神人(じにん)(読み)じにん

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

神人(じにん)
じにん

「じんにん」とも読み、「神民(しんみん)」ともいう。中世の神社に所属した奉仕者身分。神主、禰宜(ねぎ)などの本来の神職とは区別される存在で、一般の貴族・寺院の場合の寄人(よりゅうど)にあたる。古代の神賤(しんせん)・神奴(しんど)の系譜を引くという説と、神戸(かんべ)の後身とする説がある。しかし系譜のいかんは別として、中世においては荘園(しょうえん)制(とくに寺社領荘園)の発展とともに、「(社司が)恣(ほしいまま)に賄賂(わいろ)に耽(ふけ)り、猥(みだ)りに神人を補し、或(あるい)は正員と号し或はその掖(わき)と称す」(保元(ほうげん)荘園整理令、1157)とあるように、掖=非公式成員も含めて広範な諸階層が神人化した。中央では伊勢(いせ)、春日(かすが)、日吉(ひえ)などの大社、地方でもとくに一宮(いちのみや)や、前記のような大社の末社に多数の神人が組織された。彼らは神社に上番(じょうばん)して神役を勤め、供祭物(くさいもつ)を貢進するなどの宗教的職務を有しており、その見返りとして強い宗教的、身分的特権を有していた。たとえば、他の世俗権力は、本社によって彼らの神人職が解かれない限り、拷訊(ごうじん)(拷問)や刑罰を加えることができなかった。

 また彼らは平民百姓一般にかかる課役を免れており、さらに相伝の所領への濫妨(らんぼう)を神木(榊(さかき)、竹柏(なぎ)など)を申し下して排除することができるなど、私財を神物(しんもつ)として宗教的保護の下に置くこともできた。祇園社(ぎおんしゃ)の綿座、石清水社(いわしみずしゃ)の油座、北野社の麹(こうじ)座のような中世の同職組織が、神人の組織のなかから生まれてきた理由がここにある。これらの特権を守るために、また寺社の指示によって、彼らは神宝、神輿(しんよ)、神木を先頭に立てて、強訴(ごうそ)を敢行した。このような神人の行動は、中世寺社の社会的勢力の枢軸をなすものであった。

[保立道久]

『黒田俊雄著『寺社勢力』(岩波新書)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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