承る(読み)ウケタマワル

デジタル大辞泉 「承る」の意味・読み・例文・類語

うけ‐たまわ・る〔‐たまはる〕【承る】

[動ラ五(四)]《上位者から命令などを「受け」「いただく」の意の「受け賜る」から》
受ける」の謙譲語。謹んで受ける。お受けする。「大役を―・る」
聞く」の謙譲語。謹んで聞く。拝聴する。「ありがたいお話を―・りました」
伝え聞く」の謙譲語。「―・るところによりますと」
引き受ける意の謙譲語。謹んでお引き受けする。「御用命―・る」
[類語]聞く承知了承了解承諾承認承引承服納得同意受諾応諾許諾オーケー受け入れる聞き入れるうべなううけがうがえんずる諾する応ずる引き受ける首を縦に振る認める

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「承る」の意味・読み・例文・類語

うけ‐たまわ・る‥たまはる【承】

  1. 〘 他動詞 ラ行五(四) 〙 ( 動詞「うける(受)」に「賜わる」の付いたもの ) 目上の人などから、物を「受け、いただく」意が本義。
  2. 「受ける」の謙譲語。
    1. (イ) (上の人から物や命令などを)つつしんでお受けする。いただく。
      1. [初出の実例]「幣帛(みてぐら)を、神主(かむぬし)、祝部(はふり)等、受賜(ウケたまは)りて事過(あやま)たず捧(ささ)げ持(も)て奉れ」(出典:延喜式(927)祝詞(享保板訓))
    2. (ロ) ( 「受け」は「受けつぐ」意 ) 受けつがせていただく。つつしんで受けつぐ。
      1. [初出の実例]「今、朕(われ)大運(あまつひつぎ)奉承(ウケタマハル)黎元(おほたから)愛育(めぐみやしな)う」(出典:日本書紀(720)崇神四年一〇月(熱田本訓))
    3. (ハ) ( 手紙などをいただく、の意から ) 拝見する。
      1. [初出の実例]「『うけ給はりぬ。いと悩ましくて、え聞えさせず』とばかり書きつけ給へるを」(出典:源氏物語(1001‐14頃)宿木)
  3. ( 目上の人のことばを身に頂戴する、の意から ) 「聞く」また「伝え聞く」の謙譲語。つつしんで聞く。拝聴する。うかがう。
    1. [初出の実例]「吾(をのれ)、天皇臥病と聞(ウケタマハリ)、馳上(まうのぼ)りて」(出典:日本書紀(720)舒明即位前(北野本訓))
    2. 「御琴の音もうけたまはらまほしがる人なむはべる」(出典:源氏物語(1001‐14頃)蓬生)
  4. 「(命令などを受け、聞いて)承諾する、受諾する」の謙譲語。つつしんで承諾する。つつしんで承知する。
    1. [初出の実例]「諸仏の覚悟、弟子、身上に唯(ウケタマハル)と」(出典:天理本金剛般若経集験記平安初期点(850頃))
    2. 「おほせ給はんことは、難かるべきことなりともうけ給らん」(出典:宇津保物語(970‐999頃)忠こそ)
  5. ( 「私が…とうかがう」の気持から ) 「おっしゃる」の意を間接的にいう。
    1. [初出の実例]「この乞食に名を付けて、皆弱法師(よろぼし)とうけたまわるぞや」(出典:世阿彌筆本謡曲・弱法師(1429頃))
  6. 動詞に上接して、「聞き…」「受け…」の謙譲語を作る。
    1. [初出の実例]「中のおとどのひめ君をなん、ちひさく聞え給しときよりうけ給はりおきたるを」(出典:宇津保物語(970‐999頃)藤原の君)

承るの語誌

( 1 )「ロドリゲス日本大文典」には、「うけたまわる」は書き言葉で、話し言葉に「うけたまうる」の形がある、と述べる。
( 2 )(イ) については、八世紀初頭の公式令に規定された文書様式との関連が考えられる。勅、勅旨などを受けて文書を起草する場合、たとえば、「奉(ウケタマハルニ)勅…」と書き始めることになっていた。また、上位者の意を受けて作成する文書の末尾には、作成者(差出者)の名の下に「奉(ウケタマハル)」字を添えたが、この様式は中古・中世にはよく行なわれた。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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