漂う(読み)タダヨウ

デジタル大辞泉 「漂う」の意味・読み・例文・類語

ただよ・う〔ただよふ〕【漂う】

[動ワ五(ハ四)]
空中水面などに浮かんで揺れ動く。一つ所にとどまらずゆらゆら動いている。「波のまにまに―・う」「空を―・う雲」
あてもなくあちこち歩く。さまよう。「異郷に―・う」「他国を―・い歩く」
香りなどが風に運ばれたりしてそのあたりに満ちる。「梅の香が―・う」
ある雰囲気やけはいがそのあたりに満ちている。そのあたりに何となく感じられる。「妖気が―・う」「険悪な空気が―・う」
落ち着かない。不安定である。
「そのすぢとも見えず―・ひたる書きざま」〈常夏
ひるむ。たじろぐ。
「少しも―・はず戦ひける間、人馬共に気疲れて」〈太平記一四
[類語]浮かぶ流れる浮くたゆたう浮遊する浮流する漂流するぽっかりぷかりぷかりぷかぷかどんぶりこどんぶらこ浮き沈み浮揚舞う片片へんぺんひらりひらりひらりひらひらふわふわふわりふわっとふんわりゆらゆら

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精選版 日本国語大辞典 「漂う」の意味・読み・例文・類語

ただよ・うただよふ【漂】

  1. 〘 自動詞 ワ行五(ハ四) 〙
  2. 空中、水面などに浮かんでゆらゆらと動いている。ゆれ動いて一つ所に定まらない。
    1. [初出の実例]「国稚(わか)く浮きし脂の如くして、久羅下那州(くらげなす)多陀用弊(タダヨヘ)る時」(出典古事記(712)上)
    2. 「大空に雲は飄(タダヨ)ひ 潮分けて舟は行くなり」(出典:落梅集(1901)〈島崎藤村〉舟路)
  3. 迷い歩く。ふらふらとさまよう。うろうろする。
    1. [初出の実例]「なまうかびにては、かへりて、悪しき道にも、ただよひぬべくぞ」(出典:源氏物語(1001‐14頃)帚木)
  4. たよりなく生きる。よるべない生活をおくる。
    1. [初出の実例]「うち捨ててん後の世に、ただよひさすらへんこと」(出典:源氏物語(1001‐14頃)若菜上)
  5. 安定しないで、ふわふわしている。落ち着かないでふらふらする。よろめく。
    1. [初出の実例]「青き色紙ひとかさねに、いと草(さう)がちに、怒れる手の、そのすぢとも見えず、ただよひたる書きざま」(出典:源氏物語(1001‐14頃)常夏)
    2. 「アシガ tadayôte(タダヨウテ) ユク」(出典:日葡辞書(1603‐04))
  6. ひるむ。たじたじとなる。
    1. [初出の実例]「少も漂(タダヨ)ふ気色無して、大音声を揚て」(出典:太平記(14C後)二六)
  7. 表情や雰囲気(ふんいき)に表われる。ある感情表面にそれとなく表われる。
    1. [初出の実例]「何処ともなく零落の影が容貌の上に漂(タダヨ)ふて居る」(出典:まぼろし(1898)〈国木田独歩〉渠)

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