(読み)ミ

デジタル大辞泉 「未」の意味・読み・例文・類語

み【未】[漢字項目]

[音](呉) ビ(漢) [訓]いまだ いまだし まだ ひつじ
学習漢字]4年
〈ミ〉まだ…しない。「未婚未遂未然未定未満未明未来未曽有みぞう未亡人前代未聞
〈ビ〉十二支の8番目。ひつじ。「丁未ていび

ひつじ【未】

十二支の8番目。
方角の名。南から西へ30度の方角。南南西
時刻の名。今の午後2時ごろ、およびその後の2時間。または午後2時前後の2時間。
1にあたる年や日。
陰暦6月の異称。

び【未】[漢字項目]

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「未」の意味・読み・例文・類語

まだ【未】

  1. [ 1 ] 〘 副詞 〙 ( 「いまだ(未)」の変化した語 )
    1. 否定語を伴って、一つの事態がその時点までになお実現していないさまを表わす。今まで(…したことがない)。その時はなお(…していない)。
      1. [初出の実例]「二条の后のまだ帝にも仕うまつり給はで、ただ人にておはしましける時のこと也」(出典:伊勢物語(10C前)三)
      2. 「吉野山こぞのしをりの道かへてまだみぬかたの花を尋ねん〈西行〉」(出典:新古今和歌集(1205)春上・八六)
    2. 肯定表現に用いて、一つの状態がその時点において、なお継続するさまを表わす。いまなお(…している)。
      1. [初出の実例]「ひとみなまだ寝たれば、海のありやうもみえず」(出典:土左日記(935頃)承平五年一月一一日)
    3. 特に、時とともに経過・発展・成長することを予想される事柄について、一つの状態がなお持続しているさま、なお十分に経過・成長していないさまを表わす。いまなお。
      1. [初出の実例]「御車は、まだくらきに来、とてかへしつ」(出典:落窪物語(10C後)一)
    4. 事態がさらに悪くなる状態を想定して、もっと悪い状態と比べて、なおとるに足ると判断されるさまを表わす。不十分ながらともかく。
      1. [初出の実例]「まだ粋な女郎にあふたらば、〈略〉自然と粋に成事もあるべし」(出典:浮世草子・傾城色三味線(1701)江戸)
    5. 一つの事物・事態の状態が、他の事物・事態の状態よりも、さらに一段と程度の進んださまを表わす。さらに。もっと。
      1. [初出の実例]「『遠いお寺だネ』〈略〉『目黒の蛸薬師から、まだ十五六丁あると聞ました』」(出典:滑稽本・浮世風呂(1809‐13)前)
  2. [ 2 ] 〘 形容動詞ナリ活用 〙
    1. 十分な訓練・経験が足りないため、いまなお未熟であるさま。また、人情の機微などについて、理解のないさま。ものわかりの悪いさま。
      1. [初出の実例]「手を書にも手本によくにせんにせんと思ふうちこそ、まだなる事也」(出典:随筆・独寝(1724頃)上)
    2. もっとひどいことに比べれば、なおましだと判断されるさま。まだしも。
      1. [初出の実例]「磊落に母親に物をいったりするはまだな事、昇と眼を見合はして狼狽(うろたへ)て横へ外らしたことさへ度々有ッた」(出典:浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉三)

いま‐だ【未】

  1. 〘 副詞 〙 ( 名詞「今」に、助詞「だに」の語根と同じ「だ」が付いたもの )
  2. ( あとに否定の語を伴って、現在でもなお事柄が実現していない意を表わす ) まだ。
    1. [初出の実例]「婚(よば)ひに 在通(ありかよ)はせ 太刀が緒も 伊麻陀(イマダ)解かずて 襲(おすひ)をも 伊麻陀(イマダ)解かねば」(出典:古事記(712)上・歌謡)
    2. 「此蛙は、都にてのきけものなれど、未だ大坂を見たることなければ」(出典:尋常小学読本(1887)〈文部省〉四)
  3. ( 否定の語を伴わないで、「事柄や状態が今になっても変わらずそのままでいる」の意を表わす ) 今でも。まだ。
    1. [初出の実例]「月よめば伊麻太(イマダ)冬なりしかすがに霞たなびく春たちぬとか」(出典:万葉集(8C後)二〇・四四九二)

未の語誌

( 1 )ある事態が実現していないという否定的ニュアンスでの現在の動作継続・状態の記述を表わす。外見上は肯定文で「ある時点まで…である(=その逆の事態の未実現)」という場合()と、否定文の「ある時点まで…でない」()という場合の二つのケースがあるが、後者は漢文の「未」の字に極めて近いために、その訓読にも用いられるようになった。
( 2 )肯定の場合の「いまだ」は現在における継続性を表わすために、副次的に過去からの継続性をむしろ強調するようなニュアンスのある場合もある。
( 3 )平安時代には「いまだ」から変化した「まだ」という語が発生し、「いまだ」と同義で和文専用語として用いられるようになった。それに対して「いまだ」は漢文訓読にもっぱら用いられたため、否定との呼応が強く意識されるようになった。


