(読み)アダ

デジタル大辞泉 「仇」の意味・読み・例文・類語

あだ【×仇/×寇】

室町時代までは「あた」》
仕返しをしようと思う相手。敵。かたき。「親の―を討つ」
恨みに思って仕返しをすること。また、その恨み。「恩を―で返す」
害をなすもの。危害。「親切のつもりが―となる」
攻めてくる敵兵。侵入してくる外敵
「しらぬひ筑紫つくしの国は―守る押へのそと」〈・四三三一〉
[類語]恨み怨恨えんこん怨嗟えんさ意趣私怨しえん遺恨いこん怨念おんねん宿意宿怨しゅくえん宿恨積怨せきえん旧怨きゅうえん憎しみ復讐心ふくしゅうしん逆恨み恨めしい

きゅう【仇】[漢字項目]

[音]キュウ(キウ)(漢) [訓]あだ あた あだする
憎らしい相手。あだ。「仇怨きゅうえん仇敵復仇・報仇」
(「逑」と通用)仲間。連れ合い。「好仇」

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精選版 日本国語大辞典 「仇」の意味・読み・例文・類語

あだ【仇】

  1. 〘 名詞 〙 ( 古くは「あた」 )
  2. 自分に向かって害を加えようとするもの。かたき。外敵。
    1. [初出の実例]「しらぬひ筑紫の国は 安多(アタ)守る 押への城(き)そと」(出典:万葉集(8C後)二〇・四三三一)
    2. 「其の事となうつねに烽火(ほうくゎ)をあげ給ふ。諸侯来たるにあたなし」(出典:平家物語(13C前)二)
  3. ( 「あたとなる」の形で用いることが多い ) 害となること。危害。損害。妨害。→仇をなす
    1. [初出の実例]「そうじて、あのやうな物をわるうあひしらへば、後にあたをする物じゃ」(出典:虎明本狂言・察化(室町末‐近世初))
    2. 「殊にみづから天下の害(かい)、仏のあたと成事は、あらもったいなやいまはしや」(出典:浄瑠璃・舎利(1683)三)
  4. うらみ。怨恨。遺恨。→仇をなす
    1. [初出の実例]「此の怨(アタ)を滅し、尽きしむべし」(出典:東大寺本地蔵十論経元慶七年点(883)四)
    2. 「Ada(アダ) ヲカエス」(出典:和英語林集成(初版)(1867))

仇の語誌

( 1 )語源についてはいまだ確定的なものはない。「万葉集」の表記に始まって平安朝の古辞書における訓、中世のキリシタン資料の表記はすべてアタと清音であり、江戸中期の文献あたりでは、いまだ清音表記が主流である。二葉亭四迷の「浮雲」を始め近代の作品ではアダと濁音化しているので、江戸後期から明治にかけて濁音化が進んだとみられる。
( 2 )類義の「かたき」は善悪にかかわらず自分の相手となるものであり、「あた」は自分に害を加えるものであって、もともと用法の明確な区別があった。


あた【仇】

  1. 〘 名詞 〙あだ(仇)

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普及版 字通 「仇」の読み・字形・画数・意味


4画

[字音] キュウ(キウ)
[字訓] かたき

[説文解字]

[字形] 形声
声符は九(きゅう)。〔説文〕八上に「讎なり」とあって仇讐の意とする。古くは仇匹(きゆうひつ)、同じなかまの意に用いた。〔詩、周南、関雎〕「君子の好逑」 を〔韓詩〕に「好仇」に作り、〔詩、周南、〕に「侯の好逑」の句がある。〔詩、大雅、皇矣〕「爾(なんぢ)を仇方に詢(はか)れ」の〔箋〕に「怨を仇と曰ふ」とみえる。好逑は嘉、仇は怨をいう字。仇は(き)と関係があり、は〔説文〕七下に「姦なり。外なるを盜と爲し、なるをと爲す」という。中で呪力のある九(虫)を用いて蠱術(こじゆつ)をなす意。その蠱術の対象とされるものが仇であろう。

[訓義]
1. かたき、あだ、あいて。
2. かたきとする、あだする。
3. 逑と通じ、たぐい、つれあい。

[古辞書の訓]
〔名義抄〕仇 タグヒ・トモ・ヤカラ・カタキ・アタ・トモガラ・アシ・ノブ 〔字鏡集〕仇 タグヒ・トモ・ヤカラ・カタキ・タケシ・アタ・トモガラ・アシ・ノブ・タタル・カロム

[語系]
仇・逑giuは同声。九・求はともに呪力ある虫・獣の形。のち怨に仇、嘉に逑を用いる。

[熟語]
仇家仇仇仇偶仇隙仇嫌・仇国仇恨・仇視仇疾・仇人・仇敵・仇・仇匹・仇剽・仇誣・仇方・仇邦・仇矛・仇虜
[下接語]
怨仇・解仇・釈仇・讐仇・世仇・雪仇・同仇・誣仇・復仇・仇・報仇・両仇・老仇

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改訂新版 世界大百科事典 「仇」の意味・わかりやすい解説

仇/婀娜 (あだ)

江戸末期の美意識。浮気やいろっぽさを意味する〈仇〉に女性の姿態のしなやかさやたおやかさを表す漢語の〈婀娜〉を当てたのは,式亭三馬を嚆矢(こうし)とするが,この語はやがて為永春水の人情本で江戸下町の女性のやや頽(くず)れた官能美を表現する言葉として盛んに用いられる。〈いき〉の美学を支える〈意気地〉と〈張(はり)〉が弛緩しはじめたときに,〈あだ〉の美感があふれだすのである。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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