精選版 日本国語大辞典「蟻」の解説
あり【蟻】
〘名〙
① アリ科に属する昆虫の総称。体色はふつう黒または赤褐色で、体長二~五ミリメートルのものが多い。頭、胸、腹部に区分され、特に胸部と腹部の間に深いくびれがある。大部分の種類では毒針はないが、蟻(ぎ)酸を放出する。地中や樹中に巣をつくり、女王アリ(雌アリ)、働きアリ、王アリ(雄アリ)などによる集団生活を営み、それぞれ分業する。女王アリ、王アリにははねがあり、羽蟻と呼ばれる。女王アリは空中での交尾後、はねは脱落し、多くの卵を産む。種類は多く、世界に広く分布。日本では約一〇〇種がみられる。〔新撰字鏡(898‐901頃)〕
※枕(10C終)四三「ありは、いとにくけれど、〈略〉水の上などを、ただあゆみにあゆみありくこそをかしけれ」
② 木材の端に、鳩尾(きゅうび)のように先を広く作った突起。他の木にはめ込んで、抜けないようにするためのもの。〔日本建築辞彙(1906)〕
③ =ありさし(蟻差)
④ 衣服の部分の名称。袍(ほう)や直衣(のうし)の下方にある、襴(らん)の左右に垂れている、耳のような部分。衽(おくみ)。
※連阿口伝抄(1366)束帯「襴の左右に耳の様なる物をばありといふ」
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