ひつじ【未】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 十二支の一つで、その第八番目。
    1. [初出の実例]「むま、ひつじ、さる、とり、いぬ、ゐ。むまれよりひつじつくれば山にさるひとりいぬるに人ゐていませ〈よみ人しらず〉」(出典:拾遺和歌集(1005‐07頃か)物名・四三〇)
  3. 年月日、方角、時刻に配して、その呼び名とするもの。
    1. (イ) にあたる年や日。
      1. [初出の実例]「『わたくしは未でござります』『ええ年を聞くのではない』」(出典:歌舞伎・船打込橋間白浪(鋳掛松)(1866)序幕)
    2. (ロ) 南から西へ三〇度寄った方角。南南西。〔色葉字類抄(1177‐81)〕
    3. (ハ) 現在の午後二時頃。また、その前後二時間。一説に、その後二時間。未の刻。未の時。
      1. [初出の実例]「ひつじの終はりばかりに、はてぬればかへる」(出典:蜻蛉日記(974頃)中)
    4. (ニ) 陰暦六月の異称。

まだ‐し【未】

  1. 〘 形容詞シク活用 〙 ( 副詞「まだ」の形容詞化 )
  2. まだその時期に至らない。時期尚早である。ものの中途である。また、未熟である。いまだし。→まだしみ
    1. [初出の実例]「五月来ばなきもふりなん郭公まだしき程の声を聞かばや〈伊勢〉」(出典:古今和歌集(905‐914)夏・一三八)
    2. 「此里まだしき人のかしこ㒵するを」(出典:浮世草子・新吉原常々草(1689))
  3. 用意などが)まだ整わない。不十分である。足りない。
    1. [初出の実例]「ことどもは皆具しにたんめるを、ただ被物〈略〉どものことなんまだしき」(出典:宇津保物語(970‐999頃)嵯峨院)

未の派生語

まだし‐さ
  1. 〘 名詞 〙

未の派生語

まだし‐み
  1. 〘 名詞 〙

いまだ‐し【未】

  1. 〘 形容詞シク活用 〙 ( 副詞「いまだ」を形容詞化したもの ) まだその時でない。時期尚早である。まだ早い。未熟である。まだし。現在では「いまだしの感がある」のように、終止形を体言的に用いることがある。
    1. [初出の実例]「尚未(イマタシク)あるべらなり」(出典:天理本金剛般若経集験記平安初期点(850頃))
    2. 「だから拍手をさせるのは未だしの芸で」(出典:ブラリひょうたん(1950)〈高田保〉拍手)

まんだ【未】

  1. 〘 副詞 〙 副詞「まだ(未)」の変化した語。
    1. [初出の実例]「山里は冬はつかしてややさひし 岑のあさ霜野はまんた露〈貞信〉」(出典:俳諧・後撰犬筑波集(1674)八)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

普及版 字通 「未」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 5画

[字音] ミ・ビ
[字訓] いまだ・ゆくすえ・ひつじ

[説文解字]
[甲骨文]
[金文]

[字形] 象形
木の枝葉の茂りゆく形。〔説文〕十四下に「味なり。六味なり。五行、木は未に老ゆ。木の枝を重ぬるに象るなり」とする。枝葉の伸びる形で、これを剪裁するを制という。「未だ」のように時の関係に用いるのは仮借の用法で、否定詞との関係がある。

[訓義]
1. いまだ~ず、いまだ、いまだし、あらず、いな。
2. ゆくすえ、つぐ。
3. 十二支のひつじ。

[古辞書の訓]
名義抄〕未 イマダシ・イマダ~セズ・イマダ~スマジ・ナシ・セズ

[部首]
〔説文〕〔玉〕に十二支の一として部首を立てるが、部属の字はない。もと木部にあるべき字である。

[声系]
〔説文〕に未声として味・眛・昧・寐・・妹など七字を収める。眛・昧・寐には、冥昧の意を含むようである。

[語系]
未・勿miutは同声。末muat、蔑miat、mak、靡miai、無miua、(亡)・罔miuangはみな否定の意に仮借して用い、また冥昧の意を含むものがある。

[熟語]
未央・未可・未冠・未幾・未形・未決・未見・未熟・未詳・未尽・未遂・未成・未然・未曾・未知・未定・未・未発・未半・未必・未聞・未亡・未満・未明・未来・未了

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「未」の意味・わかりやすい解説


ひつじ

十二支の第8番目。「み」ともいい、十二支獣としてヒツジがあてられる。陰暦6月の異称として用いられるほか、時刻として、今日の午後2時を中心とした前後2時間を「未の刻」「羊の時」という。方角としては南から西へ30度寄った方向で、南南西にあたる。古本屋仲間などで八の数の符丁として用いられたり、「未の食い破り」といい、羊の日には相場に大きな変動があるとされる。また「未申(ひつじさる)(西南)へ曲がる」といい、斜めに曲がることをいう特殊な用例もみられる。

[宇田敏彦]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

占い用語集 「未」の解説

十二支の一つ。陰の土で、季節は土用、月は7月、時間は13~15時、方位は南南西を表す。

出典 占い学校 アカデメイア・カレッジ占い用語集について 情報

今日のキーワード

プラチナキャリア

年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...

プラチナキャリアの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android