(読み)ハハソ

デジタル大辞泉 「柞」の意味・読み・例文・類語

ははそ【×柞】

コナラの別名。古くは近似種のクヌギミズナラなどを含めて呼んだらしい。また、誤ってカシワをいうこともある。 秋》
《語頭の2音が同音であるところから》母の意にかけて用いる。
「いかにせん結ぶ木の実を待たずして秋の―に落つる山風」〈海道記

いす‐の‐き【×柞/蚊樹】

マンサク科の常緑高木。暖地に自生。樹皮は灰白色。葉は長楕円形で厚く、互生する。春、紅色の細かい花が穂状に咲く。葉に生ずる虫こぶタンニンを含み、染料に、材は堅くて重く、柱・机・くしそろばん玉などに用いられ、また柞灰いすばいも作られる。虫こぶを吹いたときに鳴る音から「ひょんのき」ともいう。さるぶえ。さるびょう。くしのき。ゆすのき。いす。

ほうそ〔はうそ〕【×柞】

ははそ」の音変化。〈和玉篇

いす【×柞】

イスノキの別名。

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精選版 日本国語大辞典 「柞」の意味・読み・例文・類語

なら【・柞・枹】

  1. 〘 名詞 〙 ブナ科の落葉高木コナラと、それに近似のミズナラ、ナラガシワなどの総称。いずれも「どんぐり」がなるが、落葉樹で、常緑のカシ類と対比される。狭義にはコナラをさす。ならの木。

▼ならの実《 季語・秋 》

  1. [初出の実例]「(ならはら)と号くる所以は、柞(なら)此の村に生へり。故、柞原(ならはら)と曰ふ」(出典:播磨風土記(715頃)賀茂)

柞の語誌

( 1 )「万葉集」ではさほど詠まれていないが、平安時代に入ると主にその葉が歌人たちの注目を集めるようになり、「の葉」「の葉がしは」などの形で詠まれている。季節としては夏で、大きな葉をそよがせるほどの涼風を感じさせるものが多い。
( 2 )冬の歌材としても好まれ、雪・時雨・霜が落葉などに降りかかる情景を、何らかの淋しさと共に詠んだものが多い。


ははそ【柞】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「はわそ」の時代も )
  2. ミズナラなどのナラ類およびクヌギの総称。ははそのき。

▼ははその実《 季語・秋 》

  1. [初出の実例]「さほ山のははその色は薄けれど秋は深くもなりにけるかな〈坂上是則〉」(出典:古今和歌集(905‐914)秋下・二六七)
  2. ( 語頭の二音が同音であるところから ) 母にかけていう。
    1. [初出の実例]「時ならでははその紅葉ちりにけりいかにこのもとさびしかるらん〈村上天皇〉」(出典:拾遺和歌集(1005‐07頃か)哀傷・一二八四)

いす【柞・蚊母樹】

  1. 〘 名詞 〙いすのき(柞)
    1. [初出の実例]「髪の錺(かざり)の鼈甲(べっこう)もいつかは檮(イス)の引櫛とかはり果たる友挊(ともかせぎ)」(出典:浄瑠璃菅原伝授手習鑑(1746)一)

ゆし‐の‐き【柞】

  1. 〘 名詞 〙 植物いすのき(柞)」の古名
    1. [初出の実例]「これやこの せんばん さんたの木 由之乃支(ユシノキ)の盤 むしかめの筒(とう)」(出典:催馬楽(7C後‐8C)大芹)

ゆす‐の‐き【柞】

  1. 〘 名詞 〙 植物「いすのき(柞)」の古名。《 季語・春 》
    1. [初出の実例]「いかにせん逢ことかたきゆすの木の我にひかれぬ人の心を」(出典:七十一番職人歌合(1500頃か)四二番)

ほうそはうそ【柞】

  1. 〘 名詞 〙 「ははそ(柞)」の変化した語。〔和玉篇(15C後)〕
    1. [初出の実例]「たとへばはうその木にふるい葉がしげったに又其あとに枝のやうに生ずると」(出典:古活字本毛詩抄(17C前)一五)

ゆす【柞】

  1. 〘 名詞 〙 植物「いすのき(柞)」の古名。〔日葡辞書(1603‐04)〕

ゆし【柞】

  1. 〘 名詞 〙 植物「いすのき(柞)」の古名。〔十巻本和名抄(934頃)〕

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普及版 字通 「柞」の読み・字形・画数・意味


9画

[字音] サク
[字訓] ははそ

[説文解字]
[金文]

[字形] 形声
声符は乍(さく)。〔説文〕六上に「柞木なり」とあり、木名としては、ははそをいう。〔詩、周頌、載〕に「載(すなは)ち(さん)し載ち柞す」とあり、除草、柞は木の小枝をはらうことをいう。乍は小枝を撓(たわ)める形。これを組んで獣を捕るわなをしかけることを柞格、また逆茂木(さかもぎ)を立てて陥穽とすることを柞鄂(さくがく)という。柞格・柞鄂はみな畳韻。嵯峨齟齬(そご)と同じような連語である。

[訓義]
1. ははそ、くぬぎ。
2. 槎と通じ、小枝をきりとる、かる。また、草をかることをもいう。
3. と通じ、ためる、せばめる、まげる。
4. 咋と通じ、大声を出す。

[古辞書の訓]
〔新字鏡〕柞 奈良(なら)、、比曾(ひそ)、、志比(しひ)なり 〔和名抄〕柞 由之(ゆし)、語抄に云ふ、波々曾(ははそ) 〔名義抄〕柞 ユシ・ハハソ・カシ・ユシノキ・キル・キキル・サク・ナカスホナリ 〔字鏡集〕柞 キル・ユスノキ・ユヅリハ・カシノキ・ハハソ・マユミ・ナカスホナリ・ユシ・カシ・サク・キキル

[熟語]
柞格・柞鄂・柞狭柞蚕・柞子・柞実・柞樹・柞薪・柞柞櫟
[下接語]
柞・豎柞・

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動植物名よみかた辞典 普及版 「柞」の解説

柞 (コナラ・ハハソ)

学名:Quercus serrata
植物。ブナ科の落葉高木,園芸植物,薬用植物

柞 (イヌツゲ)

学名:Ilex crenata
植物。モチノキ科の常緑低木・小高木,園芸植物

柞 (イスノキ・イス;ホウソ;ユシ;ユシノギ;ユス;ユスノキ)

学名:Distylium racemosum
植物。マンサク科の常緑高木

柞 (ナラ・ハハソ)

植物。ブナ科の落葉高木,園芸植物,薬用植物。カシワの別称

出典 日外アソシエーツ「動植物名よみかた辞典 普及版」動植物名よみかた辞典 普及版について 情報

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