上流部は数百万年前まで準平原地形となっていたが、一連の造山運動により隆起し、これを再び河川が浸食して峡谷が形成された(→黒部峡谷)。宇奈月町宇奈月から上流の同町
「源平盛衰記」「義経記」に四十八箇瀬・黒部四十八箇瀬として登場している。当川は乱流するだけではなく枝川が多いため、古くからこの名があった。正保四年(一六四七)の「越中道記」には黒辺川とみえる。急流のために鉄砲川の異名ももつ(黒部市誌)。近世には北陸の七大河川の一つに数えられた(増補大路水経)。「越中道記」には
出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報
富山県東部を流れる川。延長85キロメートル、流域面積682平方キロメートル。一級河川。北アルプス中央部の鷲羽(わしば)岳(2924メートル)と祖父(じい)岳(2825メートル)との間に源を発し、雲ノ平(くものたいら)の溶岩台地を迂回(うかい)して薬師(やくし)沢をあわせたあと峡谷状となる。右岸から岩苔(いわごけ)小谷をあわせ、薬師岳と赤牛岳との間では「上廊下(かみのろうか)」となり、右岸から直線状の東沢谷をあわせた下流で川幅をやや広くし、立山(たてやま)直下で左岸に御山谷、御前(ごぜん)沢をあわせる。この付近に黒部ダムがあり、黒部湖となっている。黒部ダム下流では、立山側より内蔵ノ助(くらのすけ)沢、別山沢をあわせるが、川幅がいっそう狭くなって「下廊下(しものろうか)」となる。黒部川の支流は、この廊下地帯でいずれも滝となって落下し、合流する。ことに十字峡では、剱(つるぎ)沢と棒小屋(ぼうごや)沢が本流と十字形に滝となって、合流している。これより下流右岸で祖母谷(ばばだに)、黒薙(くろなぎ)川などの黒部川の大支流をあわせて黒部市宇奈月(うなづき)地区に至り、同地区愛本(あいもと)を頂点に典型的な大扇状地を形成して、日本海に注ぐ。
黒部川の電源開発は、水量が豊富で、河床勾配(こうばい)が大きく高落差に恵まれているため、大正末年から調査され、下流から1924年(大正13)柳河原(やなぎがわら)発電所(黒部川第一、5.4万キロワット)が建設されて以来、上流の猫又(ねこまた)に黒部川第二(7.2万キロワット)、欅平(けやきだいら)に黒部川第三(8.1万キロワット)、さらに上流で黒部川第四(地下、33.5万キロワット)が完成。それと同時に、欅平で新黒部川第三(10.5万キロワット)、猫又で新黒部川第二(地下、7.4万キロワット)の各発電所が相次いで完成し、京阪神へ送電されている。また、宇奈月温泉下流に愛本発電所(3.1万キロワット)があり、平野部に段丘崖(がい)を利用した低落差の6発電所(北陸電力所属)がある。音沢発電所(12.4万キロワット)が1985年10月、宇奈月発電所(2万キロワット)が2000年(平成12)5月完成。全体で最大発電量92.59万キロワットとなった。
[深井三郎]
『深井三郎著『黒部とその山々をゆく』(1968・古今書院)』▽『深井三郎著『とやまの水』(1985・北日本新聞社)』
富山県東部の川。源流から河口まで富山県内を流れる。幹川流路延長85km,全流域面積682km2の中級河川ではあるが,北アルプス(飛驒山脈)の北部,立山連峰と後立山連峰の間を縦谷を形成して流れるため,日本で最も深い峡谷となり,黒部峡谷と呼ばれる。源流は北アルプス中央部の鷲羽(わしば)岳(2924m)と祖父岳(2825m)との間に発し,雲ノ平の溶岩台地を迂回して薬師沢,岩苔小谷をあわせ,薬師岳東側直下を流れて〈上ノ廊下〉といわれる峡谷を形成し,東岸より直線状の東沢谷を合流して黒部ダムで生じた黒部湖に流入する。ダムより下流は立山側より西岸から内蔵ノ助谷,別山谷,劔沢が合流する。ここで後立山の鹿島槍ヶ岳から流れる棒小屋沢と十字峡の景勝地をつくった後,〈下ノ廊下〉の峡谷を形成する。さらに北へ下って東岸から祖母谷および黒薙川を合流して愛本に至り,ここから下流は典型的な扇状地(富山平野北東部)を形成して日本海に注ぐ。
黒部川の電源開発は大正末に愛本下流で農業用水を利用した低落差の発電所が建設されたことで始まり,上流峡谷内の開発は大きな河床こう配と豊富な水量に着目されて下流から上流に向かって始まった。1927年日本電力によって峡谷内の断崖を開削し軌道を敷設して輸送路をつくり,柳河原発電所(5.4万kW)が建設され,36年に上流猫又に黒部川第2発電所(7.2万kW)が完成した。この後愛本発電所(2.97万kW)が県営で建設された。日本電力の電源開発はさらに上流に進み,高熱隧道(ずいどう)の掘削で悩まされ,志合谷の表層雪崩で多くの人命を失ったが40年11月に欅平(けやきだいら)で黒部川第3発電所(8.1万kW)が完成した。第2次世界大戦後の48年,黒薙第2発電所が完成し,電力再編成で関西電力が引き継いだ。黒部ダム,黒部川第4(黒4(くろよん))発電所(33.5万kW)の建設は,ダム建設に先だつ輸送ルートの大町トンネルの大湧水で難航し,発電所,変電所,開閉所の地下大空洞の掘削や黒部トンネルの掘削など多方面からの大工事の末に,ようやく63年に完工した。それと同時に下流では黒4発電所の排水により欅平で新黒部川第3(10.5万kW)と猫又の地下に新黒部第2(7.4万kW)が完成した。黒部川には愛本より上流で10発電所(関西電力),下流で6発電所(北陸電力)合計約90万kW(1997)を発電し,関電分は京阪神へ送電される。1985年宇奈月町音沢(現,黒部市)に音沢発電所(12.4万kW)が完成した。
執筆者:深井 三郎
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