コント(英語表記)Isidore Auguste Marie François Xavier Comte

デジタル大辞泉 「コント」の意味・読み・例文・類語

コント(〈フランス〉conte)

短編小説。特に機知に富み、ひねりを利かせた作品。
笑いを誘う寸劇。
[類語](1短編小説サーガショートショートストーリーテールナラティブヌーベルノベルノベレットフィクションロマンロマンス/(2寸劇茶番

コント(Auguste Comte)

[1798~1857]フランス哲学者社会学者。人間の知的発展は、神学的・形而上学的・実証的の三段階をたどるものとし、社会学の体系を樹立した。のち、宗教に傾き、人類教を唱えた。著「実証哲学講義」「実証政治体系」など。

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精選版 日本国語大辞典 「コント」の意味・読み・例文・類語

コント

  1. 〘 名詞 〙 ( [フランス語] conte )
  2. フランスに発達した文芸の短編形式の一つ。機知、風刺、皮肉など知的要素に富み、軽妙なまとまりをもつ短い話が多い。小話。
    1. [初出の実例]「誰の短篇(コント)か知らないが、ちょいとうまく出来てるね」(出典:今年竹(1919‐27)〈里見弴〉秋雨の宵)
  3. と同様の趣向で笑いをさそう寸劇。
    1. [初出の実例]「ハリキリのコントやっとコツが掴めて来た」(出典:古川ロッパ日記‐昭和一四年(1939)一月二五日)

コント

  1. ( Auguste Comte オーギュスト━ ) フランスの哲学者。社会学の創始者。フランス革命後の市民社会の危機を、科学を通じ、人間知性の改革によって再建することを主張。人類の知識の発展を神学的・形而上学的・実証的の三段階に分け、最後の段階において、真の予見可能な科学的知識を獲得できるとした。晩年宗教的傾向を帯び、「人類教」を唱えた。主著に「実証哲学講義」「実証精神論」など。(一七九八‐一八五七

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改訂新版 世界大百科事典 「コント」の意味・わかりやすい解説

コント
Isidore Auguste Marie François Xavier Comte
生没年:1798-1857

フランスの哲学者,社会学者であり,教育家,宗教家でもあった。南フランスのモンペリエの小官吏の家に生まれ,1814年パリの高等理工科学校に入学,しかし同校がその後閉鎖されたため退学を余儀なくされた。17年サン・シモンと出会い,青年時代を彼の秘書として過ごす。サン・シモンから大きな感化をうける。22年論文《社会再組織に必要な科学的作業のプラン》を発表し,その後サン・シモンから離れ,独立した歩みを始める。26年少数の聴講者を相手に自宅で哲学の講義を始め,これがのちに全6巻から成る《実証哲学講義》(1830-42)として刊行され,主著となる。44年クロティルド・ド・ボーClotilde de Vauxと出会い,彼女に恋をし,その死に遭遇する。コントはこの体験を通じて〈主観的統一〉の結論に到達し,晩年の大著《実証政治体系--人類教を創設するための社会学概論》全4巻(1851-54)を著す。57年9月,〈人類教religion de l'humanité〉の大司教として弟子たちに見守られながら,パリで死去。

 コントの終生変わらぬ根本的な問題意識は,当時のフランスさらにはヨーロッパの全体にひろがっていた無政府状態anarchieに終止符を打ち,統一unitéを再建することにあった。彼は当時の世俗的無政府状態が根源的には知的・精神的な無政府状態に由来しているとみ,知的・精神的な統一を樹立することこそが,時代の最も重要な課題であると考えた。しかし他面では,その人類の精神的発展に関する〈三段階の法則loi des trois états〉にもとづいて,人類精神の改革を主張した。すなわち,彼は神学的精神による統一の再建は不可能であり,形而上学的精神を経て,究極的にはただ実証的精神にもとづいてのみ可能であると考えていた。〈諸科学の序列〉の原理にもとづいて,数学から社会学にいたる一つの実証知の体系をつくりあげ,さらにこれを普及させることによって,知的そしてさらには世俗的な無政府状態に終止符を打つことに向けられたのである。しかし晩年において,たんなる知的統一だけでは決定的に不十分であることを悟ったコントは,それを含みつつも,より広い心情の統一としての実証宗教,神への礼拝ではなく,人間という偉大な存在を礼拝する〈人類教〉を創始し,これを普及させることによって,無政府状態の危機から救い出さねばならぬ,と考えるにいたった。

 コントの死後,〈人類教〉はほどなく勢いを失ったが,その実証主義は哲学のみならず歴史や文芸にも甚大な影響を与え,さらにその社会学は海をこえてJ.S.ミルやスペンサーに影響を与えるとともに,大陸それ自身においてもデュルケーム学派の社会学等を生み出す原動力となった。
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コント
conte[フランス]

