巴(模様)(読み)ともえ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「巴(模様)」の意味・わかりやすい解説

巴(模様)
ともえ

鞆絵(ともえ)とも書く。丸い頭にC字形の尾をつけた幾何学模様。元来渦巻から展開した模様と思われる。象形文字の蛇がしだいに変化してできた形という説もある。わが国ではこれを鞆(弓を射るとき用いる具)の形に見立て、鞆絵、巴とよんでいる。これを三つ組み合わせ丸紋風に構成したものが「三つ巴文」であるが、巴にはこのほか、一つ巴から九つまでの巴があり、さらに、これに剣や雲などを添えて、きわめて多種な模様、紋章を生み出している。これは中国、朝鮮はもとより、中央アジア、スキタイ、ギリシアなど広い地域に分布する模様である。わが国では弥生(やよい)時代にすでにこの形をとる青銅製の飾り金具があるが、模様として流行するのは平安時代からで、国宝・阿弥陀聖衆来迎図(あみだしょうじゅらいごうず)(和歌山、有志八幡講十八箇院(ゆうしはちまんこうじゅうはっかいん))の大太鼓(だだいこ)や、国宝・平家納経(厳島(いつくしま)神社)の見返しにこれが描かれている。鎌倉時代以後はおもに武家の間で、これを家紋とするものが多く現れるようになった。

村元雄]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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