大学教育におけるクラス編成の一形態。略してゼミともいい、英語ではセミナー。日本では演習とよぶ。研究ないしは高度な学習に従事する少人数の学生が、1人ないしは複数の大学教員の一般的な指導の下に、専門的な相互に関心のある問題について深く研究する授業で、学生がその特定のテーマについて独創的な研究報告をし、それに基づいて全員で討議をするのが一般的である。日本では、原書講読をも演習とよんでいる。アメリカの大学院レベルでは、コロキアムcolloquiumともよばれる。ゼミナールの語源は、ラテン語のsēmināriumで、苗床、育成場などの意味で、動植物の飼育栽培の場所を意味したが、それが転じて、16世紀に、カトリック教会の牧師養成の神学校、18世紀初頭、フランケAugust Hermann Francke(1663―1727)によってドイツに創設された教員養成所、さらに19世紀には、広く科学研究の専門家養成所の意となった。
また、ゼミナールは、養成所で行われる少人数による独得な教授研究組織や方法をもさすことばとなった。アメリカでは19世紀後半ドイツの大学への留学から帰国した学徒たちによってセミナーを導入した。日本では、明治末年ごろドイツ人教師によって帝国大学に導入された。大学設置基準では、演習は、15時間から30時間までの範囲で大学が定める時間の授業をもって1単位とすると規定されている。
[金子忠史]
『一般教育学会編『大学教育研究の課題――改革動向への批判と提言』(1997・玉川大学出版部)』▽『経済学教育学会編『大学の授業をつくる――発想と技法』(1998・青木書店)』
大学などで教師の指導のもとに少数の学生がみずからの発表や討論により主体的に学習を進める形の授業,またその教授方式。大学における教育形態として重要な位置を占め,教師が一方的に研究成果を教授する講義形式と対照をなす。ラテン語のseminarium(〈苗床〉の意)を語源とし,英語ではセミナー,日本語では演習と訳される。ヨーロッパですでに16世紀に,僧職者の養成などでこの種の教育が始められたといわれるが,大学の教育法としては,ドイツの言語学者ゲスナーJohann Gesnerがゲッティンゲン大学で創始したとされる。日本には,1910年から東京帝国大学で経済学を講じたウェンティヒHeinrich Wäntigによって,導入されたとされている。今日では大学の枠をこえ,統一的なテーマをかかげ複数の講師がそれぞれ講演を行う形の勉強会が,広くこの名で呼ばれている。マス・メディアや各種団体などの手で,一般市民を対象とする公開ゼミナール(またはセミナー)や,ビジネスマンなど対象者をしぼった各種のゼミナール(セミナー)が,多数開かれる状況となっている。またテレビの教養番組や専門雑誌,個別記事のタイトルにも,好んで用いられる傾向がある。
執筆者:広瀬 英彦
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