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ミサイル ミサイル missile

翻訳|missile

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

ミサイル
ミサイル
missile

一般に飛翔体,弾丸など飛び道具をいうが,現在は誘導弾 (飛翔体) guided missileをいう。また誘導兵器と同様に水中誘導兵器および無誘導のロケットを含む場合もある。推進装置には多くの場合,ロケットエンジンが用いられるが,ジェットエンジンで推進され,飛行機と同様に飛行する有翼ミサイルもある。

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デジタル大辞泉の解説

ミサイル(missile)

通常、軍事目的のため、爆発物を遠距離に放擲(ほうてき)するための飛翔(ひしょう)体。種々の誘導方式があり、使途により地対空・地対地・空対空など、到達距離により大陸間弾道ミサイル中距離弾道ミサイル短距離ミサイルなどに区分される。誘導弾。

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百科事典マイペディアの解説

ミサイル

missileは元来,手またはなんらかの仕掛けで投射されて遠方の目標に打撃を与える兵器または物体をさし,石,矢,弾丸なども含まれるが,今日一般には誘導・無誘導の無人ロケット兵器をいう。
→関連項目軍隊航空宇宙工業巡航ミサイルスカッド潜水艦ターターパーシングミニットマン陸軍

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世界大百科事典 第2版の解説

ミサイル【guided‐missile】

誘導弾ともいう。弾頭を目標の近くに運搬し炸裂(さくれつ)させるため,自分のもつ推進装置で主に空中を飛行するとともにその飛行経路を変更する手段を有する無人飛行体で,目標に向かって外部から誘導されるか,みずからを誘導するものと定義される。英語では〈飛び道具〉を意味するmissileに〈誘導される〉の意味のguidedを付してguided‐missile(略号GM)と表現されており,日本ではこれを誘導ミサイル,または略して単にミサイルと呼んでいる。

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大辞林 第三版の解説

ミサイル【missile】

ロケットあるいはジェット推進による飛翔爆弾。多くは誘導装置により、自動的に目標に向かう。発射地点と目標により地対空・地対地・空対地・空対空などと分類される。誘導弾。

出典|三省堂
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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

ミサイル
みさいる
missile

もともとは飛び道具といった意味であったが、近年はロケットあるいはジェットエンジンのような自動推進装置を備えて高速で飛行する兵器をさすことが多くなった。現在使われているミサイルは、飛行中に進路を修正しながら目標に誘導する装置を利用しており、誘導ミサイルGuided Missile(GM)とよばれることもある。また国によってはミサイルとよばず、ロケット、ロケット兵器、あるいは誘導兵器とよぶこともある。[服部 学]

