胡蝶・蝴蝶(読み)こちょう

精選版 日本国語大辞典 「胡蝶・蝴蝶」の意味・読み・例文・類語

こ‐ちょう ‥テフ【胡蝶・蝴蝶】

[1] 〘名〙
① 昆虫「ちょう(蝶)」の異称。《季・春》
※文華秀麗集(818)下・舞蝶〈嵯峨天皇〉「数群胡蝶乱空、雑色紛紛花樹中」
※俳諧・己が光(1692)「胡蝶にもならで秋ふる菜虫哉〈芭蕉〉」 〔荘子‐斉物論〕
② 紋所の名。蝶の形を図案化したもの。
[2]
※宇津保(970‐999頃)楼上下「四人はこてう。左右に立ち出でて、いとをかしう舞ふに」
[二] 源氏物語第二四帖の名。光源氏三六歳の三、四月。六条院での舟楽(ふながく)、歌舞、季の御読経などを背景に、玉鬘(たまかずら)の周囲に懸想人が集まり、源氏までも懸想してしまうさまを描く。玉鬘十帖の第三。
[三] 謡曲。三番目物。観世宝生・金剛流。観世小次郎信光作。旅僧が都一条大宮近くの古宮で盛りの梅をながめていると、一人の女性が現われ、自分は胡蝶の精なのだが、早春に咲く梅花にだけ縁のないのが悲しいので御僧の読経によって成仏したいと言って消える。その夜、僧の夢の中に胡蝶の精が現われ、法華妙典の功力で梅花にも縁のできたことを喜び胡蝶の舞を舞う。
[四] (蝴蝶) 小説。山田美妙作。明治二二年(一八八九発表。忠義に縛られ恋を犠牲にする平家方の女房蝴蝶と、源氏の間諜悲劇を描く。渡辺省亭の裸姿の挿画話題をよんだ。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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