ルブラン(Nicolas Leblanc)(読み)るぶらん(英語表記)Nicolas Leblanc

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

ルブラン(Nicolas Leblanc)
るぶらん
Nicolas Leblanc
(1742―1806)

フランスの化学者で、ソーダ工業の創始者。孤児として育ち、後見人の影響で医師となり、1780年からオルレアン公Louis Philippe Ⅱ Joseph, duc d'Orléans(1747―1793)の侍医を務め、余暇に化学を研究した。当時のフランスではせっけんやガラスなどの原料となるソーダの不足が深刻であり、科学アカデミーは1775年に人工ソーダの発明賞金をかけ、多くの人々がこれに取り組んだ。ルブランはディゼMichel Jean Jérôme Dizé(1764―1852)とともに研究を始め、これに成功した。この方法はルブラン法とよばれる。1790年にオルレアン公らとともに会社を設立、1791年に特許を取得して工場を建設した。しかしフランス革命の渦中で生産は軌道にのらず、1793年のオルレアン公の処刑ののちには工場が没収され、ルブラン法の詳細が公開された。ルブランはこれによる損失の補償を要求し、またソーダ不足がますます深刻となったため、工場は1800年にルブランに暫定的に返還され、その再開が命じられた。しかし、資本をもたないルブラン個人では工場を再建することは不可能であり、彼は資本の交付を求めたが、1805年11月の決定はあまりに少額であり、絶望したルブランは1806年に自殺してしまった。

[加藤邦興]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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