ロケット(英語表記)rocket

翻訳|rocket

精選版 日本国語大辞典 「ロケット」の意味・読み・例文・類語

ロケット

〘名〙 (rocket) 物体を噴射した反動で推進する飛翔体。また、その動力装置であるロケットエンジンをいう。宇宙開発、兵器、気象観測などに利用されている。
万国新聞紙‐八集・慶応三年(1867)一一月上旬「種々の戦争に用ゆる『ロケット』と申す火灰を拵へ候機械も」

ロケット

〘名〙 (locket) 写真や記念の品などを入れて身につけ、装飾ともする金属製の小さい容器。鎖に通して首飾りとするものが多い。
※美しい町(1919)〈佐藤春夫〉画家Eが私に語った話「父から土産に貰った金時計に金のロケットをさげて」

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デジタル大辞泉 「ロケット」の意味・読み・例文・類語

ロケット(locket)

写真などを入れて身につける小型の容器。鎖に通して首から下げることが多い。
[類語]首飾りネックレスペンダントチョーカー

ロケット(rocket)

推進剤を燃焼させ、噴出するガスの反動によって前進する装置。また、それで推進される飛行体。
ロケットサラダ」の略。

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改訂新版 世界大百科事典 「ロケット」の意味・わかりやすい解説

ロケット
rocket

ロケット推進機関あるいはこれを備えた飛翔(ひしよう)体の呼称。ロケット推進機関はロケットエンジンあるいはロケットモーターとも呼ばれる。ロケットは自身が携行する物質を加速放出し,その反動で推進力を得ることを特徴としており,このための携行物質を推進材という。

南宋時代に書かれた《武経総要》という書物に,黒色火薬の組成と〈火薬鞭箭〉なるものの図と説明が記載されており,これをロケットの原形とする説もあるが,爆竹とみるほうが正しいようである。下って明末に著された《武備志》に見られる火箭は,より意図的に反動推進の目的に火薬を用いたものと考えられる。このような火箭の実用は,おそくとも12世紀の初めで,北宋末に金の攻撃を受けた北宋が火箭をもって防御したとの記録がある。13世紀のうちには黒色火薬の製法や反動効果をもつ火箭の技術がモンゴルからアラブを経由し十字軍遠征を通じてヨーロッパへ,あるいはもっと直接的にヨーロッパに浸透していったらしく,イギリス,ドイツ,イタリア,ギリシアオランダポーランドなどにロケットの原形の記録が残されている。ロケットということばは,語源的には糸巻竿を意味する内陸ゲルマン語のrockに小さいを示す語尾etがついたもので形状の類似に由来し,14世紀イタリアでムラトリMuratoriがロチェッタrochettaという形で用いたのが最初とされている。以後18世紀までの間,フランス,オランダ,ドイツなどヨーロッパ各地で徐々に発展を遂げ,とくにフランスは多くの戦争でロケットを用いたが,また多くの国で花火としても利用された。19世紀になるとイギリスのコングリーブWilliam Congreve(1772-1828)の作ったロケット弾がヨーロッパ各地やアメリカでの戦争に用いられ,それなりの威力を発揮したが,その後兵器としてのロケットは大砲の射程がのびるに従い見限られることとなる。

 一応このように固体ロケットは10世紀にわたる歴史をもつが,一方,液体ロケットは実に19世紀もまさに終わらんとするころ,パリに留学していたペルー人ポーレP.A.Pauletが推力100kgfのロケットを実験したのがそもそもの始まりといわれる。いずれにせよ真に近代科学に裏づけされたロケット技術は,20世紀において3人の先覚者,ロシアのK.E.チオルコフスキー,アメリカのR.ゴダード,そしてドイツのH.オーベルトによって築き上げられたのである。彼らはロケット推進が本来的にもっとも宇宙飛行の手段としてふさわしいとの認識の下に,理論,実験の両面から,技術の展望を与えた。歴史的には長い間大気中の飛行に応用されてきたが,ほとんど物質の存在しない宇宙空間でこそ反動物質を携行するロケットが真価を発揮する。3人の先覚者たちはほとんど独立にこの分野での先駆的仕事を成し遂げ,地球引力からの脱出,人工衛星,惑星間飛行の可能性を示した。このための多段ロケットの発想も彼らに負うところであるし,さらに電気推進ロケット(電気ロケット)の原理もゴダードの日記(1906-12)やオーベルトの著書(1929)に記述されている。彼らがまた,液体水素-液体酸素の組合せを含む液体ロケットの将来性を予見したことも特記すべきである。しかし,近代ロケットの目覚ましい成果がナチス・ドイツの秘密兵器V2号として再び武器の姿で実現したのは歴史の皮肉である。もっとも近代的固体ロケットの発展はむしろ戦後の研究に負うところが大きい。

