闇(読み)ヤミ

デジタル大辞泉 「闇」の意味・読み・例文・類語

やみ【闇】

1 光のささない状態。暗いこと。「闇に包まれる」
2 闇夜。
「文化五年の辰年のこんな―の晩に」〈漱石・夢十夜〉
3 思慮分別がつかないこと。「心の闇」
4 知識がないこと。
「母の言葉の放った光に我身を縈めぐる―を破られ」〈二葉亭・浮雲〉
5 先の見通しがつかないこと。「失業して前途が闇となる」「一寸先は闇だ」
6 正規の手続きによらない取引。「闇でもうける」「闇取引」
7 世人の目にふれないこと。「闇に葬る」
8 仏教で、往生の妨げとなる迷い。
9 文字が読めないこと。
「その余の文字は―なる男」〈咄・醒睡笑・三〉
10 《陰暦30日は闇夜であるところから》3・30・300など、3のつく値段のこと。雲助などが使う。
「まんだ安いなら―げんこ(=三百五十)で」〈滑・膝栗毛・五〉
[類語](1)暗闇・暗がり・真っ暗闇・夕闇・宵闇・夜陰・薄暗がり・手暗がり・暗黒/(6)もぐり・密貿易・闇取引・密輸・密輸出・密輸入・違法・不法・脱法・違反・無法・不正・非合法・無許可・無免許・無資格

あん【闇】[漢字項目]

[常用漢字] [音]アン(漢) [訓]やみ くらい
〈アン〉(「暗」と通用)
1 くらやみ。くらい。「闇夜/暁闇」
2 道理にくらい。「闇愚」
〈やみ〉「闇市/暗闇くらやみ・夕闇」

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精選版 日本国語大辞典 「闇」の意味・読み・例文・類語

やみ【闇】

  1. 〘 名詞 〙
  2. ① 光がささないで、暗い状態。くらがり。くらやみ。
    1. [初出の実例]「照る月を闇(やみ)に見なして哭く涙衣ぬらしつ干す人なしに」(出典:万葉集(8C後)四・六九〇)
    2. 「錦はる秋の梢を見せぬ哉へだつる霧のやみをつくりて」(出典:山家集(12C後)上)
  3. ② 夜、月のない暗い状態。また、その夜。特に、陰暦二〇日以後まだ月の昇らない夜、または月のない晦(つごもり)の夜。やみよ。
    1. [初出の実例]「闇夜(やみ)ならばうべも来まさじ梅の花咲ける月夜にいでまさじとや」(出典:万葉集(8C後)八・一四五二)
    2. 「夏は夜、月の頃はさらなり、やみもなほ、蛍のおほく飛びちがひたる」(出典:枕草子(10C終)一)
  4. ③ ( 暗い中ではなにも見えずに、迷うところから ) 思慮分別のなくなること。理性を失った状態。
    1. [初出の実例]「人のおやの心はやみにあらねとも子を思ふ道にまどひぬる哉〈藤原兼輔〉」(出典:後撰和歌集(951‐953頃)雑一・一一〇二)
  5. ④ 特に仏教で、さとりの開けないこと。往生の妨げとなる迷い。煩悩(ぼんのう)。
    1. [初出の実例]「君すらもまことの道に入りぬなり一人や長きやみに惑はむ〈選子内親王〉」(出典:後拾遺和歌集(1086)雑三・一〇二六)
  6. ⑤ 知識のくらいこと。物事がはっきりとわからないこと。気がつかないこと。
    1. [初出の実例]「まして大臣などの御事は、としごろやみにむかひたるに、あさひのうららかにさしいでたるにあへらん心地もする哉」(出典:大鏡(12C前)一)
  7. ⑥ 先の見通しがつかないこと。希望をもつことができないこと。方途を失うこと。
    1. [初出の実例]「一寸先は闇(ヤミ)の夜」(出典:譬喩尽(1786)一)
  8. ⑦ ( 暗い中では見ることができず、混乱するところから ) 乱れておさまらないこと。乱脈なこと。
    1. [初出の実例]「秋の月つねにかく照るものならばやみにふる身はまじらざらまし〈よみ人しらず〉」(出典:後撰和歌集(951‐953頃)秋中・三二四)
  9. ⑧ 文字を解しないこと。文字が読めないこと。
    1. [初出の実例]「南無の二字ばかりを、いかがしてか見知りたる、その余の文字は闇なる男」(出典:咄本・醒睡笑(1628)三)
  10. ⑨ 世人の目に触れないこと。表沙汰にしないこと。
    1. [初出の実例]「でなくっちゃ闇へやった子に対してもすまないと思ってゐたんだから」(出典:一兵卒の銃殺(1917)〈田山花袋〉二〇)
  11. ⑩ ( 陰暦で、月の三〇日は闇夜であるところから ) 三、三〇、あるいは三〇〇をいう馬方、駕籠舁(かごかき)などの符丁。
    1. [初出の実例]「今いふ通りだから、三百(ヤミ)で能かア遣ますべい」(出典:滑稽本・狂言田舎操(1811)上)
  12. ⑪ ( 遠くて目標をはっきり見定め難いところから ) 鉄砲を撃つ時の、百間(約一八〇メートル)の距離。
    1. [初出の実例]「昔は百間をばやみと申候て放し不レ申候」(出典:上杉家文書‐(年月日未詳)(江戸)鉄砲一巻之事)
  13. ⑫ 芝居に用いる黒幕のこと。
    1. [初出の実例]「荒海や闇を着て寐る楽屋番」(出典:雑俳・柳多留‐四二(1808))
  14. ⑬ 公定価格または正規の手続きによらないこと。闇取引をすること。また、その取引や商品、値段など。
    1. [初出の実例]「縹は古い布やヤミの薄い木綿地などを狭い部屋の中いっぱいに散りひろげて」(出典:華燭(1947)〈中山義秀〉)

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普及版 字通 「闇」の読み・字形・画数・意味

闇
常用漢字 17画

(旧字)
17画

[字音] アン
[字訓] やみ・くらい

[説文解字]

[字形] 形声
声符は(音)(おん)。〔説文〕十二上に「門を閉ざすなり」とあり、閉門の意とするが、閉門には閉の字があり、に従うこの字には別の義があるべきである。は言(祝詞)が音を発する意で、神の「音なひ」を示す。門は門。祭祀は夜行われ、門に祝詞をおいて、神の訪れを待った。

[訓義]
1. やみ、くらがり、くらい。
2. とざす、おおう。
3. 暗・陰と通用し、日食・月食をもいう。

[古辞書の訓]
〔名義抄〕闇 クラシ・ヤミ・ソラニ・オボツカナシ 〔字鏡集〕闇 ヤミ・クラシ・ヲボツカナシ・カスカナリ・ハルカナリ・ソラニ・カドドヅ

[語系]
闇・(暗)m、am、em、陰im、隱(隠)inは声義近く、みな、閉ざされて明らかでない意がある。

[熟語]
闇▶・闇闇▶・闇解▶・闇▶・闇虚▶・闇行▶・闇香▶・闇合▶・闇忽▶・闇室▶・闇弱▶・闇主▶・闇誦▶・闇浅▶・闇然▶・闇惰▶・闇鈍▶・闇▶・闇昧▶・闇乱▶・闇劣▶・闇練▶・闇廬▶・闇陋▶・闇惑▶
[下接語]
陰闇・久闇・虚闇・狂闇・愚闇・昏闇・至闇・室闇・塵闇・闇・煩闇・服闇・闇・幽闇・柳闇・梁闇・諒闇

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

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