軽妙な内容の短い物語のこと。フランスでは元来,内容・長短にかかわりなく韻文による物語を指していたが,中世末期から近世にかけて《サン・ヌーベル・ヌーベル》や《エプタメロン》といった風流小咄(こばなし)が出るにおよんでおおよその形式が定まった。長短の区別よりも,きわどい内容を盛りこんだり,辛味をきかせたり,童話風の幻想性をもった作品を称していわれ,ペローの皮肉っぽい教訓をもった童話風の物語が代表作。19世紀に入ってバルザックの《コント・ドロラティク(風流滑稽譚(こつけいたん))》やフローベールの《トロア・コント(三つの物語)》などが生まれたが,とりわけモーパッサンがこの形式を愛用した。日本では掌編小説,小品とも訳され,風流を取りこんだ日常観察の断片や,気のきいた風刺や諧謔(かいぎやく)味のある短編をさす。江戸小咄などの楽しい語りの伝統を受け継いだ近代的な文学ジャンルといえる。川端康成の《掌の小説集》や太宰治の《新釈諸国噺》などが好例。
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百科事典マイペディア 「コント」の意味・わかりやすい解説

コント

フランスの哲学者。実証主義,社会学の祖。サン・シモンに学び,フランス革命後の無政府状態を実証科学に基づく人間知性の改革によって克服すべきことを説く。人間精神は神学的,形而上学的,実証的の3段階を通じて進歩するという。晩年,その実証哲学を宗教化し,〈人類教〉を創始した。J.S.ミル,スペンサー,デュルケームらへの影響大。著書《実証哲学講義》(1830年―1842年),《実証政治体系》(1851年―1854年)。
→関連項目実証主義社会科学社会学社会有機体説

コント

フランス語で物語ることの意。短編小説の中で,意外な筋と結末をもつ,機知にあふれたものをいう。モーパッサンの作品はその典型。起源は古く民間伝承から来ている。中世の《聖杯物語》(聖杯伝説)のように韻文の場合もあるが,原則的には散文で書かれている。
→関連項目ファブリオー

コント

フランスの爵位。英語ではcount,イタリアではconte,スペインではcondeという。ふつう伯爵と訳す。名称はcomes(ラテン語で〈侍者〉)に由来し,この語はローマ帝国でも官名に用いられていたが,中世社会で特権を伴う称号となり,ヨーロッパ大陸各国で広く用いられた。→爵位
→関連項目バイカウント

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ピティナ・ピアノ曲事典(作曲者) 「コント」の解説

コント

ウィーンの音楽学校でヴァイオリンとピアノを学び、独学で作曲を始めた。その後はウィーン音楽アカデミーで作曲、指揮を本格的に学ぶ。メシアンやミヨーにも師事した。1950年代以降から積極的に作曲活動を行い、 ...続き

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旺文社世界史事典 三訂版 「コント」の解説

コント
Auguste Comte

1798〜1857
フランスの哲学者・社会学者で,実証主義の創始者
19世紀前半のフランスの社会的・思想的混乱を収拾するため,社会の理論的究明につとめた。知識の発展について3段階発展説を説き,神学的・形而上学的・実証的段階を説く。主著『実証哲学講義』『実証政治体系』。

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「コント」の解説

コント
Auguste Comte

1798~1857

フランスの哲学者,実証主義者。社会学の創始者でもある。社会活動を支配する法則も科学的に求められるとする。知識の発展段階を神学的,形而上学的,実証的に分けたのは有名。主著『実証哲学講義』。

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世界大百科事典(旧版)内のコントの言及

【科学史】より

…それゆえ,〈科学の歴史〉をたどろうとする試みも,19世紀西欧に始まったといってよい。たとえば,イギリスのJ.プリーストリーの一連の先駆的な仕事,そしてフランスのA.コントが提案した〈科学の歴史histoire de la science〉や,イギリスのW.ヒューエルの著した《帰納科学の歴史》(1837)などが,そうした試みを代表する。もとよりそれ以前にも,すでに個別の学問として成立していた数学や,天文学,医学などに関しては,それぞれに,個別的な学問史が書かれたことがあった(たとえばルクレールD.Leclerc(1652‐1728)の《医学史》(1696,1723)やドランブルJ.Delambre(1749‐1822)の《古代天文学史》(1817)など)が,科学が一つの理念として成立しはじめる19世紀半ば近くになって,ようやく科学史という学問もその理念を体して誕生したといえよう。…

【実証主義】より

… 〈実証主義〉は積極的主張としても軽蔑的な意味合いでも使われる。19世紀初頭にC.deサン・シモンコントによってこれがはじめて提唱されたときは,むろん積極的主張であったが,19世紀末に〈実証主義への反逆〉がはじまると,それは〈唯物論〉〈機械論〉〈自然主義〉などと等価な蔑称として使われた。自然科学的認識方法を無批判に人間的事象に適用する当時の支配的な思想傾向が漠然とこの名で呼ばれ,批判されたのである。…

