御許(読み)オモト

デジタル大辞泉 「御許」の意味・読み・例文・類語

お‐もと【許】

[名]
女性が使う脇付わきづけの一。おんもと
御座所。また、貴人のおそば
「―にさぶらふ人の中に、内侍仕うまつるべき人はありや」〈宇津保・内侍督〉
御許人おもとびと」の略。
「ただ我どちと知らせて、ものなど言ふ若き―の侍るを」〈夕顔
女房の呼び名などの下につけて用いる敬称
「大式部の―」〈紫式部日記
[代]二人称人代名詞。主として女性、特に女房を親しんでいう語。
「―だに物し給はば、何かさらむ」〈宇津保・内侍督〉

おん‐もと【御許】

貴人の居場所を敬っていう語。おもと。みもと。
(多く「おんもとに」「おんもとへ」の形で)おそばまでの意で、女性が手紙脇付わきづけに用いる語。
[類語]侍史机下台下足下座右硯北膝下玉案下御前

み‐もと【許】

相手を敬って、そのそば近くをいう語。女性が手紙の脇付に用いることもある。おもと。おんもと。「鈴木様御許に」
「―に候はばやと」〈末灯鈔

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「御許」の意味・読み・例文・類語

お‐もと【御許】

[1] 〘名〙 (「お」は接頭語)
天皇や貴人の御座所を敬っていう語。
※書紀(720)皇極四年六月(岩崎本訓)「入鹿、御座(オモト)に転(まろ)び就きて、叩頭(の)むで曰(まう)さく」
② (天皇や貴人の御座所に仕える「おもと人」の意から) 女性、特に女房を親しみ敬って呼ぶ語。
※宇津保(970‐999頃)俊蔭「見る人いだきうつくしみて、『親はありや。いざわが子に』といへば、『いな、おもとおはす』とて更に聞かず」
③ (「…のおもと」の形で) 女房などの名前、または職名の下につけて呼ぶ敬称。
落窪(10C後)三「三の君の御方に、典侍(すけ)の君、大夫(たいふ)のおもと、下仕まろやとて、いと清げなる物の」
[2] 〘代名〙 対称。多く、女性に対して敬愛気持から用いる。代名詞「あ」「わ」と結び付いた「あがおもと」「わがおもと」という形もある。
※宇津保(970‐999頃)内侍督「何を賭けべからん。正頼、娘ひとり賭けん。をもとには何をか賭け給はんずる」

おん‐もと【御許】

〘名〙 (「おん」は接頭語)
① 貴人の居所。貴人のそば。おもと。みもと。
源氏(1001‐14頃)乙女「宮の御もとへ、あいなく心憂くて参り給はず」
② (多く「おんもとに」「おんもとへ」の形で) おそばまでの意で、手紙の脇付けに書く語。主として女性が用いる。
※通俗書簡文(1896)〈樋口一葉〉唯いささか「脇づけ あて名の傍(そば)へは、人により処(ところ)により、御前(おんまへ)に、御許(オンモト)に、人々申給へ〈略〉など書くべし」

お‐ゆるし【御許】

〘名〙 (「お」は接頭語。「おゆるしなされ」「おゆるしあれ」などの略)
① 許してほしいと頼むときに言うことば。ごめん下さい。お許し下さい。
※洒落本・聖遊廓(1757)「おさかづきはいただきますが、御酒は今のじゃ、おゆるしおゆるししたが」
② 他の人のいる部屋などにはいるときに言うことば。ごめん。
※洒落本・色深睡夢(1826)下「もし、おゆるしと襖を少しあけて」

ご‐ゆるされ【御許】

〘名〙 (「ご」は接頭語)
① 御赦免。→ゆるされ
※バレト写本(1591)「ヲモキ トガノ goyurusare(ゴユルサレ) ヲ コムルベキ ヲン ワビコト」
② 拒否する気持を表わす語。御免。
※咄本・今歳咄(1773)葬「おれさへまだ手も通さぬものを、女郎買にでも行なら借もしよふが、とふらいには、ごゆるされだ」

み‐もと【御許】

[1] (「み」は接頭語) 神仏や天皇など、貴人のいる所。また、そのそば近くを尊んでいう語。
※地蔵十輪経元慶七年点(883)一「仏世尊の所(ミモト)
[2] 〘代名〙 対称。あなた。おもと。
※催馬楽(7C後‐8C)朝津「この 仲人たてて 美毛(ミモ)とのかたち 消息し 訪ひに来るや さきむだちや」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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