 第2次世界大戦後は米ソを中心に宇宙探査用のロケット開発が手掛けられ,まず1957年にソ連(現ロシア)が第1号人工衛星スプートニク1号を軌道にのせて宇宙時代の幕を開いた。また69年にアメリカが成し遂げたアポロ11号による人類初の月への有人着陸計画の成功は,人類史上の快挙として特記さるべきである。81年4月には新しい宇宙輸送手段として期待されるアメリカの有人再使用型ロケットスペースシャトルが初飛行に成功し,本格的宇宙利用の時代にさらに一歩を進めた。その後アメリカ,ソ連以外にもESA(イーザ)(ヨーロッパ宇宙局),インド,中国,それに日本が自力開発のロケットで衛星打上げを行った。

 日本においては第2次大戦中固体ロケットの特攻機桜花,それに迎撃機としての液体ロケット機秋水が試作されたのが,一応技術史に残る成果である。宇宙空間への輸送手段としてのロケット研究は,1955年のペンシルロケット実験に始まる東京大学のグループの活動によってその基盤が築かれた。このグループは国際地球観測年のための観測ロケット研究から固体ロケット技術を発展させ,70年には日本初の人工衛星〈おおすみ〉を打ち上げ,日本は米ソ仏に次ぎ世界第4番目の衛星打上げ国となった。この固体ロケットはその後も性能向上がはかられ,衛星打上げを含む科学観測に活躍している。一方,1967年には宇宙開発事業団が設立され,同年の宇宙開発に関する日米交換公文に基づく技術導入を軸とした液体ロケットNシリーズの開発が進められて,これによる実用衛星の打上げが行われてきており,さらに現在は液体水素-液体酸素を用いるHシリーズの開発が自主技術により進められている。
宇宙開発 →ミサイル

〈力は運動量の時間変化率に等しい〉というニュートン力学の基本法則に従い,推進力と噴射速度の関係を説明しよう。ロケットは真空中の自由空間を飛翔しているとする。噴射された質量をも含めて考えれば,外から加わる力はないので,全体の運動量の総和は一定である。したがって,ロケット本体の運動量が推力で変わったぶんだけ,噴射された質量の逆向きの運動量が増すことになる。噴射は一方向にロケットと相対的にCという速度をもってなされるとすれば,ロケットと同じ速さで運動する慣性系からみれば,噴射される運動量は単位時間当り,

 (推進材消費率)×C

だけ増加するので,ちょうどこのぶんだけ噴射方向と逆方向にロケットの運動量が変化する。言いかえればこの大きさの推力が得られるのである。

 ロケット推進は推進材を加速するのにエネルギーを必要とするから,一般に図1に示したような機能要素を備えている。すなわち,一次エネルギー源も運動量の担い手としての推進材も,ともに加速に適した形態に変換や変性されるのがふつうである。

 ロケットは基本特性の違いから,大きく比推力型と比出力型とに分類される。比推力型ロケットの代表例は,化学燃料を用いるふつうのロケットで,化学ロケットの名で呼ばれているものである。この種のロケットは,推進材単位質量当りに割り当てられるエネルギー量に限界があるという特質を有し,これが噴射速度あるいは比推力(推力を単位時間に消費される推進材の重量で割ったもの)に上限をもたらすという事情で性能が支配される。たとえば化学ロケットでは推進材そのもののもつ化学エネルギー,すなわち原子,分子間の結合エネルギーが加速に使われるので,当然この特質をもつ。これに対して比出力型ロケットを代表するのが電気推進である。電気推進では図1の機能がかなり明確に分離されていて,エネルギー源は推進材とは関係なく太陽光とか原子炉などから得ている。このため,エネルギーの総量は実用上際限がないとみなしてよいが,反面,単位時間当りに利用できる量,すなわち出力に限界がある。たとえば太陽光をエネルギー源とするときには,光-電気変換部の質量は出力とともに増大する。そこでエネルギー供給部単位質量当りの出力,すなわち比出力が比推力に代わって意義をもつことになる。この型では当然推進材消費率を抑えれば抑えるほど,この単位質量に与えうる速度を大きくできるので,比推力が大きくなって有利である。言いかえれば時間や加速度そのものについての制限が許す限り,低推力で用いるほうが望ましいのである。そこでこの型を別名低推力型ロケットともいう。

