小倉(アズキ)(読み)おぐら

日本大百科全書(ニッポニカ) 「小倉(アズキ)」の意味・わかりやすい解説

小倉(アズキ)
おぐら

アズキを用いた料理または菓子。アズキを煮た際、その粒が紅葉(もみじ)に縁のある鹿(しか)の背の紋様に似ていることから、「小倉山峯(みね)のもみぢば心あらば今ひとたびのみゆきまたなむ」(藤原忠平)の歌にちなみ、粒餡(つぶあん)を小倉とよぶといわれている。また小倉百人一首にちなみ、食品を色紙形または短冊形に形成し、小倉といっているものもある。

 アズキはデンプン質の多いもの、甘いものによくあうので、その特徴に沿って調理するものが多い。「小倉煮」は、アズキとカボチャハスサツマイモなどと煮合わせたもので、石川県、山形県の郷土料理「小倉かぼちゃ」はその一つである。「小倉たい」は、小ダイの腹や中骨を抜き出し、中にアズキとみそ少々を加えたものを詰め、竹の皮に包んで蒸したもの。「小倉田楽(でんがく)」は、豆腐を用いず、また田楽の一つの条件であるみそも使わないが、これは色紙の形態から田楽とつけられたものといえる。油揚げを食べよい角形に切り、その上に煮たアズキを散らし、串(くし)に刺し、生(き)じょうゆのつけ焼きにして、ユズを加えたおろしだいこんをかけて用いる。また油揚げをこしょう入りのしょうゆでつけ焼きにして、煮小豆(あずき)を加える作り方もあり、寺鱒(てらます)ともいう。「小倉豆腐」は、豆腐の水けを軽く絞って、焼きのりをもみ、葛粉(くずこ)少々を加え、まな板の上で四角形にし、適宜の大きさの色紙か短冊形にしてさっとゆで、椀種(わんだね)などにする。これにはアズキは用いない。和菓子の「小倉野」は求肥(ぎゅうひ)をアズキの漉し餡(こしあん)で包み、周囲に大納言(だいなごん)アズキの蜜煮(みつだき)をはめ込む。「鹿の子(かのこ)」という菓子に似ているが、求肥の入っているのが異なる。

多田鉄之助

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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