精選版 日本国語大辞典 「案」の意味・読み・例文・類語
あん【案】
〘名〙
※後二条師通記‐寛治二年(1088)四月一七日「小将書初、敷二左右座一枚一、横有レ座、有レ案」
※延喜式(927)一一「凡御体卜者、神祇官中臣率二卜部等一〈略〉神祇副若祐、持二奏案一、進二大臣一」
※伊勢物語(10C前)一〇七「かのあるじなる人、あんを書きて、かかせてやりけり」
③ 控え書き。留め書き。
※令義解(718)公式「凡案成者。具条二納目一」
※栄花(1028‐92頃)初花「さ思はせんとたばかりたる事なれば、案にははかられにけり」
※浄瑠璃・頼光跡目論(1661‐73頃)五「あん深き剛のものなれば」
あん‐・ずる【案】
〘他サ変〙 あん・ず 〘他サ変〙
① あれこれと考えをめぐらす。心中いろいろと考える。「一計を案ずる」
※竹取(9C末‐10C初)「これを、この頃安ずるに」
※中務内侍(1292頃か)弘安七年七月五日「そらおそろしくあんせられて」
③ はっきりしない点を問いただす。調べる。
あん・じる【案】
〘他ザ上一〙 (サ変の「案ずる」が上一段活用に転じた語。近世以降に見られる)
① =あんずる(案)①
※俳諧・三冊子(1702)白双紙「切字をいるる事を案じられし傍にありて」
② =あんずる(案)②
※浄瑠璃・心中宵庚申(1722)中「身のおとろふる程いやましに案じらるるは子の身の上」
あん‐じ【案】
〘名〙 (動詞「あんず」の連用形の名詞化)
① 思案。計画。工夫。
※咄本・春袋(1777)水馬「その時は、とふ云あんじだろう」
② 心配。懸念。恐れ。
※浄瑠璃・仮名手本忠臣蔵(1748)二「たがいふとなくお耳に入それはそれはきついお案(アン)じ」
あ【案】
〘名〙 (「あん」の撥音が表記されなかったもの) 前もって考えていたこと。予想。あん。
※源氏(1001‐14頃)若菜下「あのごとく桐壺の御方より伝へて聞こえさせ給ひければ」
あん‐・ず【案】
〘他サ変〙 ⇒あんずる(案)
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