市川左団次(2世)(読み)いちかわさだんじ[にせい]

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「市川左団次(2世)」の意味・わかりやすい解説

市川左団次(2世)
いちかわさだんじ[にせい]

[生]1880
[没]1940.2.23.
歌舞伎俳優。屋号高島屋。1世市川左団次の長男。本名高橋栄次郎。音声にすぐれ,線の太い独特の芸格がある。常に演劇革新の意志をもち続け,1909年には小山内薫とともに自由劇場を創設して新劇運動推進。以後岡本綺堂,真山青果などの作品を上演し,新歌舞伎に新生面を開くと同時に,歌舞伎十八番『毛抜』『鳴神』など古劇も復活した。

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世界大百科事典(旧版)内の市川左団次(2世)の言及

【岡本綺堂】より

…処女作《紫宸殿》(1896)の後,1902年1月岡鬼太郎と合作の《金鯱噂高浪(こがねのしやちうわさのたかなみ)》が歌舞伎座に上演された。その後文士劇若葉会に自作を上演したが,08年9月2世市川左団次に《維新前後》を書き,11年5月の《修禅寺物語》の好評によって,両者の提携になる〈新歌舞伎〉の路線が定着した。13年以後作家活動に専念,左団次主演の多くの名脚本とともに,14編の新聞小説があり,16年からは《半七捕物帳》を起稿した。…

【歌舞伎】より

…こうして生まれたのが〈新歌舞伎〉と呼ぶ一連の作品である。大正期になり,外遊から帰った2世市川左団次は,新しい演劇創造の熱意に燃え,小山内薫,岡本綺堂,岡鬼太郎,山崎紫紅,永井荷風,池田大伍という文学者たちをブレーンとし,毎月1作の新作を上演しつづけた。とくに岡本綺堂との提携で生み出した《鳥辺山心中》《修禅寺物語》などは名作で,新歌舞伎の中でも古典的作品となった。…

【自由劇場】より

…現実の人生と舞台上の虚構の人生とを混同する行過ぎもあったが,世紀末の大劇場で当たっていたスター中心のだまし絵的なウェルメード・プレーの虚偽と誇張を暴露して,現代劇への道を開いた。1894年にはアントアーヌの手をはなれ,96年には経営難で解散したが,演出家リュニェ・ポーや名優F.ジェミエもここから巣立ち,ベルリンの〈自由舞台〉や市川左団次と小山内薫の〈自由劇場〉など世界的な影響を残した。【安堂 信也】
[ブラームの自由舞台Freie Bühne]
 1889年にパリの自由劇場に倣ってベルリンに設立された協会で,検閲で上演できぬ戯曲を会員だけに見せることを主たるねらいとしていた。…

【修禅寺物語】より

…1911年5月,東京明治座初演。配役は伊豆の夜叉王を2世市川左団次,姉娘かつらを市川寿美蔵(のちの3世寿海),妹娘かへでを市川莚若(のちの3世市川松蔦),源頼家を15世市村羽左衛門ほか。作者が伊豆の修善寺温泉に源頼家の面なるものがあると聞き,作劇の動機とした。…

【新歌舞伎】より

…これらの作品の特徴は,明治の団菊左や黙阿弥らが辛酸をなめつつ歌舞伎を変革改良しようとした方向ではなく,近代的思想もしくは人間像を歌舞伎の伝統的劇術を借りて表現しようとしたもので,その傾向は現在まで続いている。 俳優では2世市川左団次が注目される。父の死後明治座を背負って苦闘した左団次は,新作に活路を求め,08年山崎紫紅の《歌舞伎物語》や,それに次いでの《真田幸村》などの成功で自信を強め,さらに綺堂との仕事,とりわけ11年の《修禅寺物語》で新作の位置を決定づけた。…

【新劇】より

…逍遥はシェークスピア劇の移植と歌舞伎の改革を目ざし,また西欧近代を呼吸して帰国した弟子の島村抱月は,イプセンの《人形の家》など,逍遥以上に西欧近代劇の移入に熱心であった。 一方,歌舞伎俳優として初の渡欧体験を持ち,しかし帰国後の革新興行には失敗した2代目市川左団次と,1906年に〈新派〉を失望裡に離れた小山内薫は,共同して09年に自由劇場を創設,試演活動を開始した。これは〈日本の劇壇に脚本・演技の両面で真の(西洋近代劇の)翻訳時代を興す〉意図で行われ,以後14年にかけて意欲的な活動を展開した。…

【鳥辺山心中】より

…1915年9月東京本郷座初演。配役は菊地半九郎を2世市川左団次,遊女お染を3世市川松蔦,坂田源三郎を市川寿美蔵(のちの3世寿海)。地唄《鳥辺山》からの着想による。…

【雷神不動北山桜】より

…うち三段目の《毛抜》,四段目の《鳴神》,五段目大切《不動》はのち分離独立して,7世市川団十郎により歌舞伎十八番に制定された。以後上演は絶えていたが,2世市川左団次が岡鬼太郎の脚色を得て,《毛抜》を1909年9月,《鳴神》を10年5月にそれぞれ復活上演した。また《不動》は脚本が伝わらなかったが,12年3月,山崎紫紅が補綴して,やはり2世左団次が復活した。…

【番町皿屋敷】より

…1916年2月東京本郷座初演。配役は青山播磨を2世市川左団次,腰元お菊を2世市川松蔦,柴田十太夫を市川左升,放駒四郎兵衛を6世市川寿美蔵(のちの3世寿海),権次を市川荒次郎。古来からの皿屋敷伝説をふまえながらも,お菊の亡霊を出さず,近代人にも共感される恋の悲劇として作られ,盛行する。…

※「市川左団次(2世)」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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