 ここでさらにロケット推進の原理に沿って考察を進めよう。いま推進材をきわめてわずかの質量dmだけCの速度で噴射すれば,質量mのロケット本体は微小速度dvだけ増速するものとする。全体としての運動量は一定に保たれるから,

 mdvCdm=0

の関係が成り立つ。比推力型ロケットではCは一定とみなせるから,dv=-Cdm/mを積分した関係として,質量比λ(ロケットの各段につき,推進材の使用前後の質量をmimfとして,λ=mi/mfで定義される)を用い,

 ⊿VClogeλ

というチオルコフスキーの関係式が得られる。この場合,推進材を使い切ることで,ロケットの速度は質量比の自然対数に噴射速度を乗じたぶんだけ増速される。一般には推進材の噴射が一方向に一定速度でなされるというわけではないので,このCは有効排出速度あるいは比推力に重力加速度を乗じたものとして解釈されるべきである。この増速分⊿Vは,ロケットの構成がきまれば定まる量であり,ロケットの能力を示す意味で特性速度と呼ばれる。一方,現実のロケットはさまざまの外力の下で飛翔するから,それらによる減速分を補う増速能力をもたせる必要があるが,軌道を選ぶという観点からは,それらを含めてロケットに要求される速度増分⊿Vを最小にすることが望ましい。チオルコフスキーの式はCが一定であれば比推力型でも比出力型でも成り立つが,軌道を選ぶという観点からは,Cを自由に選択できる比出力型に対してこの⊿Vはほとんど意味がなくなる。この場合は単位時間当りの噴射に要するエネルギーが一定という関係から,⊿Vに代わって,推力による加速度の2乗を時間で積分した量が意味をもつようになる。

 さて質量比を大きくすることには,実際上構造効率が有限な値をとることからおのずと限界があり,したがって⊿Vを大きくとるのにも限度があることになる。この限界を克服するには,推進材の消費に伴って不要となる推進材容器のような構造物を逐次切り捨てることによって,等価的に質量比を向上することが考えられる。ロケットを多段(多段ロケット)として推進材を使い切った段を次々と捨ててやることは,これと同じ効果をもたらし,各段での増速分を加え合わせることで,1段では実現できない大きな速度までの加速が達成できる。ふつう,ロケットは1段当りほぼ排出速度程度,すなわち,2km/sから4km/sの程度の⊿Vが得られるので,9km/s以上の⊿Vを必要とする人工衛星打上げには,2ないし3段ロケットが使われている。

比推力型としては化学ロケットのほか,原子力ロケット電熱ロケット,また比出力型としては静電加速型ロケット,電磁加速型ロケットが実用の域に達している。レーザー推進,核融合ロケット,光子ロケットなどはまだ概念段階である。以下では化学ロケットの代表として固体ロケット,液体ロケットについてやや立ち入った説明を加える。なお,酸化剤か燃料のいずれかを固体とし,他方を液体とするハイブリッドロケットも飛翔実績はあるが,実用例は乏しい。

各論を述べる前に,化学ロケットにおいて重要な役割を果たすノズルで,どのように推力が発生するかを見てみよう。まず内部を流れる燃焼ガスの分子の運動が,ノズルを流れるに従って変化するようすを図2に示す。ノズルの最狭部をスロートというが,ここまでの流れは音速より遅い流れであり,上流はもちろん横の壁からの影響も直ちに分子の衝突を通じてその断面全体に伝わるので,流れを狭めることであたかも絞り出される形で流速を高めることができる。しかし,流れが音速になると,分子の熱運動の速度がほぼ音速に等しくなるため,下流の影響が上流に伝わらなくなる。このため壁を絞るとここへ次から次へと分子が衝突して行き場をふさぎ,流れを減速してしまう。逆に流路を広げれば流れが膨張し,加速していく。スロート部で流れが音速になるようにし,これより下流では分子の運動方向がそろうように,末広がりの壁で膨張してくる分子を反射して,ガスを超音速にしているのである。

 ところで,推力は,結局はロケットの壁面への圧力という形で発生する。図3は壁面の圧力分布を直観的に示したもので,矢印の長さが圧力の大きさを表している。ロケットが真空中を飛ぶとすれば,外側は圧力が0と考えてよい。また図3から明らかなように,スロートより前方では軸方向以外の圧力はつりあって,推力には寄与せず,推力となるのは,スロートの面積を前方に投影した部分に働く圧力である。このほかスロートより下流部分の壁に働く圧力も,前向きの合力をもつため推力に寄与する。なお,スロートより上流側についても,流れがあるため前端の圧力より下がるので,前向きの合力として若干の推力を発生する。全推力が燃焼室圧力とスロート面積との積の何倍になるかという数値は,ノズルの性能を表す意味をもち,これを推力係数という。推力係数は1.4~1.8くらいの値である。

