室町時代に一般化する下級の兵卒の総称。騎馬の侍・武者にたいして歩卒。〈討たるる侍名字七十余人,其の外雑兵数を知らず〉(《看聞御記》応永25年4月24日),〈宗徒の侍・雑兵一万ばかり討死〉(《信長公記》天正3年5月21日)というように,侍と対比して,それ以下の身分の兵の総称としてひろく用いられ,〈ざうひゃうの手にかかりて命をむなしくせん事,口惜しければ〉(《曾我物語》)というように,侍からは卑賤視された。17世紀に成立した《雑兵物語》でも〈お歴々のお侍やこなたなんど〉とか〈旦那も被官も〉というように,侍=旦那の被官つまり従者を一括して雑兵としており,そのなかには鉄砲足軽,弓足軽,弓持,鑓持(やりもち),旗差持,馬印持,玉箱持,矢箱持,沓持(くつもち),草履取(ぞうりとり),馬取,夫丸(ぶまる),並中間,若党などを含めている。
執筆者:藤木 久志
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白歯者(あおばもの)・青葉者とも。身分の低い兵卒・歩兵。雑兵の手にかかって討死するのは耐えられぬ,というように軽蔑をこめた表現で用いられることが多い。室町時代には大名などに従って戦闘に参加する雑兵の活動が目だち,戦国動乱でも大量の雑兵が戦闘に参加した。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
…1591年(天正19)の豊臣秀吉の身分統制令に〈奉公人,侍,中間,小者,あらし子に至る,去七月奥州江御出勢より以後,新儀ニ町人百姓ニ成候者在之者〉(小早川家文書)とある。戦場で土木,輜重(しちよう),炊事などの雑役に従事した雑兵であり,その身分は百姓・町人とは明確に区別されていた。江戸幕府には小石川の薬園に22人の荒子(15俵一人半扶持高,抱席,御目見以下)がおかれていた。…
…一騎打ちは往々にして組打ちによって勝負を決し,古来,功名の最たるものとされた。〈将は将をねらう〉,これが少なくとも源平時代の戦闘様式の基本であり,騎馬の士が雑兵の手にかかることは恥とされた。後世,足軽の活躍によって戦闘法に変化をきたした室町中期以後でさえ,足軽の一矢に命をおとすことは〈当座の恥辱のみならず,末代の瑕瑾(かきん)を残せる〉(一条兼良《樵談治要》)といわれた。…
…(1)日本の中世において16世紀末の兵農分離以前の兵,とくに雑兵(ぞうひよう)をいう。中世社会は兵農未分離で,武士は農村に土着し,農民もみずから武装しているのが常であり,ともに兵として徴発された。…
※「雑兵」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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