発達の歴史

1232年に中国で、金(きん)の軍がタタール軍との戦争で使った飛火槍(ひかそう)という兵器が、記録に残っている最初のロケット式兵器であるとされている。これは、槍(やり)の先に火薬をつめ、轟音(ごうおん)とともに火焔(かえん)を噴き出して相手を威嚇する兵器であったらしい。15世紀になって明(みん)代に使われた飛槍(ひそう)とよばれる兵器が、火薬の噴射ガスの反動で槍を遠くに飛ばすもので、これが推進力としてのロケットの軍事利用の最初であるとみなすほうが正しいようである。
 ヨーロッパでは、イギリスのコングリーブがロケット兵器を開発(1804)し、1806年にイギリス海軍がブローニュ港のフランス艦隊を攻撃するのに用いて以来、ヨーロッパの各地の戦争で使われ、インドでも使われている。1840年代にイギリスのヘールが、コングリーブ・ロケットを改良したヘール・ロケットを開発した。アメリカは、メキシコ戦争や南北戦争で多数のヘール・ロケットを使用した。またクリミア戦争では、フランスのロケットがセバストポリ要塞(ようさい)の攻撃に威力を発揮したといわれる。しかし小銃や大砲が発達してくるにつれて、命中精度のよくないこの種の兵器は姿を消していった。
 第一次世界大戦に敗れて、ベルサイユ条約で中口径以上の大砲の開発・所有を禁止されたドイツでは、1929年末から陸軍が大型ロケット兵器の開発を始めた。ペーネミュンデにつくられたロケット開発センターでは、ドルンベルガーの下でフォン・ブラウンが、液体燃料を使ったロケットの開発にあたった。1942年10月に発射実験を行ったA4ロケットは、初めて超音速で320キロメートルを飛行した。このロケットはアルコールを燃料とし、液体酸素を酸化剤として使っていた。これに750キログラムの火薬弾頭をつけたV2号兵器(重量12.5トン、射程350キロメートル)は、1944年9月8日ロンドンに向けて発射されて以来、約2700発がイギリスとオランダに向けて発射された。このうちロンドンに落下したのは517発であったとされている。
 またドイツ空軍は、やはり第二次世界大戦末期に、パルスジェットエンジンをつけた無人飛行機Fi103を開発した。これに900キログラムの爆薬をつけたものを、ヒトラーがV1号兵器と命名した(重量2.2トン、射程280キロメートル)。V2号より先に、1944年6月以降ロンドン攻撃を開始し、1万発以上が発射された。しかしV2号が超音速(マッハ2.5)であったのに比べ、V1号の速度は当時の戦闘機なみであり、途中で撃墜されるものが多かった。
 さらにドイツは第二次世界大戦中に、有線誘導のロケット推進空対空ミサイル、X4や、無線誘導の地対空ミサイル、R1、R3、Hs117などを開発し、一部は西部戦線で使われたが、実戦にはほとんどまにあわなかった。航空機から投下する無線誘導の滑空爆弾Hs293は、1943年8月から実戦に使われたが、これも実質的には空対艦あるいは空対地ミサイルであった。一方、対戦車ロケットは、1942年ごろからバズーカ型のものを各国が大量に使用している。また1941年ごろからソ連は、カチューシャと名づけた多連装ロケット弾を戦場で使用した。
 第二次世界大戦終了後、V2号を開発したペーネミュンデ実験場はソ連軍の占領下に入り、またV2号を完成させたフォン・ブラウンその他の技術者はアメリカに渡った。米ソ両国は大型ロケット開発の競争に力を入れ、今日の各種のミサイル兵器体系が発達した。V1号は、戦後アメリカで開発された無人飛行機型ミサイルのマタドールやスナークなどの元祖となり、さらに近年の巡航ミサイルに発達し、V2号は今日の長距離弾道ミサイルに発達した。
 今日、ミサイルが兵器体系のなかで大きな意味をもつようになったのは、一つは、核兵器の発達に伴い、核弾頭の運搬手段として使われるようになったことと、もう一つは、誘導技術の発達によって、戦術用の精密誘導兵器として実戦に用いられるようになったためである。[服部 学]

推進方式と誘導方式

ミサイルの推進方式には、大別してロケットとジェットエンジンがある。ロケットの場合は、内蔵する燃料と酸化剤とを燃焼させ、燃焼ガス噴射の反動で推進する。弾道ミサイルはこの方式である。初期のミサイルには液体燃料を使ったものが多かったが、しだいに取扱いの簡単な固体燃料が使われるようになってきている。ジェット推進の場合は、空気を吸入しながら燃料を燃焼させて推力を得るので、大気圏内を飛行することになり、大気圏外を飛ぶ弾道ミサイルと比べると速度が遅い。巡航ミサイルはこの方式である。ターボファンジェット、ラムジェット、パルスジェット(ほとんど用いられていない)などの方式がある。
 ミサイルを攻撃目標に誘導する技術にもいろいろの方式がある。ミサイル自体が目標を探知し、進路を修正しながら目標に到達するのをホーミング(自動追尾)方式とよぶ。これにも、目標が出している電波、熱、光、音などをとらえて追跡するパッシブ・ホーミング方式、ミサイル自体から電波、レーザー光線などを発射し、それが目標から反射してくるのを使って追跡するアクティブ・ホーミング方式、ミサイルの発射母機などから発射する電波、レーザー光線などの反射波を利用するセミアクティブ・ホーミング方式、目標の形状をテレビなどで識別して追尾する光ホーミング方式などがある。
 発射母機から、無線、有線、電波やレーザーのビーム、テレビなどで、発射したミサイルの進路の修正を指令して誘導する方式を指令誘導方式とよんでいる。またプログラム誘導方式というのは、ミサイルの発射前に目標までの進路を設定し、飛行中に設定値からのずれを測定して修正しながら飛行する方式で、長距離弾道ミサイルに用いられる。ジャイロと加速度計を用いる慣性誘導、天体や人工衛星を観測してミサイルの位置を確認する天測誘導、陸上の地形、磁場、重力などを測定する地測誘導などがある。さらに誘導方式の開発が進み、1990年代にはGPS(Global Positioning System=全地球測位システム)方式が採用され、人工衛星からの情報できわめて命中精度が高くなった。とくに湾岸戦争でその効果が示された。[服部 学]