固体の推薬を用いるロケットを固体ロケットといい,そのロケットエンジンは図4に見られるように,燃焼室,推薬,ノズル,点火器,断熱材などよりなる。推薬のかたまりをグレインという。推薬は,露出している面に点火すると面が平行移動する形で一定の速さで燃焼が進行する。図4に示したエンジンではグレインは内面から外に向かって燃えるように作られており,中心部が空洞になっている。燃焼した高温ガスはこの空洞を通りノズルより噴射される。燃焼中の推薬内部はほとんど温度上昇がないから,このような内面燃焼型では,燃焼室はごく燃焼の末期だけ高温ガスからの熱を遮へいすればすみ,高張力材料を用いた軽量化が容易である。このため,ほとんどの実用ロケットエンジン設計では,基本的にこの型を採用している。固体ロケットエンジンは推薬の燃焼特性から,初期の燃焼面形状が時間と推力の関係をきめてしまう。図4に示したグレインの開孔形状は,燃焼中ほぼ一定の推力が出せるように設計されている。固体ロケットエンジンのノズル内面には多くの場合断熱材として耐熱性のFRP(強化プラスチック)がはられている。このFRPは表面から炭化し徐々に損耗していくが,内部にはほとんど熱を伝えないので,十分断熱の目的が達せられる。この方式の断熱法をアブレーション断熱法という。もっとも,寸法変化をきらうスロート部にはグラファイトを用いることが多い。

 固体ロケットエンジンの推力方向制御(TVC。thrust vector controlの略)の代表的方式には2種類のものがある。一つはノズルの開口部側壁から内側に向けて液体を噴射し,内部を流れるガスの方向を変える方法,もう一つはより直接的にノズル自体を振り動かす方法である。

 固体ロケットはふつう図4に示すように前端部に点火器をおき,これから放出される火炎で点火される。点火器の内部は点火用の火薬が装てんされ,微細な電熱線に通電することで最初の熱源が作られ,しだいに大きな火炎が形成されるようなしくみとなっている。

液体ロケットでは液体の推薬(燃料と酸化剤)が用いられる。この推薬を燃焼室に送り込む方式には,加圧供給式とターボポンプ供給式がある。前者ではタンク圧力を燃焼室圧力よりも高く保ち,直接酸化剤と燃料を燃焼室に噴出し,ここで混合燃焼させる。構造が単純なので常温推薬を用いた小~中型の液体ロケットに適している。

 図5は大型ロケットでもっともふつうにみられるターボポンプ供給システムである。推薬はポンプで燃焼室に圧送されるので,タンク自体はほとんど加圧する必要がなく,そのため機体をきわめて軽く作ることができる。多くの場合,推薬の一部をガス発生器で燃焼させ,その発生ガスでタービンを回転させて得られる動力でポンプを駆動する。ポンプを出た後の推薬は燃焼室内に噴射されるが,ふつう,燃料はその間二重壁で作られた燃焼室の器壁の間を通ってこれを冷却し,長秒時の運転に対しても適度な壁温が保てるように設計されている。この方式の冷却法を再生冷却法といい,エネルギーの損失がほとんどないのも長所である。液体ロケットエンジンはふつうジンバル(互いに直交する二つの回転軸をもつ台)上にすえつけられ,全体を油圧で動かして推力方向を制御する。

 液体ロケットの起動や運転は固体ロケットより複雑で,しかも方式の違いによる差異も著しい。図5に示すような典型例では,ポンプ出口圧力が上がらないとガス発生器に推薬が送り込まれないことから,まずポンプの軸を強制的に外部から駆動する必要があり,このための補助的ガス発生器などをタービンスピナーという。供給系起動後はメーン弁を開き,燃焼室に推薬を導くが,これにわずかに先立って点火器に点火し噴射後直ちに燃焼が開始されるようなシーケンスが組まれる。運転中はタンク内の推薬が減ったぶんの空間を所定の圧力に保つために,ここに置換用のガスを導入することも必要である。また燃料と酸化剤をちょうどうまく使い切るためのくふうもなされねばならず,さらに飛翔時においては液面の揺動,惰性飛行時の気液混合など,注意を払うべき点が多い。
ロケット推進剤

