とど(読み)トド

デジタル大辞泉 「とど」の意味・読み・例文・類語

とど[名・副]

[名]
最も成長した段階のボラ。
最後。限度。
「全体土間も六人―で見るといいけれど」〈滑・客者評判記〉
[副]《「とどのつまり」の略》結局。しまいに。
「二三の問答があって、―僕が狩野法眼元信の幅を…売渡す」〈漱石吾輩は猫である
[類語]結局結句つい畢竟ひっきょう詰まるところ帰するところせんずるところ要するにどの道いずれ所詮しょせんどうせつまり矢張りいずれにしても挙げ句挙げ句の果ていよいよとうとうどうともどうあってもどうでもどっち道とどのつまり

とど[副]

[副]
戸をたたく音や馬の駆ける足音など、響き渡る音を表す語。
「馬の音の―ともすれば松陰に出でてそ見つるけだし君かと」〈・二六五三〉
よたよたよろめくさま。
「―走りて倒れにけり」〈盛衰記・二〇〉

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精選版 日本国語大辞典 「とど」の意味・読み・例文・類語

とど

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙
    1. 魚、ボラの最も成熟した段階。
      1. [初出の実例]「とどは鰡つまりは何が成だろふ」(出典:雑俳・柳多留‐一一〇(1830))
    2. ( ━する ) 限度となること。また、ぎりぎりのところ。限度。数量を表わす語に付けても用いる。
      1. [初出の実例]「質におかれて、流れるときは、〈略〉七八両がとどしたが」(出典:談義本・当世穴穿(1769‐71)一)
  2. [ 2 ] 〘 副詞 〙とどのつまり」の略。特に歌舞伎ト書きに多く用いられる。
    1. [初出の実例]「当麻姫いろいろあって、とど滝の元へよぢのぼり」(出典:歌舞伎・鳴神(1742か))

とど

  1. 〘 副詞 〙 ( 多く「と」を伴って用いる )
  2. 戸をたたく音や馬の足音など、とどろき響く音を表わす語。
    1. [初出の実例]「馬の音の跡杼(とド)ともすれば松蔭に出でてそ見つるけだし君かと」(出典:万葉集(8C後)一一・二六五三)
  3. よろめくさまを表わす語。よたよたと。とぼとぼと。
    1. [初出の実例]「右の足を揚げて長尾をむずと蹈む。ふまれて下りに弓長(ゆんだけ)三杖ばかりとど走りて倒れにけり」(出典:源平盛衰記(14C前)二〇)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「とど」の意味・わかりやすい解説

トド
とど / 海馬
steller sea lion
[学] Eumetopias jubatus

哺乳(ほにゅう)綱鰭脚(ききゃく)目アシカ科の海産動物。分布域はきわめて広い。アリューシャン列島からアラスカ、カナダ、カリフォルニアにかけて、またカムチャツカ半島千島列島、オホーツク海北部および樺太(からふと)(サハリン)にも繁殖場や上陸場がある。冬から春にかけては北海道や沿海州の沿岸にも現れる。生息数は全体で10万~15万頭である。アシカ科動物のなかでもっとも大きく、海馬(かいば)ともよばれる。雄は体長3.2メートル、体重約1トン、雌は2.4メートル、280キログラムに成長する。大きさ以外にも雌雄で差があり、雄の成獣は頸(けい)部が著しく肥大し、長さ4センチメートルほどの剛毛で覆われる。アシカより明るい褐色で胸腹部は暗色である。上あごの第4と第5の頬歯(きょうし)(小臼歯(きゅうし)と大臼歯をあわせたもの)の間に歯1本分以上のすきまがあり、アシカやオットセイと区別できる。

 沿岸性の動物で、活動域はおもに岸より15海里(約28キロメートル)以内、180メートルより浅い海域である。食物の幅は広く、魚類や頭足類を中心に甲殻類も食べる。平坦(へいたん)な海岸だけでなく、かなり傾斜のある岩場でも繁殖する。一夫多妻性でハレムの広さは約225平方メートル、雌の数は平均10頭である。雄はこのハレムを20~40日間保有し、ほかの雄から防衛する。雄どうしの闘いは儀式化された示威行動で、かみ合って傷つくことは少ない。5~7月に交尾し、翌年の5、6月に出産する。1産1子で双産はまれである。新生子は体長100センチメートル、体重20キログラム、授乳期間は3~12か月と幅がある。雌は3、4歳、雄は5歳で性的に成熟する。ただし繁殖に参加する雄は9~13歳である。繁殖後、8~10月に島を離れ回遊生活に入る。

 北海道へ回遊してくるものは千島と樺太のトドで、ロシアの推定では約3000頭である。漁業の害獣として羅臼(らうす)、利尻(りしり)、礼文(れぶん)などで駆除されている。肉はミンクキツネの餌(えさ)にされるが、毛皮には下毛(綿毛)がなくきわめて厚いので利用されていない。

[伊藤徹魯]


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改訂新版 世界大百科事典 「とど」の意味・わかりやすい解説