核ミサイル

ミサイルは核弾頭の運搬手段として重要な役割をもつようになってきた。核弾頭をつけたミサイルを核ミサイルとよんでいる。核ミサイルは、用途によって戦略用と戦術用に区分されることが多い。その区分は主としてミサイルの射程によるものである。しかし戦略核兵器と戦術核兵器の中間にあるものが戦域核兵器とよばれるようになってきたので、これらの区別はあいまいなものになってきている。
 一般的には、6400キロメートル程度以上の射程をもち、目標に核攻撃を加えることのできる兵器を戦略核兵器とよんでいる。大陸間弾道ミサイルIntercontinental Ballistic Missile(ICBM)、潜水艦発射弾道ミサイルSubmarine Launched Ballistic Missile(SLBM)がこの部類に入る。また長距離爆撃機で運ばれる空中発射巡航ミサイルAir Launched Cruise Missile(ALCM)も戦略核兵器の部類に入る。ICBM、SLBM、長距離爆撃機の三者を戦略核戦力の三本柱とよぶことがある。米ソ間の第一次戦略兵器制限交渉および第二次戦略兵器制限条約(SALT(ソルト))の対象となったのは、これらの核兵器運搬手段の数であった。
 戦略ミサイルよりも射程の短いものは、射程2400ないし6400キロメートル程度のものが中距離弾道ミサイルIntermediate Range Ballistic Missile(IRBM)、射程800ないし2400キロメートル程度のものが準中距離弾道ミサイルMedium Range Ballistic Missile(MRBM)、それ以下は戦術核兵器とされていた。しかし1987年12月のINF(中距離核戦力)全廃条約では、射程1000ないし5500キロメートルのものを中距離ミサイル、500ないし1000キロメートルのものを短距離ミサイルと定義した。これには巡航ミサイルも含まれている。[服部 学]

米ソの戦略ミサイル開発競争

1954年3月、アメリカはビキニ環礁で実用水素爆弾の爆発実験を行い、旧ソ連も1955年11月に本格的な水素爆弾を爆発させた。こうした核弾頭を運ぶ長距離戦略ミサイルの開発が始まり、1957年5月、アメリカは最初のIRBMジュピターの発射に成功した。8月にはソ連がICBMの最初の飛行に成功し、12月にアメリカは最初のICBMアトラスの打上げに成功した。これらの強力なロケットを使って、ソ連は1957年10月に最初の人工衛星スプートニク1号を、アメリカは1958年1月にエクスプローラ1号の打上げに成功した。
 1960年代の初めに、米ソ両国はICBMの配備を始めた。アメリカではアトラスに次いでタイタン、ミニットマン、ピースキーパー(MXミサイル)などが開発された。ソ連ではSS‐6、SS‐7、SS‐8、SS‐9、SS‐11、SS‐13、SS‐17、SS‐18、SS‐19、SS‐24、SS‐25などのICBMが次々と就役した。
 一方、潜水艦にミサイルを搭載する計画も、第二次大戦の末期から始められていた。1954年9月に、アメリカは最初の原子力潜水艦ノーチラス号を完成した。潜水時間と航続距離の長い原子力潜水艦と核ミサイルを結び付けることによって、隠れて移動できるミサイル基地としての原子力潜水艦が、核戦略のなかで重要な役割を占めるようになってきた。核弾頭をつけたレギュラス・ミサイルは、最初に通常型潜水艦5隻に搭載されたが、そのうちのハリバット号は途中で原子力潜水艦に改造され、その後まもなくSLBMポラリス・ミサイルが開発されてこれにかわった。1960年7月、原子力潜水艦ジョージ・ワシントン号が初めて水中からポラリス・ミサイルの発射に成功し、配備を始めた。一方ソ連も、1962年7月にSLBMの水中発射に成功し、1964年ごろからSSN4などのSLBMの配備を始めた。
 SLBMについては、アメリカではポラリスに次いでポセイドン、トライデントなどのミサイルが開発され、現在はトライデント(D‐5)ミサイルが配備されている。旧ソ連ではSS‐N‐5、SS‐N‐6、SS‐N‐7、SS‐N‐8、SS‐N‐17、SS‐N‐18、SS‐N‐20、SS‐N‐23などが開発された。
 現在、米ロ以外でICBMを保有しているのは中国、SLBMを保有しているのはイギリス、フランス、中国である。[服部 学]

