パミール高原(読み)パミールこうげん(英語表記)Pamirs

  • Памир Pamir
  • パミールこうげん〔カウゲン〕
  • パミール高原 Pamir

翻訳|Pamirs

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

中央アジアに位置する山脈高原の集まる高山地帯をさす。大部分がタジキスタン東部のゴルノバダフシャン自治州に入り,東部と南部の縁辺がそれぞれ中国アフガニスタンに属する。東パミール,中部パミール,西パミールの 3地域に大別され,東パミールの中国領にパミールの最高峰クングール山(7719m)が,西パミールにタジキスタンの最高峰コムニズム峰(7495m)がある。西パミールと東パミールは河谷が深く,険しい山容を示すが,中部パミールは山容が比較的穏やかで,標高 3500~4000mに多くの盆地がある。高山が多いので氷河が発達しており,特に北西部ザアライスキー山脈と東パミールに多い。パミールの河川はアムダリアタリム川の水系に属する。大陸性気候で,平均気温は標高 3600mの地点で 1月は-18℃,7月は 14℃になり,東パミールの山間盆地では-48℃に下がることもある。中部,東部は乾燥が著しく,特に高い山脈で囲まれた東パミールでは年降水量が 100mm以下になる。雪線は東パミールで 5200m,西パミールのフェドチェンコ氷河付近で 4400m。植生は全般に貧弱であるが,西パミールでやや豊富で,標高 2600m以下は砂漠,2600~3800mはステップ,3800~4300mは高山草原となっていて,中部パミールでは寒冷な高山砂漠となる。山岳地帯であるため生活条件は悪く,開発も進んでいない。河谷,盆地で農業が行なわれるが,西部が中心で,ここでは果樹栽培も行なわれる。タジキスタン領パミールにはホローグ,ムルガブ,キルギスのオシを結ぶハイウェーが通っている。

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百科事典マイペディアの解説

中央アジアの高地。中国では葱嶺(そうれい)とも呼んだ。タジキスタン共和国を中心にアフガニスタン,中国にまたがり,〈世界の屋根〉と呼ばれる大山塊。平均標高5000mで,中央部は開析された高原状。ヒンドゥークシ天山山脈崑崙(こんろん)山脈カラコルムの諸山系の結節部をなす。旧ソ連の最高峰ガルモ山(旧称コムニズム峰,7495m),フェドチェンコ氷河をはじめ多数の氷河がある。アム・ダリヤ水源でもある。高原越えの数本のルートは古くから東西交渉に大きな役割を果たした。
→関連項目ウズベキスタン葱嶺タジキスタンタリム盆地チベット中央アジアトルキスタンフェルガナ

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世界大百科事典 第2版の解説

中央アジア南東部の多数の山脈からなる高地。大半はタジキスタン領で,北端がキルギスタン領,東端が中国領,南端はアフガニスタン領。中国語の表記は帕米爾。東部では山脈はほぼ南北に走り,広い谷や高原がみられ,最高峰は中国カシュガル(喀什噶爾)山脈のコングル(公格爾山,7719m)。中国タリム盆地のカシュガル川などの水源がある。西部はほぼ東西に走る早壮年期の諸山脈で,科学アカデミー,ピョートル1世両山脈の交点に旧ソ連最高のコムニズム峰(7495m),ザアライスキー山脈にレーニン峰(7134m)がある。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

中央アジア南東部の山脈群と高原からなる地域。タジキスタン共和国、中国新疆(しんきょう)ウイグル自治区、パキスタン北部、アフガニスタン北部にまたがる。天山山脈、崑崙(こんろん)山脈、カラコルム山脈、ヒンドゥー・クシ山脈などの大山脈の会合部にあり、平均標高は5000メートルに近い。
 パミール高原は、地理・地形の面から三地域に大別できる。〔1〕東部のカシュガル・パミールは全域が中国に属し、最高地点はコングル山(7719メートル)。山脈は北西―南南東に弧を描いており、開析が進んだ起伏の大きな地形を示している。山頂部には氷河が発達し、雪線高度は約5200メートル。気候は寒冷で乾燥しており、植生は貧しい。〔2〕中部パミール(または狭義のパミール)は、新生代以後の隆起量がパミールのなかではもっとも大きい地域で、山頂部や谷筋に沿っては、平坦(へいたん)面あるいは小起伏面が残されている。〔3〕北西部はザマライスキー山脈(またはトランス・アライ山脈)、ピョートル1世山脈、アカデミー・ナウク山脈などからなり、最高地点はコムニズム峰(7495メートル)。標高4000メートル付近で年降水量は約1000ミリとなるが、谷底は乾燥している。植生の垂直変化は著しい。西に開けた河谷では、サクサウール(アカザ科)やヨモギの生えた半砂漠、川岸や扇状地にはヤナギ、カンバ類の小林がみられる。2600メートルではステップ(短草草原)、3800メートルではお花畑、4400メートルで雪線となる。氷河はタジキスタン領内で1085条ある。
 パミール高原の地質は、東部~北西部はヘルシニア系を主体とした堆積(たいせき)岩、片麻(へんま)岩、貫入岩類などが、中部は古生代から中生代にかけての海成層が分布し、ヘルシニア造山運動、アルプス造山運動などによって複雑な褶曲(しゅうきょく)構造をなしている。またこの地域では、山脈の内部構造を形成した前記造山運動とは別に、新生代新第三紀から始まった現在の山脈の起伏を形成した地殻変動が続いており、パミール周辺は世界有数の地震多発地帯となっている。
 動物は、ヒツジ、レイヨウ、オオカミ、小形の齧歯(げっし)類、ミヤマガラス、ハゲタカ類など。西部にはヒグマ、ヒョウなどもいる。
 パミール高原は、古代から中央アジアの陸上交易ルート(いわゆるシルク・ロード)の最大の難所の一つで、現在でも地元の少数民族間での国境を越えた交易が続いている。[津沢正晴]

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旺文社世界史事典 三訂版の解説

中央アジア南東部にある大高原。中国では葱嶺 (そうれい) という
ヒマラヤ・ヒンドゥークシ・天山 (テンシヤン) などの山脈が集まり,7000m級の山が連なる高原で,世界の屋根と呼ばれる。インダス川・アム川・タリム川が源を発し,中国・タジキスタン・アフガニスタン・パキスタン・インドの国境線が集まる。パミール高原はトルキスタンを東西に分けている。史上,中国から西方へ通ずる重要な交通路となっていた。

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