の伯父に仰いでゐたが」
④ (上を向いて飲むところから) 一気に飲み干す。
五重塔(1891‐92)〈幸田露伴〉一二「ぐいと仰飲(アフ)ぎ〈略〉真に罪無き雑話を下物(さかな)に酒も過ぎぬほど心よく飲んで」
[3] 〘他ガ下二〙 上を向かせる。あおむける。
※百法顕幽抄平安中期点(900頃)「申し、鶏の足を仰(アフケ)るが如し」

おっしゃ・る【仰】

[1] 〘他ラ五(四)〙
① 「いう(言)」の尊敬語。言われる。仰せられる。
※歌舞伎・一心二河白道(1698)一「怖がってござれば仰(オッシャ)られまい」
判任官の子(1936)〈十和田操〉六「御礼をおっしゃいと三木のお母さんは教える」
② (人の名などに助詞「と」の付いた形を受けて) そういう名前でいらっしゃる。古くは謙譲語「申す」を用いた。
人情本・春色雪の梅(1838‐42頃か)四「此の旦那が〈略〉石場の伊之助さんと被仰(オッシャ)るお方だぜ」
[2] 〘他ラ下二〙 (一)に同じ。
狂言記・角水(1660)「なぜに、いやとおっしゃるるぞ」
浄瑠璃・鑓の権三重帷子(1717)上「お雪さまとお前とあはせた時、是かぎりとおっしゃれたか」
[語誌](1)室町時代に現われた「おしゃる」が江戸時代に「おっしゃる」となったとする説がある一方、二つとも同時的に例があるため共に「おおせある」または、「おおせらる」からの変化形と見る説もある。成立時期は近世前期と見られ、四段活用が多いが、下二段の例も宝暦頃までは並び行なわれたようである。
(2)下二段活用の使用された時期は短く、四段活用が現在にまで及んでいる。命令形はもと「おっしゃれ」「おっしゃい」の両形が使われたが、現在では「おっしゃい」に統一され、この命令形は「言いなさい」の意で主として、女性により用いられる。
(3)命令形、および助動詞「ます」に続く形に「おっしゃい」が現われること、「ます」の命令形「まし」「ませ」が直接付くことなどから、特別ラ行四段活用とか、ラ行変格活用とかと呼ぶべきだとする意見もある。

おしゃ・る【仰】

(「おおせある」が変化して一語化したもの。一説に「おおせらる」からとする)
[1] 〘他ラ四〙 「いう(言)」の尊敬語。言われる。仰せられる。おっしゃる。
※寛永刊本蒙求抄(1529頃)四「羲之がかいたとをしゃれ、百銭つつせうと云たれは」
[2] 〘他ラ下二〙 (一)に同じ。
※狂言記・抜殻(1660)「はて、ひょんな事を、おしゃれまする」
[語誌](1)室町末期から江戸初期頃まで例を見るが、中期の近松世話物になると、変化形と目される「おっしゃる」(四段中心)が優勢となって衰退する。
(2)敬意に関しては「日葡辞書」では普通の人や対等の人に用いるとあり、虎明本狂言では、「仰せらるる」(敬意高い)、「おしゃる」(敬意低い)のように使い分けられている。「狂言記」には「おっしゃる」が現われており、「おっしゃる」(敬意高い)、「おしゃる」(敬意やや低い)と、話し手が使い分けている。

おおせ おほせ【仰】

〘名〙 (動詞「おおす(仰)」の連用形の名詞化)
① 上位者のいいつけを敬っていう。おいいつけ。御命令。
※竹取(9C末‐10C初)「この玉取りえでは家に帰り来なとのたまはせけり。各仰承てまかりぬ」
※二人比丘尼色懺悔(1889)〈尾崎紅葉〉怨言「それ程御存じの筈〈略〉それをいかにお主様の命(オホセ)だとて」
② (「いいつける」語気が薄い場合) おっしゃること。おことば。
※落窪(10C後)二「北の方〈略〉典薬を呼びすゑて〈略〉といへば、典薬がいらへ『ことわりなきおほせなりや〈略〉』と述べ申したるに」
※怪談牡丹燈籠(1884)〈三遊亭円朝〉二〇「ハイ、仰(アフセ)の通り、どうも目上に縁がございません」

おしゃん・す【仰】

〘他サ特活〙 おっしゃいます。おおせられます。近世上方でいう。
※歌謡・松の葉(1703)三「あのおしゃんす事わいの、鹿島浦には宝船が著くとの」
[補注]江戸前期上方の遊里語であるが、成立過程については、(1)仰シャレ(リ)マス━オシャマス━オシャンス(湯沢幸吉郎)、(2)オシャレ(リ)マス━オシャリンス━オシャンス(湯沢幸吉郎(1)の修正)、(3)オオセラレマス━(オシャレマス)=オシャリマス━オシャマスとオシャンス(岸田武夫)、(4)「オシャル」に「ンス」のついた形(真下三郎)などの諸説がある。

ぎょう ギャウ【仰】

〘形動〙 程度のはなはだしいさま。おおげさなさま。仰山。
※日葡辞書(1603‐04)「Guiôna(ギョウナ) ヒト〈訳〉物事を大げさに言う人」
※咄本・軽口大わらひ(1680)三「それはさほどな事でもござらぬ。越後のかたはぎゃうな事」
[語誌]→「ぎょうさん」「ぎょうぎょうしい」の語誌

あお あふ【仰】

〘名〙 上向きのさま。おもにあおむきの寝姿をいう。
※浜荻(庄内)(1767)「あをになるを あをのけだま」

お・す【仰】

〘自サ下二〙 (「おおす(おほす)(仰)」の変化した語) 「言う」の尊敬語。おっしゃる。

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