命中精度とMIRV化

戦略ミサイルを使用して、都市や産業施設のような広い目標ではなく、たとえば相手のミサイル発射基地のような特定の堅固な目標を攻撃して破壊するには、弾頭の威力を大きくするよりは、命中精度をよくするほうがずっと効果的である。特定の目標を破壊する能力は、弾頭の威力の3分の2乗に比例し、誤差確率半径(目標点を中心として、発射した弾頭の半数が落下する円の半径)の2乗に反比例する。つまり誤差確率半径を半分に縮められれば、弾頭の威力を8倍強力にするのと同じ破壊効果が得られることになる。
 1960年代の後半に、アメリカは戦略弾道ミサイルのMIRV(マーブ)(Multiple Independently targetable Re-entry Vehicle=複数独立目標弾頭、多弾頭誘導弾とも)化の開発を始めた。MIRV化というのは、1基のミサイルに複数の核弾頭を取り付けて発射し、ロケットを切り離して弾道飛行に移ったのち、弾頭を1発ずつ別々の目標に誘導し、しかもその命中精度を非常によくしようとする方式である。MIRV化ミサイルの配備は、1970年のミニットマン型ICBMから始まった。1959年に配備されたアメリカ最初のICBMアトラスの誤差確率半径は約3700メートル、1963年に配備されたタイタン型では900メートルであったが、MIRV化されたミニットマン型の誤差確率半径は120メートルとなった。SLBMもMIRV化された。
 旧ソ連はすこし遅れて1973年ごろから広範にMIRV化ミサイルの開発を始めた。しかし命中精度はアメリカと比べてかなり劣っていた。
 戦略ミサイルのMIRV化は、核戦力を著しく増強したばかりでなく、核戦略にも大きな影響を及ぼした。弾頭数が多く命中精度のよいMIRV化ミサイルならば、少数を発射しただけで相手の多数のミサイル発射サイロを先に破壊してしまうことができる。つまり報復攻撃の心配をせずに先制核攻撃を加えることが技術的に可能となってきた。これは、いわゆる核抑止力論を破綻(はたん)させることになり、核戦争の起こる危険性を大きくしている。MIRV化ミサイルは、大気圏外の弾道飛行中に細かい軌道修正を行うことで命中精度を高めているが、弾頭が大気圏内に再突入してからの大気による航路の偏向は避けられない。これを補正するには、再突入した弾頭自体を操縦する能力が必要になる。これがMaRV(マーブ)(Maneuvering Re-entry Vehicle=進路修正弾頭)方式とよばれる技術である。[服部 学]