飛翔体としては必ずしも固体ロケットと液体ロケットに画然と区別されるわけではなく,両者を組み合わせた多段構成も例が多い。固体ロケット,液体ロケットの特徴をあげれば,固体ロケットは,(1)構造,取扱いが簡単,(2)推薬の密度が高い,(3)開発費が少ない,(4)大推力を出しやすいという長所があり,とくに(4)の長所を生かして打上げ時加速度を大きくとれるのは飛翔性能上の利点となる。一方,液体ロケットは,(1)比推力の大きい推薬が得やすい,(2)推力の大きさ制御が容易である,(3)推薬の価格が安い,(4)大型の機体を軽く作れる,などが長所としてあげられる。一般に液体ロケットは,エンジン開発に多額の費用と年月を要し,高価でもあるので,上記(3)(4)の長所を生かし,推力のわりに多量の推薬を搭載する。このため打上げ時の加速度は相当に低い。

 固体,液体ロケットともに段間の分離機構や開頭機構など火工品で作動する構造要素を備えている。搭載される機器としては,観測や実利用を目的としたいわゆるミッション機器のほかに,飛翔のために必要なテレメーター送信機,レーダートランスポンダー,タイマー,点火用機器,飛翔状態監視用の計測器(加速度計,振動計,温度計,圧力計など),電源,誘導制御に必要なジャイロなどの慣性機器,計算機などが代表的である。

 ロケットの打上げのためには,打上げ地点が人家から離れていることに加え,発射後の安全も考慮して発射場を選定し,必要な施設を整備する必要がある。このような支援施設としては発射台,整備塔,ロケット組立室,推進材供給設備,発射管制室,テレメーター,コマンド,レーダー地上局,光学観測所などがあげられる。テレメーター地上局では飛翔中のロケットから電波にのせて変調して送られてくる飛翔データや観測データを受信し,復調,記録する。レーダー地上局ではロケットの軌道を追尾表示する。必要に応じコマンド(指令)電波が地上よりロケットに向けて送信され,飛翔中の誘導や保安上の処置を行う。

 小型の観測ロケットでは,単に空気力学的に風見安定で飛翔方向に姿勢を保ち,ほぼ予定の軌道を飛翔させるが,衛星打上げなど軌道精度を要するものでは姿勢制御装置により,打上げ後刻々にあらかじめきめられた基準姿勢をとるようになっている。しかし,多くの誤差要因や外乱のため,実際の飛翔では,予定した経路からの若干のずれは避けられない。このためより精度を改善する目的で,飛翔中の軌道実測値に基づき,この基準姿勢を修正したり,推力停止時期あるいは点火時期を変更したりする。これらの修正機能を誘導という。この実測と修正量の計算を主として地上のレーダーとコンピューターで行い,電波指令を通じて実行させる方式を電波誘導方式,機上の加速度計やジャイロとコンピューターによりすべて機上において実行してしまうのを慣性誘導方式と呼んでいる。

 なお,ロケット打上げ時の全質量の,最終段搭載機器質量に対する倍率をグロースファクターといい,低高度に人工衛星を打ち上げる場合,固体ロケットで約100,液体ロケットで150~200程度の値となる。
ロケット発射場
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ロケット」の意味・わかりやすい解説

ロケット
rocket

噴流を後方に押出す力の反作用によって推進する飛行体で,宇宙開発の基本的な道具である。第2次世界大戦中に,ドイツで近代的な液体燃料ロケットV-2号が発明され,戦後,アメリカとソ連はこれをもとにして次々と大型のロケットを開発した。化学ロケットと非化学ロケットに大別されるが,通常は化学ロケットを意味する。化学ロケットは,推進剤の消費量は多いが,推力対装置重量比が著しく大きい特徴をもち,非化学ロケットは推力対装置重量比は非常に小さいが推進剤の消費量が非常に少くてすむ特徴をもつ。したがって,宇宙船や人工衛星などの打上げやミサイルのように,地球の重力による損失を極力減らすために急速な加速を必要とする場合は化学ロケットが適しており,惑星間航行のように長期間の航行には低推力ではあるが比推力の大きな非化学ロケットが望ましい。非化学ロケットでは,原子力ロケット電気ロケットイオンロケットプラズマロケット光子ロケットなどの開発が進められている。

ロケット
locket

胸飾りの一種。金属性の容器に形見,毛髪,写真,護符などを入れ,通常鎖やリボンに通して首に掛け,胸もとに垂らす。 18世紀には髪飾り,19世紀初頭には腕輪としても流行した。

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デジタル大辞泉プラス 「ロケット」の解説

ロケット

日本の客船。鹿児島県の鹿児島港から種子島、屋久島を結ぶ。

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