日本大百科全書(ニッポニカ) 「四天王寺(三重県)」の意味・わかりやすい解説
四天王寺(三重県)
してんのうじ
三重県津市栄町にある曹洞(そうとう)宗の寺。塔世山(とうせざん)と号する。本尊は釈迦如来(しゃかにょらい)。寺伝では聖徳太子の創建という。境内および付近からは、奈良時代の古瓦(こがわら)、鍍金押出仏(ときんおしだしぶつ)を出土している。もと薬師堂があり、薬師如来坐像(ざぞう)を中尊とする平安末期作の仏像数体を蔵したが、1945年(昭和20)に戦災で焼失。薬師如来坐像(国重要文化財)のみが残った。この像の胎内文書として、1062年(康平5)の民部田所勘注状(みんぶたどころかんちゅうじょう)があり、そこに四天王寺の名がみえる。『五鈴(ごれい)遺響』には、1147年(久安3)に加藤景道(かげみち)が寺を再興し、悪七兵衛加藤景清(かげきよ)が修復したとある。室町時代に僧永龍(えいりゅう)が曹洞宗寺院として再興。江戸時代には津藩主藤堂(とうどう)氏により寺領100石を認められ、63か寺の末寺を有した。
[水谷 類]