【実証哲学講義】より

…1830年から42年にかけて刊行されたA.コントの主著で,原名はCours de philosophie positive。第1巻は序論と数理哲学,第2巻は天文哲学と物理哲学,第3巻は化学哲学と生物哲学,第4巻は社会哲学の理論的部分,第5巻はその歴史的部分,そして最後の第6巻はそのつづきと結論から成っている。…

【社会発展】より

…この〈進歩の観念〉は啓蒙主義に由来しており,社会の無限の進歩と人間の完成可能性という,当時勃興しつつあった市民階級の楽観主義的な歴史意識と理性への信頼を基礎にしている。こうした伝統に立って,たとえばコントは社会の進歩は知識の進歩によって決定されるとし,サン・シモンにならって人間の知識の発展を神学的→形而上学的→実証的の3段階に分け,社会構造も知識の発展に応じて憶測的知識の支配する軍事的時期から抽象的知識が支配する法律的時期を経て,科学的知識が支配する産業的時期へ進歩するとした。 社会進化=社会進歩とする考えは,その後階級社会の矛盾や未曾有の世界大戦の経験などを経て支持者を失うことになった。…

【社会変動】より


[学説]
 社会変動に関する諸学説は,それぞれが提唱された時代と社会の状態をよく反映している。19世紀初頭には,産業革命による産業社会の実現をめざして,サン・シモンとオーギュスト・コントは観念の段階論を唱えた。すなわち,神学―形而上学―実証主義という三段階論がそれである。…

【社会有機体説】より

…サン・シモンは社会を諸個人の単なる集合でなく一つの統合された生きた全体とみ,これを実証的に研究する社会生理学を提唱。その弟子コントは社会有機体l’organisme socialの語を創始し,生物と構成要素の細胞との類比によって社会を超個人的実在であると説き,社会の解剖学的・生理学的研究として社会静学,社会の成長の研究として社会動学を設けた。社会有機体説を論拠づけ国際的に普及させたのはスペンサーで,彼は生物も社会も無機体と異なり,時の経過につれて量が自然に増し,構造と機能とが分化・異質化しつつ,相互依存を強めて全体の統合が進むという共通点があることから〈社会は有機体であるA society is an organism〉と断定し,ダーウィン的な社会進化論を提起した。…

【進歩】より

…このように〈進歩の観念〉は,古代および中世の克服という理念に根ざした近世的な観念だが,翻せば,直線的な時間観,終末論的歴史観が優勢なキリスト教の土壌にこそ生じ得るもので,その意味ではヨーロッパ世界に特殊な思想ということができよう。 フランス革命の彼岸に夢見られたこういう〈進歩の観念〉は,以後コントに見られるように,現実法則として認識され,それに基づいて予見が可能となる実証主義的な楽観主義として定着する。しかし19世紀の中葉以降,進展する産業文明が新しい社会的矛盾を生み出すにつれて,進歩への信仰は揺らぎはじめ,左翼陣営からは市民階級のイデオロギーとみなされるようになる。…

【フェティシズム】より

…彼はその中で,〈アフリカ・ニグロにおいて,フェティッシュと呼ばれる地上の物的なある種の事物を崇拝すること,これをフェティシズムと命名する〉と定義している。これがのちのA.コントによる再定義を受け,〈フェティシズムは,世界に対する人間の本源的態度〉であり,人間精神史の最初の段階であるところの〈神学的状態〉における人間の心性であるとみなされたため,19世紀の実証主義時代を風靡した〈原始宗教=フェティシズム〉という定説が生まれたのであった。
[経済学]
 K.マルクスは,ド・ブロス,A.スミス,コント,L.A.フォイエルバハに通底する,以上のような人間の自然的感情を前提とした原始宗教論に疑問符を付し,フェティシズムの成立を社会的関係性,歴史性から解明しようとした。…

【分類】より

…5世紀にマルティアヌス・カペラが後の二つを落として自由七科ができた。17世紀初頭に新しい学問や技術の発展をふまえてF.ベーコンが新しい分類(図3)を始め,フランスの《百科全書》(図4)に引きつがれたが,19世紀にA.コントが歴史的,論理的順序による分類(図5)を提唱して,これが現在も大学の教科編成や図書の分類に用いられている。劇を喜劇,悲劇,頌歌に分類したのは前3世紀の詩人カリマコスであるが,彼はアレクサンドリアの図書館司書だったので,図書目録のための分類であった。…

【利他主義】より

…原語は〈他者〉を意味するラテン語のalterにさかのぼり,コントに由来し,エゴイズムないし利己主義に対して用いられた。訳語は明治10年代以来で〈愛他心〉とも訳されており,40年代以降には〈愛他説〉〈愛他主義〉〈主他主義〉とも訳された。…

※「コント」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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