ABMとSDI

1960年代の終わりごろから、発射された相手国の戦略ミサイルを、自国に到達する前に迎撃して核爆発によってこれを破壊しようとするミサイル、ABM(Anti-Ballistic Missile=弾道弾迎撃ミサイル)の開発が始まった。しかし米ソ両国は、1972年5月の第一次戦略兵器制限交渉(SALT‐)のなかで、両国のABM体系の配備を2地域(首都とICBM発射基地)に制限するABM制限条約を結んだ。そして1974年7月のABM議定書では、配備を1地域に減らし、最高100基までとした。しかし攻撃ミサイルのMIRV化によってABMの有効性が低下してきたので、アメリカは1975年にABMの配備を廃止した。ソ連はモスクワ周辺にガロッシュとよばれるミサイルによるABM網を配備した。
 1983年3月、アメリカの大統領レーガンは、発射された相手国の戦略ミサイルを、宇宙空間から強力なレーザー光線や高エネルギー粒子線などを使って破壊しようとする新しい兵器体系の開発を命令した。これがSDI(Strategic Defense Initiative=戦略防衛構想)とよばれるようになった。しかし同時に発射された多数の戦略ミサイルを数分のうちに100%確実に破壊できるようなSDI体系を完成させることは、技術的にも不可能であろうといわれていた。また、おとりのミサイルが多数発射されれば、これを見分けることも困難であろう。さらに、超低空を飛行する巡航ミサイルに対しては、この技術は役にたたない。国際政治の面では、SDI兵器の配備はABM制限条約に反するのではないかという点なども問題となっており、核軍縮交渉を複雑なものにした。しかし、1993年クリントン政権になると、SDIは、大気圏外を含む高層でミサイルを迎撃するシステムと大気圏内の低層で迎撃するシステムを組み合わせたTMD(Theater Missile Defense=戦域ミサイル防衛)にとってかわられた。さらに、2001年G・W・ブッシュ政権になると、TMDとNMD(国家ミサイル防衛)を包括した新たな弾道ミサイル防衛(BMD。単にMDともいう)構想が打ち出された。なお、アメリカはこのミサイル防衛を推進するため、2001年12月ABM制限条約から脱退することをロシアに通告、翌年6月正式に脱退した。[服部 学]

巡航ミサイル

巡航ミサイルCruise Missileとは、ジェットエンジンをつけた有翼ミサイルのことで、第二次戦略兵器制限条約(SALT‐)では、「飛行経路の大部分を空気力学的な揚力で飛行する無人自己推進誘導兵器運搬装置」と定義されている。
 第二次世界大戦でドイツ軍が使ったV1号が巡航ミサイルの元祖にあたるが、戦後アメリカは、この型のミサイルとしてマタドール、スナーク、レギュラス、メースAおよびBなどを開発した。旧ソ連もSS‐N‐2、SS‐N‐3などを開発した。その後、長距離戦略ミサイルとしては弾道ミサイルが著しく発達したので、大気圏内を飛び速度の遅い巡航ミサイルは主として短距離戦術ミサイルとして使われてきた。1970年代に入って、アメリカは新しい世代の長距離巡航ミサイルの開発を始めた。空軍は空中発射巡航ミサイルAir Launched Cruise Missile(ALCM)としてボーイング社のAGM86Bを採用し、海軍は水上および水中発射巡航ミサイルSea Launched Cruise Missile(SLCM)としてマクダネル・ダグラス社のトマホークを採用した。トマホークには陸上発射型のGLCM(Ground Launched Cruise Missile)もある。これらの新型巡航ミサイルには、核弾頭用にターボファンエンジンをつけた長射程(2400ないし3000キロメートル)のものと、通常弾頭用にターボジェットエンジンをつけた短射程のものがあるが、外形はほとんど変わらない。
 速度の遅い巡航ミサイルがふたたび重視されるようになってきたのは、推進技術および誘導技術の進歩により、超低空を飛んで命中精度を非常によくすることができるようになったからである。海上では30メートル、陸地では平野部で50メートル、山地でも100メートルという超低空を飛ぶので、レーダーに発見されにくい。また慣性誘導のほかに、地形標高照合方式Terrain Contour Matching system(TERCOM(ターカム))を用い、レーダーで読んだ地形をコンピュータに記憶させた地図と照合しながら飛んでいくので、きわめて命中精度が高くなる。[服部 学]

