デジタル大辞泉
「実録」の意味・読み・例文・類語
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じつ‐ろく【実録】
〘名〙
① (━する) 実際にあったことをありのままに記録すること。また、実際に
検分して記録すること。
※続日本紀‐和銅五年(712)
乙酉「凡国司、毎年実
二録官人等功過行能并景迹
一皆附
二考状
一申
二送式部省
一」 〔
漢書‐司馬遷伝賛〕
② 実際にあったことをそのまま記録した文書や本。事実の記録。
※文華秀麗集(818)中・賦得司馬遷〈菅原清公〉「実録伝無レ墜。洪漪逝不レ停」
※
読本・椿説弓張月(1807‐11)後「参考に諸本の
異同を挙て、実録
(ジツロク)所見なしといへり」
※滑稽本・和合人(1823)初「さうよ、是社(こそ)実録(ジツロク)だけれども、跡で人に話しても、ほんたうにはしねへゼ」
④ 編年史の一つの形式。古くは
中国で
天子の一代の事績を
編年体に記録したもの。これが数代分たまると紀伝体の
国史が編まれ、
王朝が替わると「漢書」「
晉書」「唐書」などの
正史が編まれる。日本にも、中国にならった「
文徳実録」「三代実録」がある。
※両足院本
山谷抄(1500頃)二「山谷が、今神宗の実録をしるすほどに、自負して云と云義もあり」
※
安愚楽鍋(1871‐72)〈
仮名垣魯文〉二「おとしばなしもをかしくっていいけれど根がこしれへものだからきいてしまってからは
ゆめを見たやうな
心持だがそこは実録
(ジツロク)のみっしりした徳にゃア太閤記でも後
風土記でもがうせいな物だヨ」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
実録 (じつろく)
shí lù
中国,皇帝一代の編年体記録。古く後漢あるいは魏晋南北朝のころにも作られているが,体裁のととのったのは唐・宋時代で,天子の言行を記録した起居注を主材料とし,これに諸官庁の記録類を加えて皇帝の没後に編集した。宋以後,遼・金・元などの異民族の王朝でも,同様に実録の編集につとめ,清末にいたった。実録は歴代王朝の正史の主要材料になっているので,史料としてきわめて重要なものであるが,元来宮廷の秘録ということで民間には流布を許さず,現在では宋の《太宗皇帝実録》のほか,明・清2朝の実録が残っているだけである。ただし明初以来の実録の主材料は詔勅・奏文・内外諸臣の記録などで,多少その内容は変質した観がある。なお,中国の制にならって,朝鮮にも高麗および李朝の実録(《李朝実録》)があるが,前者はすでに滅んで今日に伝わらない。またベトナムの阮朝にも《大南寔録(だいなんじつろく)》があり,日本にも古く《文徳実録》《三代実録》がある。
→清実録 →明実録
執筆者:谷 光隆
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
普及版 字通
「実録」の読み・字形・画数・意味
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
実録
じつろく
Shi-lu; Shih-lu
中国の皇帝一代の跡を記した編年体 (→年代記 ) の記録。皇帝側近の起居注官が毎日記録する日記体の記録 (起居注) を史官が整理し,これらをもとに皇帝の死後,その一代記として編纂。起居注は古くからあったといわれるが,実録の体裁は唐代頃から整えられたようである。しかし明,清両朝の実録が現存するだけである。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報