球根(読み)きゅうこん

精選版 日本国語大辞典 「球根」の意味・読み・例文・類語

きゅう‐こん キウ‥【球根】

〘名〙 多年生植物にみられる、養分を貯えて球状または塊状となった地中にある根、茎、葉などの総称。形態学的にはユリの鱗茎(りんけい)フリージアの球茎、ダリアの塊根、シクラメンの塊茎、アイリスの根茎のほかヤマノイモの側扁生長した側枝などが含まれる。〔博物図教授法(1876‐77)〕

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デジタル大辞泉 「球根」の意味・読み・例文・類語

きゅう‐こん〔キウ‐〕【球根】

植物で、球状または塊状の地下茎や根。栄養分を蓄えて多肉になったもので、栄養繁殖をする。スイセン鱗茎りんけいサフラン球茎シクラメン塊茎ショウブ根茎ダリア塊根など。
[類語]根っこ根もと根方主根側根髭根根毛百合根蓮根

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改訂新版 世界大百科事典 「球根」の意味・わかりやすい解説

球根 (きゅうこん)

多年生植物が,気温,地温,水分の過不足,日照時間の長短など環境の支配を受けて,地下に養分を蓄積して休眠状態に入るとき,球状,塊状,いも状になった器官を球根といい,球根をつくる植物を園芸では広い意味で球根植物と呼んでいる。一般にユリ科,ヒガンバナ科,アヤメ科などの単子葉植物が多いが,双子葉植物のキク科,カタバミ科,キンポウゲ科などにも見られる。球根はそれを形成する器官のいかんによって次のように呼ばれる。(1)鱗茎bulb 地下の短縮した茎に肥厚した葉がついているもの。チューリップ,スイセン,アマリリス,ユリ,ダッチ・アイリスなど。(2)球茎corm 地下の茎が肥大して球状となり,葉が変形した皮に包まれているもの。グラジオラスクロッカス,フリージア,バビアナなど。(3)塊茎tuber 地下の茎に養分を蓄えて肥厚し塊状となったもの。シクラメン,カラジウムグロキシニア,アネモネなど。(4)塊根tuberous root 根に養分を蓄えていも状に肥厚したもの。ダリア,ラナンキュラスなど。(5)地下茎rhizome 地下茎そのものが養分を蓄えて肥厚したもの。カンナ,ジンジャー,ジャーマン・アイリスなど。

 園芸では,球根植物は球根を植えつける時期によって,次のように分けられる。(1)春植球根 気温,地温が上昇してくるころに植えつけるカンナ,ダリア,グロキシニア,グラジオラスなど耐寒性にとぼしい植物。(2)秋植球根 気温,地温が低下してくるころ発根,生育がはじまるチューリップ,スイセンなど耐寒性の強い植物。ただし,フリージア,球根カタバミのように厳しい寒さには耐えないものもある。

 球根植物は生育の終わったとき,作業上の便宜と増殖の目的で掘り上げて次期まで貯蔵するが,春植球根は凍らないように保温をはかり,秋植球根は涼しい場所で乾燥しておく。球根の繁殖は自然に分球するものを分けるのが普通であるが,ヒアシンス,アマリリスのように母球を切断するか,切傷をつけて人為的に子球を発生させる方法もとられる。
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百科事典マイペディア 「球根」の意味・わかりやすい解説

球根【きゅうこん】

多年生植物の地下にある一種の栄養貯蔵器官で,休眠期の芽を保護する。単子葉植物に多い。多くは肉状で,その形態によって鱗茎(ユリカタバミ),球茎(フリージア),塊茎(カラー),根茎(カンナ),塊根(ダリア)に分けられる。また植付け時期によって春植え球根と秋植え球根に分けるが,生育期間によっては実際には夏植えになるものもある。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「球根」の意味・わかりやすい解説

球根
きゅうこん

植物体の一部が地下で養分を貯蔵して多肉化し、冬期または乾期のような生育に不適当な季節をしのぐための役をするもの。多くの場合は栄養繁殖の役をもする。植物学用語というよりは園芸で用いられる語であり、植物学上はいくつかの範疇(はんちゅう)に分けられる。スイセン、チューリップなどでは鱗茎(りんけい)、グラジオラス、クロッカスなどでは球茎、シクラメン、グロキシニアなどでは塊茎(かいけい)、カンナ、ジャーマンアイリスなどでは肥大した根茎、ダリアなどでは塊根がそれぞれ球根とよばれる。

[福田泰二]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「球根」の意味・わかりやすい解説

球根
きゅうこん

多年草の地下に生じる球状の栄養増殖器官の園芸上の総称で,次のような各種のものを含む (→ ) 。 (1) 鱗茎  bulb 短い地下茎の周囲に養分をたくわえて多肉化した鱗片葉が密着するもの。ユリ,チューリップなど。 (2) 塊茎  tuber 地下茎が肥大し,ところどころに芽をつけるもの。ジャガイモなど。 (3) 球茎  corm; solid bulb 茎の基部が球状になり,その芽が変態した薄い葉鞘をつけるもの。グラジオラス,クワイなど。 (4) 塊根  tuberous root 根に養分がたくわえられ肥大したもの。ダリアなど。 (5) 偽鱗茎  pseudobulb 葉柄や短枝が肥大して茎を包むもの。カトレヤなど。 (6) 根茎  rhizome 横にはう地下茎で節があるもの。カンナなど。

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知恵蔵 「球根」の解説

球根

チューリップやスイセン、ユリなど地下器官の一部が膨れ、貯蔵器官になったもの。単子葉植物に多く見られる。園芸的には、鱗茎(りんけい)(茎の周囲に肉厚の葉が重なったもの)や根茎(こんけい)(地下茎が肥大して養分の貯蔵器官になったもの)、塊茎(かいけい)(茎の基部または地下茎の先端が球状または塊状に肥大して養分の貯蔵器官になったもの)などを含めて取り扱うことが多い。オランダなど生産国からの輸入が円滑に行われるようになってから、輸入量は増大し、各家庭でも球根の使用量が増大している。

(森和男 東アジア野生植物研究会主宰 / 2007年)

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世界大百科事典(旧版)内の球根の言及

【花卉市場】より

…花卉は一般には花の咲く草本を意味するが,園芸作物として花卉という場合は,観賞用に栽培する切花(切葉,切枝を含む)類,鉢物類,花壇用苗物類,球根類,花木類,芝類をさす。本項では,この意味での花卉の生産,流通・貿易を取り上げる。…

【休眠】より

…休眠する発育段階は種により一定していて,内分泌機構(脳・前胸腺・アラタ体など)によって調節されている。【正木 進三】
[植物の休眠]
 植物では種子,休眠芽,球根,胞子に休眠現象がみられる。種子はふつう成熟と同時に休眠状態に入り,外側を固い種皮によって保護される。…

※「球根」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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