山火事(読み)ヤマカジ

デジタル大辞泉 「山火事」の意味・読み・例文・類語

やま‐かじ〔‐クワジ〕【山火事】

山で起きた火事山焼け山林火災
[類語]火事火災火難出火失火炎上大火小火ぼや小火しょうか自火近火急火怪火不審祝融しゅくゆう回禄かいろく大火災大火事火の海焼失焼亡焼尽丸焼け半焼け全焼半焼火元火の元類焼貰い火延焼飛び火引火猛火火の手下火鎮火消火火消し消防火事場焼け跡

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精選版 日本国語大辞典 「山火事」の意味・読み・例文・類語

やま‐かじ‥クヮジ【山火事】

  1. 〘 名詞 〙 山で起きた火事。山焼け。山び。山燃え。《 季語・冬 》
    1. [初出の実例]「赤城山なア、山火事だんべい」(出典:田舎教師(1909)〈田山花袋〉二三)

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改訂新版 世界大百科事典 「山火事」の意味・わかりやすい解説

山火事 (やまかじ)
forest and wilderness fire

森林火災林野火災ともいい,森林,牧野,原野の火災をいう。農作業のたき火,ハイカーのタバコ,造林のための火入れなど,ほとんどが人為的な原因でおこる。また,昔多かった機関車からの飛火にかわって,自動車から捨てられたタバコによる火災が増している。季節的には,地表物が枯死して乾燥している時期が危険性が高く,四国,九州では3月,関東以南で4月,関東以北と北海道では5月に最も多い。出火しやすい時間は10時から16時の間である。これは日中は夜間より湿度が低く,また風が強くなる点に原因がある。湿度50~60%では,燃えやすいものだけが燃え,延焼する速度は遅い。40~50%では早く燃え広がることもあり,30~40%で延焼速度は大きくなり警戒を要する。30%以下では消火は困難になる。火災の種類は,大別して地中火地表火樹冠火樹幹火の4種がある。地中火は,北海道の泥炭層にまれに見られるもので,燃焼速度は遅いが消えにくい。地表火は,枯れ草,低木,落葉などが燃えるものである。燃焼速度は4~7km/h程度である。湿度が低く,風が強いと地表火は勢いがついて樹冠に燃え移ることが多い。樹冠火は,針葉樹で発生しやすい。速度は地表火よりおそく,1~4km/h程度である。樹幹火は,立枯木の燃える場合が多いが,樹脂の多い生立木も地表火や樹冠火から幹に引火する。

山火事は,水の便が悪く消火活動に障害の多い場所で発生し広がるので,発生防止に重点を置く必要がある。発生防止には,乾燥時に火気の使用を禁止することが効果的である。消防法では,火災警報発令中の火の使用制限を定めており,また,乾燥期間中に限って,特定の区域内のたき火および喫煙の制限ができる。森林法では,森林内やその周辺での火入れについて事前の申請を義務づけており,許可を与える場合は,防火に必要な人員の配置と消防用具の準備,水の確保などについて指示を与える。その他の予防的措置として,防火線の設定,防火林帯の造成,幼齢林の下刈り,枝打ち,林道や歩道の整備,貯水施設の配置,入林規制,喫煙場所の設置,見張りやパトロールによる早期発見体制の確立などがある。また消防隊の編成,訓練,通報施設の整備も必要である。消火法として,土や水をかけたり,生枝や火たたきを使ってたたき消す直接消火法が使われるが,延焼速度が大きい場合は,危険で近寄れないため,延焼する方向の森林を伐採し,可燃物を取り除いて防火線を作り,この線で火を止める間接消火がおこなわれる。大火災では主として間接消火で対応するが,ときには迎え火を用いる。水以外の消火剤の例として,粉末の直接消火剤やリン酸アンモニウムと繊維素グリコール酸ナトリウム(CMC)の水溶液があげられる。後者の散布は防火線の伐開にかわる効果があり,約1日は効果が期待できるので,航空機による散布にも利用される。航空機はヘリコプターが使われるが,地上消火と併用するとひじょうに有効である。

気象災害と同様に,森林国営保険森林保護),森林災害共済,森林火災保険などへ加入すると,山火事による損害額が一定の基準にもとづいて補償される。

 内外の山火事の例としては,国内では,1961年5月に岩手県下閉伊郡で発生し,約3万haの林野を焼いた三陸大火が大きい。またアメリカでは,1871年10月にウィスコンシン,ミシガン両州で山林と原野を焼き,死者約1000人を出した山火事が有名である。
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百科事典マイペディア 「山火事」の意味・わかりやすい解説

山火事【やまかじ】

森林火災とも。森林における火災。冬〜春の乾燥期に多い。燃える部位によって地表火,樹冠火,地中火,樹幹火に大別。地表火は森林の地表をおおう雑草,低木,落葉などが燃えるもので山火事の大半はこれ。樹冠火は地表火から樹冠へ延焼したもので針葉樹林に多く発生。樹木の幹の燃える樹幹火や泥炭などが燃える地中火はまれ。発火因はたき火,タバコの不始末,火入れの延焼などの人為的なものがほとんど。オーストラリアでは乾燥による自然発火,北米のロッキー山脈などでは落雷によるものも多い。防火線や防火林の設置,森林内の清掃,火災に対する抵抗性の強い樹種の造林,巡視・取締りの強化などで予防。
→関連項目火事

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「山火事」の意味・わかりやすい解説

山火事
やまかじ
forest fire

一般に森林火災のことをさすが,消防法 (昭和 23年法律 186号) では林野火災という。燃える部位により地中火,地表火,樹冠火,樹幹火と区別する。原因には落雷,火山噴火,摩擦などによる自然的なものもあるが,大部分は人為的な失火による。特に焚火,たばこ,火入れ,炭窯などの不注意によるものが多い。 1990年の出火件数は 2858,焼損面積 1333ha,損害額4億 7000万円となっているが,損害額は焼失した林木に限られており,土壌保全や風致上の被害は含まれていない。道路網の整備,レジャー人口の増加に伴い入林者による出火の機会が増大している。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「山火事」の意味・わかりやすい解説

山火事
やまかじ

森林火災

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世界大百科事典(旧版)内の山火事の言及

【火事】より

…このようなガスによる中毒が,近年の耐火造建物火災(ホテル,デパートなど)で死者が多く出る一つの原因とされている。(2)林野火災 森林火災,山火事ともいい,次のような種類がある。(a)樹冠火(または樹梢火)は林木の樹冠が燃えるもので,スギ,ヒノキ,アカマツなど針葉樹に多く起こる。…

※「山火事」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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