泰平寺跡(読み)たいへいじあと

日本歴史地名大系 「泰平寺跡」の解説

泰平寺跡
たいへいじあと

[現在地名]川内市大小路町

外原ほかはらにあった。医王山正智院と号し、真言宗。本尊は薬師如来。寺域は薩摩国分寺跡の真南六町の位置にある。元明天皇の勅願所として和銅元年(七〇八)建立と伝える(寛正四年六月一九日「泰平寺幹縁疏」旧記雑録)。建保二年(一二一四)の薩摩国天満宮・国分二寺損色注文(国分文書)の列記部分の最後に鐘楼と四方を築垣によって囲まれた御霊社がみえる。この二宇の建物は、この注文を具書とする元亨元年(一三二一)七月の薩摩国天満宮・国分寺所司神官等申状(同文書)が泰平寺本堂に言及しており、また弘安七年(一二八四)一一月の天満宮・国分寺恒例神事次第(同文書)に毎年二月一六日に行われる泰平寺の御霊会の記載がみえることからすると、泰平寺の施設である可能性もある。暦応元年(一三三八)一〇月一四日、一国一基の塔婆(利生塔)建立の院宣が泰平寺長老に宛てられ(「足利直義御教書」旧記雑録)、翌二年八月一八日仏舎利二粒がこの塔婆に寄進された(「足利直義寄進状」同書)


太平寺跡
たいへいじあと

[現在地名]高鍋町南高鍋 太平寺

宮田みやだ川左岸の沖積地西端から洪積台地に移る中腹にある。地元では「てへじ」とよぶ。墓地のみが残り、寺院は墓地のやや北側下方にあったが、現在は民家が建っている。墓地は土持墓地のある所として知られている。養国山と号し、曹洞宗。本尊阿弥陀如来。養老三年(七一九)の建立、中興開山は無外円照。貞享三年(一六八六)高鍋藩寺社帳に載る過去帳によれば、土持親綱(田部四代)が寺領を寄付している。天正五年(一五七七)財部たからべ一帯を領有していた伊東氏は島津氏との合戦に敗北した。豊後に逃れた伊東氏は大友氏を頼りに日向奪還を目指すこととなる。


太平寺跡
たいへいじあと

[現在地名]玉名市石貫 大平寺

つつヶ岳山塊の一つ観音かんのん岳の東麓の畠地に比定され、その北のはずれに毘沙門堂がある。泰平寺とも記した。「一統志」によると山号は象王山、禅宗、開基は浄祐、応永四年(一三九七)菊池武照が建立し敷地・免田を寄進したという。「国誌」は曹洞宗広福こうふく寺末とし、建永二年(一二〇七)菊池氏建立の比丘尼寺とする。

「国誌」説は筒嶽覚俊に大平野寺院を石貫いしぬき山内に建立することを命じた建永二年九月九日の預所代藤原某下文、およびそれを受けた承元二年(一二〇八)三月九日の公文所下文が根拠と思われる(ともに広福寺文書)


太平寺跡
たいへいじあと

[現在地名]伊吹町太平寺

伊吹山の西斜面、標高約四〇〇メートルにあった寺院。現存しない。太平護国寺ともいい、沙門三修が開基したと伝える伊吹山護国寺から分立した四護国寺の一つ。徳治三年(一三〇八)四月一〇日の伊福貴山弥高太平両寺衆僧和与状(大原観音寺文書)によると、太平寺と弥高やたか寺とが本末の争いを始め、四護国寺が興行してきた一切経会や伊福貴いぶき(現伊夫岐神社)三宮さんのみや両社(現伊吹町)祭礼などが執行不能になったが、両社の神主が仲介し、以後本末を争わないこと、伊福貴社の三月一六日一切経会所作人は弥高寺四人・太平寺三人・長尾ながお寺三人、観音寺(現滋賀県山東町)三人が勤めることなど、七ヵ条を取決めて和解している。


太平寺跡
たいへいじあと

[現在地名]鎌倉市西御門一丁目

来迎らいこう寺の北側辺りに位置した。禅宗、平安山と号した。鎌倉尼五山第一位。開山は妙法尼。源頼朝が池禅尼の報恩のために建立したという伝説もあるが、開創時期は大休正念が仏殿供養を行った弘安六年(一二八三)頃と考えられる(念大休禅師語録)中興は関東公方足利基氏の室清渓尼、以後持氏の娘昌泰道安、成氏の娘昌全義天が住持し、足利氏との関係が続いた。

「殿中以下年中行事」によると、毎年一月一六日、関東公方が当寺長老に対し茶の供応を催し、二月には焼香のため当寺に参詣する。小田原衆所領役帳に泰平寺殿「八拾貫文 三浦池子、四拾貫文 同長江」とある。


太平寺跡
たいへいじあと

[現在地名]柏原市太平寺二丁目

跡地は智識ちしき寺跡と同一場所と考えられているが確実なことはわからない。「聖徳太子伝私記」に、太子建立の四六ヵ寺の一として「太平寺同国、推古天王治天平立之」とあり、「拾芥抄」には智識寺と同一寺院として記されている。両寺の関係は明らかでないが、智識寺の法灯を継ぐと伝える当地の観音寺の縁起によれば後鳥羽院のとき両寺合体したと伝える。太平寺はその後、室町期の南都大乗院門跡経覚の著した「経覚私要鈔」にみえる(嘉吉三年四月一〇日条ほか、文明三年閏八月一五日条まで)

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

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