戦術ミサイル

現在世界の各国は多種多様な戦術ミサイルを保有しているが、日本の自衛隊もアメリカ製および日本製の各種の戦術ミサイルを配備している。戦術ミサイルの多くは通常弾頭をつけたもので、実際の戦場で戦術兵器として用いられている。しかし核弾頭と通常弾頭の両用のものもある。戦術ミサイルは、攻撃する目標によって、対地用、対艦艇用、対潜水艦用、対航空機用、対ミサイル用、対戦車用、対レーダー用などと分類されることがある。これとは別に、装備する場所と攻撃目標のある場所との組合せによって、地対地あるいは艦対艦(SSM)、地対空あるいは艦対空(SAM)、空対地あるいは空対艦(ASM)、艦対潜(SUM)、潜対艦(USM)、潜対潜(UUM)、空対空(AAM)などに区分されることもある。対戦車ミサイルはATMとよばれることがある。
 ベトナム戦争で使われた相手のレーダー源を目標にして攻撃するミサイルはAnti-Radar Missile(ARM)とよばれた。またレーザーやテレビで誘導した爆弾はスマートSmart爆弾ともよばれた。1970年代以降に現れた高精度のミサイルを精密誘導ミサイルPrecision Guided Missile(PGM)とよぶことがある。
 ベトナム戦争では各種のミサイルが実戦に使用された。1965年2月にアメリカは北爆を開始したが、7月以後、ソ連から供与された地対空ミサイルSA‐2で、アメリカ軍機が次々と撃墜されるようになった。アメリカ軍は空対地対レーダーミサイル、シュライクでSA‐2陣地のレーダーを破壊しようとしたが、これはあまり効果がなかった。アメリカが1972年春ごろから使用した誘導式のスマート爆弾は、ミサイルとほとんど同じようなもので、命中精度が高く効果をあげた。1967年6月の第三次中東戦争では、アラブ連合(現エジプト)海軍のミサイル艇から発射されたソ連製艦対艦ミサイル、スティックス3発で、イスラエルの駆逐艦エイラート号が撃沈された。ミサイルが海上で使用され、艦艇を撃沈した最初の例であった。1973年10月に始まった第四次中東戦争は、各種の地対空ミサイル、空対空ミサイル、艦対艦ミサイル、対戦車ミサイルが本格的に使われた戦争であった。アラブ側が装備したソ連製地対空ミサイルのSA6ゲインフルや、対戦車ミサイルのスナッパーやサガーが威力を発揮した。さらに1981年6月には、イスラエル空軍機がイラクの首都バグダード郊外に建設中の原子炉オシラクを空対地ミサイルで攻撃し、これを完全に破壊するという事件も起こっている。1982年のフォークランド紛争では、アルゼンチン空軍機がフランス製対艦ミサイル、エグゾセAM39の1発でイギリスのミサイル駆逐艦シェフィールド号を撃沈した。1981年に始まったイラン・イラク戦争でも、各種のミサイルが使われている。1987年5月、ペルシア湾でイラク軍が誤って発射し、アメリカのフリゲート艦スターク号を大破させたのもエグゾセ・ミサイルであった。湾岸戦争では多数の巡航ミサイルであるアメリカ製のトマホーク(通常弾頭)が発射された。1998年8月、対テロ報復攻撃として、アメリカ軍は75~100発のトマホークをスーダンとアフガニスタンに発射した。さらに同年12月の米英軍によるイラク攻撃、1999年3月からのNATO(ナトー)(北大西洋条約機構)軍によるユーゴスラビア空爆にも多数使用された。[服部 学]
『明地力著『世界兵器発達史』(1976・朝日ソノラマ) ▽国連事務総長報告『核兵器の包括的研究』(1982・連合出版) ▽読売新聞社編『兵器最先端7 ミサイルと核』(1986・読売新聞社) ▽斎藤利生著『武器史概説』(1987・学献社) ▽小都元著『世界のミサイル』(1997・新紀元社) ▽小都元著、デジタルファクト・知識計画・新紀元社編集部編『ミサイル事典――世界のミサイル・リファレンス・ガイド』新版(2000・新紀元社) ▽小都元著『ミサイル防衛の基礎知識――ニュースがわかる:ミサイルの脅威と国際軍事情勢について正しくわかる本』(2002・新紀元社) ▽森本敏著『ミサイル防衛――新しい国際安全保障の構図』(2002・日本国際問題研究所) ▽坂上芳洋著『世界のミサイル防衛』(2003・アリアドネ企画、三修社発売) ▽金田秀昭著『弾道ミサイル防衛入門――新たな核抑止戦略とわが国のBMD』(2003・かや書房) ▽小都元著『最新 ミサイル全書』(2004・新紀元社) ▽T.B.Cochran et al. Nuclear Weapons Databook Volume 1, U.S. Nuclear Forces and Capabilities(1984, Ballinger Publishing Company)』

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