アルメニア(地方)(読み)アルメニア

百科事典マイペディア 「アルメニア(地方)」の意味・わかりやすい解説

アルメニア(地方)【アルメニア】

小アジアとカスピ海との間の地域に対する歴史的呼称。アルメニア人はハイアスタンと呼ぶ。アルメニア共和国,トルコ東部の山岳地帯に分かれる。周辺を高い山脈に囲まれた山地で,最高峰はアララト山(5123m)。南西部にワン湖,北東部にセバン湖があり,エルズルムの南に発するアラス(アラクス)川が東流してカスピ海に注ぐ。標高差による気温の較差がはげしく,降雨は少ない。総面積約11万km2。300万人以上のアルメニア人がこの地域に住み,畜産と農業を主とする。言語はアルメニア語。前4世紀アレクサンドロス大王に征服されたが,前2世紀に独立。前1世紀ローマ帝国の支配下にはいり,やがてキリスト教が広まり,4世紀初頭に世界で初めてこれを国家宗教とした(〈アルメニア教会〉参照)。7―8世紀にアラビア人,次いでトルコの支配下にはいった。16―18世紀にはトルコ,イランの間でアルメニア争奪戦が続いたが,ここにロシアが加わり,1828年トルコマンチャーイ条約により東部地域がロシア領となった。長年にわたる外国支配のもとで,ロシアや中東の各地に流出したアルメニア人は商業活動の盛んなことで知られる。トルコ領アルメニアでの民族運動に対して,1895年―1896年と第1次大戦期の1915年―1916年にトルコは大虐殺で応え,後者では100万人余の犠牲者を出した。アメリカその他各地の在外アルメニア人は約650万人と推定される。
→関連項目カフカス

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