トド (海馬/魹)
Steller's sea lion
northern sea lion
Eumetopias jubatus

鰭脚(ききやく)目アシカ科の哺乳類。アシカ科の仲間では最大。漁業に与える被害が大きいので漁業者からきらわれる存在。カイバともいう。北半球においてアシカ科の動物は,太平洋にのみ分布し,大西洋には分布しない。トドは北海道,サハリン,千島列島,アレウト列島アラスカ半島,北アメリカ太平洋沿岸に分布,カリフォルニアアシカの生息域北側,オットセイの南側に分布する。北海道では繁殖場はないが,全域に出現する。日本海,オホーツク沿岸に雄が,太平洋沿岸には雌が回遊する。オットセイのように7000kmに及ぶ大回遊はしないが,小規模の繁殖回遊をし,5~8月の繁殖期は繁殖場付近で過ごし,秋,冬は南下回遊する。一般にアザラシと異なり海氷を避ける。一夫多妻型で雄が大きい。雄が体長300~325cm,体重1tに達するのに対し,雌は体長240cm,体重270kgでしかない。雄,雌ともに茶褐色の体色をし,あらい毛でおおわれる。オットセイのような柔らかい下毛はほとんどない。雄は首の周囲にあらい毛のたてがみが発達し,額が高く突出している。食性は魚が中心であるが,イカ,タコ,ときにはアザラシの子や海鳥も捕食する。胃の中に石がよくのみこまれているが,その理由はわかっていない。タコとともにのみ込まれるともいわれている。
アシカ
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「とど」の意味・わかりやすい解説

トド
Eumetopias jubatus; Steller sea lion

食肉目鰭脚亜目アシカ科トド属。最大体長は雄約 3.3m,雌約 2.5m。体重は雄約 1t,雌約 273kgに達する。出生直後の幼獣は平均して体長約 1m,体重は 18~22kgである。アシカ科で最も大きい。体色は淡黄褐色で胸部から腹部にかけて濃くなる。雌は一般にやや淡色で,幼獣は黒茶色を呈する。体型は太い紡錘形である。雄は成長すると首にたてがみ状の長い毛が生える。下毛 (綿毛) がない。吻はやや細長く,頭頂は少しくぼみ,耳介は約 5cmに達する。門歯は上顎6本,下顎4本,犬歯は上顎と下顎に各2本,頬歯は上顎と下顎に各 10本である。上顎の後方にある4番目と5番目の頬歯が離れている。繁殖場では 1000頭以上の群れをなすが,海上では 15頭以下の群れで回遊する。キタオットセイに比べ上陸して休息することが多い。繁殖期は晩春から夏にかけてである。成熟した雄は,雌が繁殖場を回遊する前に上陸してなわばりをつくり,そのうちの 10~15頭の雌と交尾する。1産1仔。食性範囲は広く,おもに魚類やスルメイカ類を捕食している。北太平洋の,東はカリフォルニア中部から西はカムチャツカ半島まで,北はベーリング海から南は日本北部までに分布し,海上では沿岸や大陸棚に出現する。絶滅危惧種。

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百科事典マイペディア 「とど」の意味・わかりやすい解説

トド

食肉目アシカ科の哺乳(ほにゅう)類。雄は平均体長2.8m,平均体重566kg。雌は小さく平均体長2.3m,平均体重263kg。夏は淡赤褐色,冬は暗褐色。北太平洋に分布し,冬は北海道まで南下する。夜行性で日中は休息している。スケトウダラなどの魚類を捕食。6月の繁殖期に雄は10〜15頭の雌を伴ってハレムを作る。1腹1子。子は初め母の背に乗せられて海に入り,泳ぎを覚える。準絶滅危惧(環境省第4次レッドリスト)。

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小学館の図鑑NEO[新版]動物 「とど」の解説

トド
学名:Eumetopias jubatus

種名 / トド
科名 / アシカ科
日本にいる動物 / ◎
解説 / 巨大なたくましい体格で、大きくはば広い頭と鼻をしています。
体長 / 最大記録はオス3.3m、メス2.9m
体重 / オス約570kg、メス約260kg、最大1100kg
食物 / 魚、イカ
分布 / カリフォルニア中部からベーリング海、カムチャツカ半島、千島列島

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世界大百科事典(旧版)内のとどの言及

【ボラ(鯔)】より

…出世魚の一つで,稚魚から成魚まで段階別に各地でいろいろな名で呼ばれる。代表的なものはハク,ゲンプク,キララゴ(全長2~3cm),オボコ,オボッコ,イナッコ,スバシリ(3~18cm),イナ(18~30cm),ボラ(30cm以上)で,とくに大きくなったものをトド(〈とどのつまり〉の語源)という。縁起のよい魚として親しまれ,昔は尾頭付きの膳に出されることが多く,とくに,〈お食い初め〉の膳にはとんとん拍子に出世するということで欠かせないものであった。…

【アシカ(海驢∥葦鹿)】より

…人になれやすく,飼育学習によりいろいろな芸を仕込める。 アシカ科には狭義のアシカのほか,オットセイトドオタリアなど7属14種が知られている。アザラシ科に比べては小さい。…

※「とど」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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