(読み)シュン

デジタル大辞泉 「旬」の意味・読み・例文・類語

しゅん【旬】

[名]
魚介類蔬菜そさい・果物などの、最も味のよい出盛りの時期。「の魚」「たけのこ
物事を行うのに最も適した時期。「紅葉狩りの
古代、宮中で行われた年中行事の一。天皇が紫宸殿ししんでんに出御、臣下に酒を賜り、政務を聞く儀式。もとは毎月1日・11日・16日・21日に行われたが、平安中期以後は4月と10月の1日だけとなった。4月を孟夏もうかの旬、10月を孟冬もうとうの旬といい、合わせて二孟の旬という。このほか、朔旦さくたん冬至の旬など、臨時の旬もあった。
[形動]評判になっているさま。また、最新であるさま。「もっともな話題」
[類語]盛り最盛期盛期盛時黄金時代盛代真っ盛り花盛りたけなわたける出盛り

じゅん【旬】[漢字項目]

常用漢字] [音]ジュン(呉) シュン(漢)
一〇日間。「旬刊下旬初旬上旬中旬
一〇年。または、一〇か月。「旬月旬年
[名のり]ただ・とき・ひとし・ひら・まさ

じゅん【旬】

10日。特に、1か月を3分した、それぞれの10日間。→上旬中旬下旬
10年を1期とした称。「よわいを迎える」

しゅん【旬】[漢字項目]

じゅん

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精選版 日本国語大辞典 「旬」の意味・読み・例文・類語

しゅん【旬】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「しゅん」は「旬」の漢音 )
  2. 中古、朝廷で行なわれた年中行事の一つ。毎月、一日、一一日、一六日、二一日に、天皇が臣下から政務をきく儀式。はじめは毎月行なわれたが、のち、四月と一〇月との一日だけとなって、四月を孟夏の旬、一〇月を孟冬の旬と称し、合わせて二孟の旬という。この日、闈司奏・監物奏・六府番奏・少納言庭立奏などの諸官の奏、歌舞、賜祿などの事があり、孟夏の旬には扇、孟冬の旬には氷魚を賜わるのを例とした。また、天皇の出御のない時は、平座(ひらざ)と称して略儀としたが、後世は多く平座となった。諒闇(りょうあん)・忌日などには行なわれず、日食の際にはその翌日となる。恒例の旬の外に臨時の旬があり、一一月一日が冬至にあたった時は朔冬旦至の旬、内裏新造後には新所の旬、即位後には万機の旬が行なわれた。旬儀旬政
    1. [初出の実例]「旬、天皇御南殿」(出典:日本紀略‐延喜七年(907)一二月一六日)
  3. 草木などの盛りの時期。また、魚介・果物・野菜など、季節の食物が出盛りの時。物がよく熟し、最も味がよい季節。
    1. [初出の実例]「蔓草は秋冬がしゅんなり」(出典:玉塵抄(1563)一四)
  4. ( から転じて ) 物事を行なうのに、最も適した時期。最も盛んな時期。
    1. [初出の実例]「八月は風のしゅんできぶうあらいぞ」(出典:玉塵抄(1563)三)
  5. 時候。季節。じゅん。
    1. [初出の実例]「Shun(シュン) ハズレ」(出典:和英語林集成初版)(1867))

じゅん【旬】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 一〇日。一〇日間。特に、一か月を三分したときの、それぞれの一〇日間。一日から一〇日までを上旬、一一日から二〇日までを中旬、二一日から月末までを下旬という。
    1. [初出の実例]「忽沈枉疾、累旬痛苦、祷恃百神、且得消損」(出典:万葉集(8C後)一七・三九六五・題詞)
    2. 「只堂の預の俗三人、清浄にして旬を替て各十日の間入る」(出典:今昔物語集(1120頃か)一二)
    3. [その他の文献]〔礼記‐曲礼・上〕
  3. 一〇年を一期とする時の称。
    1. [初出の実例]「以著之直衣装束一具、給高基五旬、凌寒気之故」(出典:台記‐天養元年(1144)一二月一五日)
    2. [その他の文献]〔白居易‐偶吟自慰、兼呈夢得詩〕
  4. しゅん(旬)
    1. [初出の実例]「すっかりもう冬めきました〈略〉今年はすこしいつもより旬(ジュン)が早いやうに思はれますが」(出典:末枯(1917)〈久保田万太郎〉)

