日本大百科全書(ニッポニカ) 「三蔵(みつくら)」の意味・わかりやすい解説
三蔵(みつくら)
みつくら
大化前代の大和(やまと)政権における3種の財庫の総称。神物を納める斎蔵(いみくら)、大王家の財庫内蔵(うちくら)、政府の財庫大蔵(おおくら)の三蔵。『古語拾遺(こごしゅうい)』によれば神武(じんむ)朝に斎蔵を、履中(りちゅう)朝に内蔵を、雄略(ゆうりゃく)朝に大蔵を建てたというが、管理者としての内蔵・大蔵氏(いずれも直(あたい)姓)は実在するが、斎蔵氏は存在せず、したがって斎蔵の存在も証明しがたい。同書にはまた蘇我満智(そがのまち)をして三蔵を検校(けんぎょう)させたこと、満智は秦(はた)氏をして財物の出納を、東(やまと)・西文(かわちのふみ)氏をして帳簿の勘録を、秦・漢(あや)二氏をして内蔵・大蔵の鑰(かぎ)を、それぞれつかさどらしめたとあるが、この大化前代の財政機構の骨組みは、律令(りつりょう)制下の大蔵省・内蔵寮(くらりょう)の機構にそっくり引き継がれているから、おおよそ信用してよいと思われる。
[黛 弘道]