胡蝶(能)(読み)こちょう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「胡蝶(能)」の意味・わかりやすい解説

胡蝶(能)
こちょう

能の曲目。三番目物。観世(かんぜ)、宝生(ほうしょう)、金春(こんぱる)、金剛(こんごう)四流現行曲。ただし金春は明治期の復曲。観世小次郎信光(のぶみつ)作。都に上った僧(ワキ、ツレ)が一条大宮の梅花に見入っていると、女(前シテ)が呼びかけて登場。自分が蝶(ちょう)の精であることを明かし、梅に縁のない身の上を嘆く。荘子(そうし)の夢のなかの胡蝶の話や、光源氏の胡蝶の舞の故事などを語って消える。後シテは、法華経(ほけきょう)の功徳で梅の花に戯れる胡蝶の精魂で、軽やかに喜びを舞う。一座の後見職にあった信光が、年少の大夫(たゆう)の練習曲として書いたとも伝える。小品の能だが澄んだ情緒をたたえる佳作である。

増田正造

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android