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普及版 字通 「旬」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 6画

[字音] ジュン
[字訓] とおか・あまねし・ひとしい

[説文解字]
[甲骨文]
[金文]

[字形] 会意
勹(ほう)+日。卜文の字形は、尾部を巻いた竜の形。のち日をそえて旬となる。〔説文〕九上に「(あまね)くするなり。十日を旬と爲す。勹日に從ふ」とするが、字の初形は勹に従うものではない。卜辞に卜旬の辞があり、旬末の日に、次の一旬の吉凶を卜する。また毎夕を卜する卜夕の辞もあり、わが国の毎日招魂のように、一種の魂振り儀礼であったと考えられる。旬と雲(云)との字形は近く、云は雲の中に竜が頭をかくしている形である。一旬の旬がもと竜の形で示されているのは、一旬の吉凶を支配するものが、この竜形の神と考えられたからであろう。〔詩、大雅、江漢〕「王、召虎に命じ 來(ここ)に旬(あまね)くし來に宣(あき)らかならしむ」、また〔詩、大雅、桑柔〕「其の下、侯(こ)れ旬(ひと)し」のように用いる。後期金文の字形に(いん)に従うものがあり、〔説文〕古文の形は(いん)に従うものであろう。

[訓義]
1. 十日、一まわり。旬年は十年。
2. あまねし、みちる、めぐる、ゆきわたる。
3. ひとしい。
4. 徇と通じ、となえる、したがう。

[古辞書の訓]
名義抄〕旬 十日なり、アマネクス 〔字鏡集〕旬 アマネシ・ヒトヘ・ヒトヘニ

[声系]
〔説文〕に旬声として・筍・恂・洵・絢など十一字を収める。絢はの省声に従う字である。

[熟語]
旬液・旬宴・旬仮・旬外・旬休・旬月・旬歳・旬朔・旬時・旬日・旬浹旬宣・旬内・旬年・旬余
[下接語]
一旬・淹旬・下旬・兼旬・三旬・十旬・初旬・浹旬・上旬・宣旬・旬・中旬・満旬・逾旬・由旬・歴旬

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改訂新版 世界大百科事典 「旬」の意味・わかりやすい解説

旬 (しゅん)

(1)魚貝類,蔬菜(そさい),果実などが最も美味な時期をいい,漁獲量,収穫量の多い出盛り期がそのまましゅんであることが多い。魚では生殖期直前の脂ののった時期であることが多く,蔬菜では収穫期の初めのころである。しゅん以前のものは〈走り〉〈初物〉,しゅん過ぎのものは〈しゅんはずれ〉と呼ばれたが,遠洋への出漁による漁獲や促成栽培の日常化により,日本人の食生活をいろどっていた季節感は薄れ,しゅんもまた失われつつある。

(2)古く朝廷で毎月4回天皇が臣下から政務をきく儀式があり,これを旬(しゆん)と呼んだ。平安中期以降これが4月1日の孟夏旬(もうかのしゆん)と10月1日の孟冬旬(もうとうのしゆん)の2回になり,2回合わせて二孟旬(にもうのしゆん)と呼ばれた。
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山川 日本史小辞典 改訂新版 「旬」の解説


しゅん

旬政・旬儀(しゅんのぎ)とも。平安時代以降,朝廷で行われた儀式。毎月1・11・16・21日に,天皇が紫宸殿(ししんでん)にでて諸司奏や官奏などの政務をみ,ついで臣下に御膳や酒をふるまい,禄を賜った諸臣が拝舞の後に退出して終わる。9世紀前半にとくに盛んに行われたが,10世紀以降は4・10月の朔日にのみ行われるのが通例となり,これを二孟旬(にもうのしゅん)といった。また天皇が出御せず,臣下が宜陽殿(ぎようでん)で宴のみを賜ることを平座(ひらざ)といった。

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百科事典マイペディア 「旬」の意味・わかりやすい解説

旬【しゅん】

魚類,野菜,果実などの最も美味な時期をいう。多くは漁獲量や収穫量の多い出回り期がこれに当たるが,必ずしも一致せず,魚では脂ののった生殖期直前の場合が多く,野菜では収穫の初めのころがよい。

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栄養・生化学辞典 「旬」の解説

 味,物性などから食品の収穫に最も適した時期.通常,最も多量に収穫される時期に一致する.

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