越える(読み)コエル

デジタル大辞泉 「越える」の意味・読み・例文・類語

こ・える【越える/超える】

[動ア下一][文]こ・ゆ[ヤ下二]
(越える)物の上・間・境界などを通り過ぎて、向こうへ行く。「打球フェンスを―・える」「山を―・え、また谷を―・える」「海を―・えてきた便り」「国境を―・える」
(越える)区切りとなるある日時が過ぎる。時を経過する。「―・えて翌年の春を迎える」「よわい八〇を―・える」
ある基準・数量を上回る。超過する。「四万人を―・える観衆」「危険水位を―・える」
地位・段階などで、順序をとばして先になる。飛びこす。「先輩を―・えて重役になる」
他のものよりすぐれる。ぬきんでる。「力量が衆を―・えている」
ある考えや主義にとらわれず先に進む。また、ある基準・範囲の外まで出る。超越する。「互いに立場を―・えて手を結ぶ」「想像を―・える」「常識を―・える」
規則やきまりに外れる。「のりを―・えず」
[類語](1越す過ぎる渡る通り越すまたぐ越境する踏み越える超す追い越す追い抜く行き過ぎる/(3越す上回るみ出す超過する突破するオーバーする超越する過剰/(5抜くしの凌駕りょうがする勝る

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「越える」の意味・読み・例文・類語

こ・える【越・超・踰】

  1. 〘 自動詞 ア行下一(ヤ下一) 〙
    [ 文語形 ]こ・ゆ 〘 自動詞 ヤ行下二段活用 〙
  2. 山、峠、谷、川、溝、関所など、障害となるものを通り過ぎて向こうへ行く。その上空を過ぎて行く場合にもいう。
    1. [初出の実例]「梯立のさがしき山もわぎもこと二人古喩例(コユレ)ば安席(やすむしろ)かも」(出典日本書紀(720)仁徳四〇年二月・歌謡)
    2. 「風にたへず、吹き切られたるほのほ、飛ぶが如くして一二町をこえつつ移りゆく」(出典:方丈記(1212))
  3. ( 「年が越える」などの形で ) 年が二年以上にわたる。また、区切りとなるある日時が過ぎる。その時を経過する。
    1. [初出の実例]「つかはしし人は、夜昼待ち給ふに年こゆるまで音もせず」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
  4. 数量がある程度以上になる。
    1. [初出の実例]「狭きは則ち一里を踰(コエ)ず」(出典:大唐西域記巻十二平安中期点(950頃))
  5. ある範囲や限界内にとどまらず、その外へ出る。
    1. [初出の実例]「彼等の個性や才能を超えた問題として」(出典:古典と現代文学(1955)〈山本健吉〉抒情詩の運命)
    2. 「現実はやはり想像を越えていた」(出典:方丈記私記(1970‐71)〈堀田善衛〉三)
  6. 位、段階など、順を追わないで間を飛んで上に進む。また、他の人を抜いて上の地位になる。
    1. [初出の実例]「昨日けふの若人どもに多くこえられて」(出典:落窪物語(10C後)四)
  7. 他よりすぐれる。ぬきんでる。まさる。
    1. [初出の実例]「いみじきことを思ひ給へ歎く心は、さるべき人々にもこえて侍れど」(出典:源氏物語(1001‐14頃)柏木)
    2. 「身は畜生にて有ながら智恵人間にこえたれば」(出典:浄瑠璃・出世景清(1685)四)
  8. 規則にそむく。規則にはずれる。
    1. [初出の実例]「ノリヲ coyuru(コユル)」(出典:日葡辞書(1603‐04))

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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