デジタル大辞泉
「流れる」の意味・読み・例文・類語
なが・れる【流れる】
[動ラ下一][文]なが・る[ラ下二]
1
㋐液体がある方向へ道筋をなすように移動する。「川が―・れる」「潮が―・れる」
㋑水滴などが筋となって伝わり落ちる。「汗が―・れる」「涙が―・れる」
㋒液体の移動とともに動く。川の水などに運ばれて動く。「洪水で橋が―・れる」「氷山が―・れる」
2 川の水などが移動するように、連続してものが動く。
㋐空中を移動する。「霧が―・れる」「星が―・れる」
㋑経路を伝って移動する。「電流が―・れる」「渋滞で車が―・れない」
㋒伝わり広がる。「世間にうわさが―・れる」「怪情報が―・れる」
3 時間が経過する。「歳月が―・れる」
4 人が定まりなく移動する。「職を求めて土地から土地へ―・れる」
5
㋐本来の経路などから外れて動く。思いがけない方向へ行く。「他店へ客が―・れる」「砲弾が―・れる」
㋑押さえがきかないで思わず動いてしまう。「腰が―・れる」「筆が―・れる」
㋒人の態度などが、望ましくない方へ傾く。「怠惰に―・れる」「奢侈に―・れる」
6
㋐予定されていた行事などが中止になる。物事が実現しないまま終わる。「会議が―・れる」「企画が―・れる」
㋑流産する。「おなかの子が―・れる」
7 一定の期限が過ぎて、質物の所有権がなくなる。「質草が―・れる」
8 テレビの映像が乱れる。「画面が上下に―・れる」
[類語](1㋐)流動する・貫流する・流通する・流出する・捌ける・通う・流れ下る・押し流す・逆巻く・渦巻く・淀む・水流・清流・濁流・急流・激流・奔流・懸河・緩流・放流・放水・合流・蛇行/(1㋑)滴る・零れる・零れ落ちる・伝う/(1㋒)漂う・浮流する・漂流する
[補説]作品名別項。→流れる
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
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なが・れる【流】
- 〘 自動詞 ラ行下一段活用 〙
[ 文語形 ]なが・る 〘 自動詞 ラ行下二段活用 〙 - [ 一 ] たまってあふれたり、湧き出したりした液体が移動する。
- ① 水などの液体が自然に低い方へ移り動く。
- [初出の実例]「石走り激ち流留(ながるる)泊瀬川絶ゆることなくまたも来て見む」(出典:万葉集(8C後)五・九九一)
- 「あふさかの関にながるるいはし水いはで心におもひこそすれ〈よみ人しらず〉」(出典:古今和歌集(905‐914)恋一・五三七)
- ② 特に、血・涙・汗などがしたたり落ちる。たれる。
- [初出の実例]「吾妹子が植ゑし梅の樹見るごとにこころ咽(む)せつつ涙し流(ながる)」(出典:万葉集(8C後)三・四五三)
- 「帰る道にてくらもちの御子、血のながるるまで調ぜさせ給ふ」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
- ③ 雨や雪などが降る。
- [初出の実例]「わが園に梅の花散るひさかたの天(あめ)より雪の那何列(ナガレ)くるかも」(出典:万葉集(8C後)五・八二二)
- ④ 人や物が、液体とともに動いて行く。水などに運ばれて行く。
- [初出の実例]「隠国(こもりく)の 泊瀬の川ゆ 那峨例(ナガレ)くる 竹の い組竹世竹」(出典:日本書紀(720)継体七年九月・歌謡)
- 「かは水まさりて、人ながるといふ」(出典:蜻蛉日記(974頃)下)
- ⑤ 水が移動するような感じで物事が動いて行く。水面に浮かびただようように静かに動く。また、横になびく。
- [初出の実例]「春霞流(ながるる)なへに青柳の枝くひ持ちて鶯鳴くも」(出典:万葉集(8C後)一〇・一八二一)
- 「障子を明けると強い火気が流れて来た」(出典:伊豆の踊子(1926)〈川端康成〉一)
- [ 二 ] 物事の状態、時などが移り動く。また、ある傾向や方向が示される。
- ① 時間・月日・年月がしだいに経過して行く。移る。
- [初出の実例]「昨日といひけふとくらしてあすかがは流(ながれ)てはやき月日なりけり〈春道列樹〉」(出典:古今和歌集(905‐914)冬・三四一)
- ② 次第に広まって行く。世に流布する。
- [初出の実例]「妹が名は千代に流(ながれ)む姫島の子松が末(うれ)に蘿(こけ)むすまでに」(出典:万葉集(8C後)二・二二八)
- 「仏法東にながれてさかりに我国にとどまり」(出典:観智院本三宝絵(984)中)
- 「そんな噂が流れとるなら」(出典:階級(1967)〈井上光晴〉四)
- ③ 物事が移り変化していく。特に、杯が順々に人々の手に回る。
- [初出の実例]「かはらけあまたたびながれ、皆酔(ゑひ)になりて」(出典:源氏物語(1001‐14頃)行幸)
