森吉町と
前岳に神霊の宿るといわれる岩の塔があり、
出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報
秋田県中部の複式火山。〈もりよしやま〉ともいう。標高1454m。中央部に直径約3kmのカルデラを有し,南側に中央火口丘の向(むかい)岳が噴出し,カルデラ内はその溶岩で埋積されている。火口縁西部に前岳(1308m),一ノ腰(1265m)があり,東部に側火山のヒバクラ岳(1326m),立(りゆう)が森(1031m)がある。外輪山外側は緩傾斜で,北西部は火口瀬の連瀬沢,南東部は打当内(うつとうない)沢による浸食が進むが,全体的には山体の開析は緩慢である。外輪山は複輝石安山岩からなり,打当内溶岩,前岳溶岩,魚の子溶岩などに区分される。山頂部は高山植物群落が覆う高層湿原で,周辺にコメツガ,オオシラビソや亜高山帯落葉低木林が分布する。中腹から山麓にかけてはブナ林帯で,クマゲラが生息する。古くから阿仁地方の霊山として信仰され,修験の道場でもあり,前岳山頂には薬師信仰で知られる森吉(八幡)神社の奥宮がある。近世には杉,ブナなどの産地として秋田藩が重視し,阿仁鉱山に製錬用の焼木や坑内照明用のともし竹を供給した。一帯は県立自然公園に指定されている。
執筆者:北条 寿
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
秋田県中北部、北秋田市の森吉地区と阿仁(あに)地区の境界にある山。標高1454メートル。出羽山地(でわさんち)北部に位置する楯状火山(たてじょうかざん)。頂上に直径約3キロメートルのカルデラがある。第一次旧火口は馬蹄(ばてい)形に北方に開き、連瀬(れんぜ)沢の火口瀬が北流する。標高1100メートル以上はアオモリトドマツ、山麓(さんろく)一帯はブナの原生林が多い。森吉山県立自然公園に指定され、県の名勝・天然記念物の「小又峡(こまたきょう)」や国指定天然記念物「桃洞・佐渡の杉原生林(とうどうさどのすぎげんせいりん)」があり、1975年(昭和50)にはクマゲラの生息が確認された。登山コースは秋田内陸縦貫鉄道阿仁前田駅からバスと徒歩による4時間行程などがある。また、阿仁ゴンドラを利用して山頂に至るコースもある。2004年(平成16)には貴重な野生鳥獣の環境保全を目的とした森吉山野生鳥獣センターが開館した。
なお、阿仁地区の住民は古来この山を深く信仰し、旧暦4月8日には大ぜいで登山しモロビ(アオモリトドマツ)を持ち帰り、親族か知己に配る風習がある。山や鉱山に入るときモロビを焼いて災難除(よ)けとする。
[宮崎禮次郎]
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