フット・イン・ザ・ドア法と逆のプロセスを採用しているのが,ドア・イン・ザ・フェイス法door-in-the-face techniqueである。すなわち,最初に受け手が拒否すると考えられる応諾コストの大きい依頼をして,受け手が拒否した後,送り手が受け手に応諾してほしいと考えていた応諾コストの相対的に小さい依頼を行なう方法である(Cialdini,R.B. et al.,1975)。この方法が効果的な背景としては,譲歩の返報性,罪悪感の解消が指摘されている。譲歩の返報性とは,受け手から見ると,送り手が依頼内容について譲歩したように見えるので,当初,拒否した受け手も,返報性の規範に基づいて自分も譲歩した方がよいと考え,応諾するようになるということである。他方,罪悪感の解消とは,たとえ応諾コストの大きい依頼であっても,人からの頼みを拒否することに受け手は罪悪感を覚え,その後に呈示された小さい依頼がその罪悪感を解消するための良い機会になり,応諾するようになるということである(O'Keefe,D.J.,2002)。