ウミスズメ

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ウミスズメ」の意味・わかりやすい解説

ウミスズメ

(1) Synthliboramphus antiquus; ancient murrelet チドリ目ウミスズメ科全長 25cmの海鳥。冬羽(→羽衣)では頭上が黒褐色,背が灰色,胸から腹が白色である。夏羽では眼の後方に白線が出る。無人島などの草地に掘った穴や岩の間に営巣する。高く飛ぶことはなく,常に海面すれすれに低く飛び,で推進力を得て巧みに潜水し,小魚やプランクトンをとる。日本の北部からカムチャツカ半島アリューシャン列島アラスカ半島西部,北アメリカの太平洋沿岸に繁殖分布する。冬季は繁殖地に加え,一部が南下して朝鮮半島やカリフォルニアまで分布を広げる。日本では北海道本州北部の島に少数が繁殖するが,冬季は本州中部から九州地方沿岸まで南下する。
(2) Alcidae; auks チドリ目ウミスズメ科の鳥の総称。全長 15~45cmで,絶滅したオオウミガラスを含むと 11属 25種からなる。全身の羽色は黒褐色か黒褐色と白色のものが多いが,一部の種では灰青色や黄白色である。また,生殖羽の時にだけや頭部に美しい突起物や飾り羽を生じる種もいる。胴体は太く,全体にずんぐりしている。すべて北半球の北部海域に生息し,潜水してイカや魚類,甲殻類,プランクトンなどをとる。潜水時は翼で推進力を得,蹼(みずかき)で舵をとる。繁殖期以外に上陸することはない。日本近海にはヒメウミスズメ Alle alleウミガラス,ハシブトウミガラス Uria lomviaウミバトケイマフリウトウツノメドリエトピリカマダラウミスズメ Brachyramphus marmoratus,ウミスズメ,カンムリウミスズメ,エトロフウミスズメ Aethia cristatella,シラヒゲウミスズメ A. pygmaeaコウミスズメ A. pusillaウミオウムの 15種が分布し,うち 7種が繁殖している。なお,(2)のうち特に全長 20~25cmの小型のものにかぎってウミスズメということもある。日本近海に分布する種では,上記のうちマダラウミスズメ以下の 7種がこれに相当する。

ウミスズメ
Lactoria diaphana

フグ目ハコフグ科の海水魚。全長 30cm。体は硬い箱状の甲板に覆われ,鰭,顎,尾部のみを動かすことができる。体はやや透きとおり,腹部半透明。眼の前上方にとげがある。腹側隆起の後端は鋭いとげとなる。茨城県以南,インド・西太平洋域に分布する。

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改訂新版 世界大百科事典 「ウミスズメ」の意味・わかりやすい解説

ウミスズメ (海雀)

チドリ目ウミスズメ科Alcidaeに属する小型~中型の海鳥の総称,またはそのうちの1種を指す。おもに北大西洋およびベーリング海に分布する。世界で約20種が知られる。日本から14種の記録があり,そのうち日本で繁殖するものは7種で残りの7種は冬鳥である。この科の鳥は太ってまるっこい体つきをしたものが多く,くちばしも短い種が多いが,左右に平たいものや特殊な形のものもいる。繁殖期にはくちばしに付属物をもつ種も多い。足には水かきがある。体の色は上面が黒く下面は白色または淡色で,繁殖期には顔に白い飾羽が生ずるものが少なくない。海上で生活し,じょうずに泳ぎ,潜っては魚やイカをあさる。飛び立つときには水面を足でけって助走をし,海面低くを飛ぶ。大型の種が群れで飛ぶときには縦隊を組む。島や海岸の断崖に集団で繁殖し,岩の上に直接卵を産むものと斜面に穴を掘ってその中に産卵するものとがある。1腹の卵数は1~2個。卵はヨウナシ形で,鳥の体に比べると大きい。雌雄とも抱卵し,雛の世話も雌雄でする。雛は綿羽に包まれ,皮下脂肪が豊富で太っている。

 日本ではウミガラスケイマフリ,マダラウミスズメ,ウミスズメ,カンムリウミスズメ,ウトウエトピリカの7種が繁殖し,カンムリウミスズメを除いた6種の繁殖地は北日本に限られている。カンムリウミスズメだけは暖流海域に限って生息している。冬鳥としてはハシブトウミガラス,ウミバト,エトロフウミスズメ,シラヒゲウミスズメ,コウミスズメ,ウミオウムツノメドリの7種が渡来するが,これらもほとんど日本北部の海上に生息している。

 ウミスズメSynthliloramphus antiquus(英名ancient murrelet)は朝鮮半島,アムール河口,サハリン,北部日本,千島列島,アレウト列島,アラスカ南部で繁殖し,冬は南へ移動する。日本では本州北部以北で繁殖し,冬は本州以南の海上でもふつうに見られる。全長約25.5cm。くちばしは短くてやや太い。夏羽では頭部は黒く,眼の後方の上から白い線が走り,体の上面は灰青色,胸から腹は白い。後頸(こうけい)には白い絹のような羽毛が生える。冬羽ではのどが白くなり,絹のような羽毛はなくなる。北海道天売(てうり)島と岩手県三貫島が繁殖地として著名である。草地に掘った浅い穴の中や岩の隙間の地上に1腹2卵を産む。抱卵日数は32~33日。秋冬には数羽から十数羽の群れで海上で生活し,水に潜って魚を食べる。舟が近づくと潜って逃げることが多い。チッチッと鳴く。
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百科事典マイペディア 「ウミスズメ」の意味・わかりやすい解説

ウミスズメ

ウミスズメ科の鳥。翼長13.5cm。北米北西部,ベーリング海,アムール,朝鮮半島沿岸に分布。日本では北海道天売島などで繁殖し,冬は全国の海上に多い。魚を捕食。絶滅危惧IA類(環境省第4次レッドリスト)。近縁種に数種あり,カンムリウミスズメは日本近海の固有種で,宮崎県枇榔島などは繁殖地として著名。天然記念物。絶滅危惧II類(環境省第4次レッドリスト)。

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