デジタル大辞泉
「柞」の意味・読み・例文・類語
ははそ【×柞】
1 コナラの別名。古くは近似種のクヌギ・ミズナラなどを含めて呼んだらしい。また、誤ってカシワをいうこともある。《季 秋》
2 《語頭の2音が同音であるところから》母の意にかけて用いる。
「いかにせん結ぶ木の実を待たずして秋の―に落つる山風」〈海道記〉
いす‐の‐き【×柞/蚊=母=樹】
マンサク科の常緑高木。暖地に自生。樹皮は灰白色。葉は長楕円形で厚く、互生する。春、紅色の細かい花が穂状に咲く。葉に生ずる虫こぶはタンニンを含み、染料に、材は堅くて重く、柱・机・櫛・そろばん玉などに用いられ、また柞灰も作られる。虫こぶを吹いたときに鳴る音から「ひょんのき」ともいう。さるぶえ。さるびょう。くしのき。ゆすのき。いす。
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なら【・柞・枹】
ははそ【柞】
- 〘 名詞 〙 ( 「はわそ」の時代も )
- ① ミズナラなどのナラ類およびクヌギの総称。ははそのき。
▼ははその実《 季語・秋 》
- [初出の実例]「さほ山のははその色は薄けれど秋は深くもなりにけるかな〈坂上是則〉」(出典:古今和歌集(905‐914)秋下・二六七)
- ② ( 語頭の二音が同音であるところから ) 母にかけていう。
- [初出の実例]「時ならでははその紅葉ちりにけりいかにこのもとさびしかるらん〈村上天皇〉」(出典:拾遺和歌集(1005‐07頃か)哀傷・一二八四)
いす【柞・蚊母樹】
- 〘 名詞 〙 =いすのき(柞)
- [初出の実例]「髪の錺(かざり)の鼈甲(べっこう)もいつかは檮(イス)の引櫛とかはり果たる友挊(ともかせぎ)」(出典:浄瑠璃・菅原伝授手習鑑(1746)一)
ゆし‐の‐き【柞】
- 〘 名詞 〙 植物「いすのき(柞)」の古名。
- [初出の実例]「これやこの せんばん さんたの木 由之乃支(ユシノキ)の盤 むしかめの筒(とう)」(出典:催馬楽(7C後‐8C)大芹)
ゆす‐の‐き【柞】
- 〘 名詞 〙 植物「いすのき(柞)」の古名。《 季語・春 》
- [初出の実例]「いかにせん逢ことかたきゆすの木の我にひかれぬ人の心を」(出典:七十一番職人歌合(1500頃か)四二番)
ほうそはうそ【柞】
- 〘 名詞 〙 「ははそ(柞)」の変化した語。〔和玉篇(15C後)〕
- [初出の実例]「たとへばはうその木にふるい葉がしげったに又其あとに枝のやうに生ずると」(出典:古活字本毛詩抄(17C前)一五)
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
普及版 字通
「柞」の読み・字形・画数・意味
柞
9画
[字音] サク
[字訓] ははそ
[説文解字]
[金文]
[字形] 形声
声符は乍(さく)。〔説文〕六上に「柞木なり」とあり、木名としては、ははそをいう。〔詩、周頌、載〕に「載(すなは)ち(さん)し載ち柞す」とあり、は除草、柞は木の小枝をはらうことをいう。乍は小枝を撓(たわ)める形。これを組んで獣を捕るわなをしかけることを柞格、また逆茂木(さかもぎ)を立てて陥穽とすることを柞鄂(さくがく)という。柞格・柞鄂はみな畳韻。嵯峨・齟齬(そご)と同じような連語である。
[訓義]
1. ははそ、くぬぎ。
2. 槎と通じ、小枝をきりとる、かる。また、草をかることをもいう。
3. と通じ、ためる、せばめる、まげる。
4. 咋と通じ、大声を出す。
[古辞書の訓]
〔新字鏡〕柞 奈良(なら)、、比曾(ひそ)、、志比(しひ)なり 〔和名抄〕柞 由之(ゆし)、語抄に云ふ、波々曾(ははそ) 〔名義抄〕柞 ユシ・ハハソ・カシ・ユシノキ・キル・キキル・サク・ナカスホナリ 〔字鏡集〕柞 キル・ユスノキ・ユヅリハ・カシノキ・ハハソ・マユミ・ナカスホナリ・ユシ・カシ・サク・キキル
[熟語]
柞格▶・柞鄂▶・柞狭▶・柞蚕▶・柞子▶・柞実▶・柞樹▶・柞薪▶・柞▶・柞櫟▶
[下接語]
柞・豎柞・柞
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
柞 (コナラ・ハハソ)
学名:Quercus serrata
植物。ブナ科の落葉高木,園芸植物,薬用植物
柞 (イヌツゲ)
学名:Ilex crenata
植物。モチノキ科の常緑低木・小高木,園芸植物
柞 (イスノキ・イス;ホウソ;ユシ;ユシノギ;ユス;ユスノキ)
学名:Distylium racemosum
植物。マンサク科の常緑高木
柞 (ナラ・ハハソ)
植物。ブナ科の落葉高木,園芸植物,薬用植物。カシワの別称
出典 日外アソシエーツ「動植物名よみかた辞典 普及版」動植物名よみかた辞典 普及版について 情報