- 「さうなって来ると、もう話はとめどなく天候の方へ流れて行き」(出典:稲熱病(1939)〈岩倉政治〉四)
- ④ 生きながらえる。また、長い期間にわたる。
- [初出の実例]「水のあわの消えでうき身といひながら流て猶もたのまるる哉〈紀友則〉」(出典:古今和歌集(905‐914)恋五・七九二)
- ⑤ 罪を得て、流人となる。また、特別な目的もなくある土地から他の土地へと移動する。さすらう。
- [初出の実例]「いかなるとがまさりたりけむ、てんげ人々なかるるとののしることいできて」(出典:蜻蛉日記(974頃)中)
- 「此様(こん)な田舎へ流れて来ずとも」(出典:人情本・春色恵の花(1836)初)
- ⑥ その方に傾く。物事の状態があまり好ましくないある傾向に向かう。
- [初出の実例]「其もとは沓の形ちに造ったもので厶らうが、段々簡便にながれて、今の様な麁末な製に成たものと見える」(出典:文明開化(1873‐74)〈加藤祐一〉初)
- ⑦ ある考え方や感情などがその表現の底に認められる。
- [初出の実例]「ダンヌンチオやイブセンやビヨルンソンやハウプトマンの作を流れてゐる新しい思想は」(出典:東京の三十年(1917)〈田山花袋〉地理の編纂)
- [ 三 ] しっかりした状態を保てないでぐらつく。また、物事が不成立になる。
- ① 力がはいらないでふらつく。
- [初出の実例]「河津が膝、すこしながれて見え候」(出典:曾我物語(南北朝頃)一)
- ② 当てようとする目的物からそれる。はずれる。「刀が流れる」
- ③ 質物をうけ出す期限が切れて所有権がなくなる。
- [初出の実例]「教豊卿御代質物に入、流之処に、大沢長門守重康請出、于レ今所二知行一也」(出典:言国卿記‐文明一〇年(1478)九月一四日)
- ④ ある状態が不成立になる。特に、試合、催し物などが何かの事情で行なわれなくなる。ゲームなどできまりによってその回の勝負がやり直しになることもいう。
- [初出の実例]「自分と三沢との間に緒口の付き掛けた談話は是で又流(ナガ)れて仕舞った」(出典:行人(1912‐13)〈夏目漱石〉塵労)
- ⑤ 実を結ばないでだめになる。また、流産する。
- [初出の実例]「中宮様御誕生の王子ながれ申す由に候」(出典:細川忠興文書‐寛永七年(1630)八月二三日)
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
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流れる
ながれる
日本映画。1956年(昭和31)東宝作品。成瀬巳喜男(なるせみきお)監督。原作幸田文(こうだあや)、製作藤本真澄(ふじもとさねずみ)(1910―1979)、脚色田中澄江(たなかすみえ)、井出俊郎(いでとしろう)(1910―1988)、撮影玉井正夫(たまいまさお)(1908―1997)、美術中古智(ちゅうこさとる)(1912―1994)、音楽斎藤一郎(さいとういちろう)(1909―1979)の成瀬組で、豪華な女優陣を盛り立てた。柳橋の芸者置屋「つたの家」を舞台に、派遣されて来たお春とよばれる女中梨花(田中絹代(たなかきぬよ))を狂言回しに、女将のつた奴(山田五十鈴(やまだいすず))、年増芸者の染香(杉村春子(すぎむらはるこ))、OL出身の若い芸者なな子(岡田茉莉子(おかだまりこ)、1933― )、つた奴の妹米子(中北千枝子(なかきたちえこ)、1926―2005)、つた奴の姉おとよ(賀原夏子(かはらなつこ)、1921―1991)、水野の女将お浜(栗島すみ子)が相互に絡み合い、隅田川の橋向こうの鋸山(のこぎりやま)から来た石工(宮口精二(みやぐちせいじ)、1913―1985)の恐喝騒動を佐伯(お浜の甥)の機転で丸く治める。お浜はいずれ「つたの家」を小料理屋にして、一同には出て行ってもらう算段を陰でしているのだが、つた奴と染香は三味線の稽古(けいこ)に励むのだった。栗島は、『泣虫小僧』(1938)以来、18年ぶりの映画出演。「つたの家」の内部や通りのオープンセットは、中古智の緻密(ちみつ)な設計による。
[坂尻昌平]
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
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流れる
1956年公開の日本映画。監督:成瀬巳喜男、原作:幸田文、脚色:田中澄江、井手俊郎、美術:中古智。出演:田中絹代、山田五十鈴、高峰秀子、中北千枝子、松山なつ子、杉村春子、岡田茉莉子ほか。第11回毎日映画コンクール美術賞、女優主演賞(山田五十鈴)ほか受賞。
出典 小学館デジタル大辞泉プラスについて 情報
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