獅子・師子(読み)しし

精選版 日本国語大辞典 「獅子・師子」の意味・読み・例文・類語

し‐し【獅子・師子】

[1] 〘名〙
ライオン。古来百獣の王とされ、東アジアでは、これをもとにした想像上の動物が考えられていた。
※観智院本三宝絵(984)上「山に一の師子有き、堅誓師子と名(なづ)けき」 〔大智度論‐二〕
② (①を獣中の王とするところから) 仏語。仏のたとえ。
※三代格‐二・貞観一八年(876)六月一五日「応延暦寺文殊影嚮楼護聖朝事〈略〉師子御者化現文殊丈夫立像一躯〈高五尺三寸〉」 〔無量寿経‐上〕
③ 「ししまい(獅子舞)①」の略。
※枕(10C終)二七八「おはしまし着きたれば、大門のもとに高麗・唐土の楽して、しし狛犬(こまいぬ)をどり舞ひ、乱声(らんじゃう)の音、皷(つづみ)の声にものもおぼえず」
④ 「ししまい(獅子舞)②」の略。
⑤ 「ししがしら(獅子頭)①」の略。
法隆寺伽藍縁起并流記資財帳‐天平一九年(747)「伎楽壱拾壱具 師子弐頭〈五色毛在袴四腰〉」
⑥ 江戸時代、「除夜獅子」といって大晦日の夜に獅子舞扮装(ふんそう)をして、門毎に物ごいをして歩く者。
※談義本・風流志道軒伝(1763)二「義太夫ぶしの五段目、大三十日までかたりつめては、八人芸でも間に合はず、そりゃ獅子も浮いて来ず」
⑦ 昔、高麗から伝来したといわれる、①に似た獣の像。木、石、金属などで作り、狛犬(こまいぬ)と対にして神社の社殿や社頭の左側に置かれ、魔よけとした。また、宮中では鎮子(ちんし)として用いられた。
※枕(10C終)二七八「御しつらひ、しし・狛犬など、いつのほどにか入りゐけんとぞをかしき」
⑧ 江戸時代に流行した中将棋(ちゅうしょうぎ)の駒の一つ。
※俳諧・西鶴大矢数(1681)第三「始末して居喰に暮す山の奥 隙ならさそう獅子の勢い」
能楽石橋(しゃっきょう)」などの獅子舞の部分の囃子(はやし)の名前。秘曲に属するが、歌舞伎囃子でも踏襲。
[2] (師子) 伎楽で最初に演奏する曲。
[語誌](1)中国・日本にライオンは生息しないので、獅子の概念は、西方からのものと考えられ、日本では空想上の動物であった。日本にライオンが来たのは慶応二年(一八六六)とされる。
(2)百獣の王として王者の象徴と考え、仏教では人の王である仏の象徴とした。「漢書西域伝・上」には烏戈山離国に師子がいることが、「後漢書‐西域伝」には、安息国から章帝の章和元年(八七)に師子を献じたことが見える。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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